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「デジタル赤字」新たな円安要因に 巨大IT企業への支払い拡大
TBS NEWS DIG
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
安倍政権の誕生で大胆な金融緩和への期待が始まって円が安くなり始める直前の2012年頃まで、日本でアジア諸国からの観光客を見ることは稀でした。円安が進むに連れて訪日外国人が増え始め、最近の急激な円安で、こうした人たちが日本に落として下さるお金が一気に増え、逆に日本人にとって海外旅行が高値の花になり、昨年度の旅行収支の黒字は4兆2千億円に膨らみました。2012年度は1兆円の赤字でしたから、旅行収支の増加は5兆2千億円で、「毎年拡大を続け、昨年度は5.4兆円」というデジタル赤字に見合います。 2012年以前は日本旅行が高嶺の花だったアジアの諸国から多くの旅行者が日本に来て下さるが、日本人には海外旅行が円安で高嶺の花になり、旅行収支で浮いたお金がデジタル赤字に回る。政府はなんとかしようと力を入れていますが、クラウドやら様々なウェブ関連サービスやらソフトウェア開発やらへの支払いで海外に流出するお金が急増し、今後も増え続けそうな勢いで、国内勢は技術力でも供給力でも、もはや太刀打ちできません。 かつて東京銀座あたりでさえも姿を見ることが稀だったアジアからのお客様や欧米からのお客様が、日本中に溢れています。デジタル赤字が膨らんで円安要因になり、円安で外国からのお客様が増え、日本人は海外旅行が楽しめなくなり、もっぱら外国からのお客様に安いサービスを提供することに終始する。こうした現象に、かつての日本人がタダ同然の安さに感じて訪れたアジアの途上国並の姿が重なって、世界の中で相対的に貧しくなりつつある日本の現状を感じないでもありません。 ニューヨークに行ってもロンドンに行ってもパリに行っても物価が安く、ニューヨーク・マンハッタンのど真ん中のタイムズスクエアの看板さえも世界を席巻する日本企業が大部分を占めて、旅行収支の赤字を貿易収支の黒字が埋めていた時代がありました。そうした時代を知る身には、ちょっぴり寂しいニュースです。 f(^^;
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国際収支、経常黒字25兆円超 23年度、訪日客増で過去最大
共同通信
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
経常収支が黒字ということは、政府の赤字と民間の黒字を足した日本全体は黒字、つまり日本が生み出したモノやサービス等々の価値の取引結果が対外的に黒字ということで、政府が大きな赤字と借金を抱えるにも拘わらず、日本が安定していられる大きな要因の一つです。それが過去最大の黒字というのは、資金ベースで黒字かどうかというのは脇に置き、先ずは大きな安心材料です。 その主因が「訪日客の増加で旅行収支の黒字額が大きく伸びた」ことだということで、旅行収支は確かに、過去最大だったコロナ禍直前の2019年度の2兆4千億円から4兆2千億円に激増しています。 旅行収支は大胆な金融緩和への期待で円安が進み始めた2012年度からコロナ禍直前の2019年度まで一貫して改善を続け、2014年度に赤字から黒字に転じています。これは円の実力低下で日本の物価が外国人にとってじわじわ安くなり続け、外国の物価が日本人にとってじわじわ高くなり続けた期間と重なります。そしてコロナ禍で一旦動きが止ったのち、ここに来て一段と加速した円安で、一気に黒字幅が膨らんだわけですね。 外国の物価が高くなり過ぎて日本人が海外旅行を躊躇う傍ら、2012年以前は日本で姿を見ることも稀だったアジア諸国を含む各国から観光客が日本に大量にやって来て、安い安いと喜んで元気に買い物や飲食をして下さる結果です。日本経済にとって大変有難いことではありますが、ニューヨークに行ってもパリに行ってもロンドンに行っても物価が安く感じられ、日本人が大挙して押しかけて高級ホテルに泊まってブランド品を買い漁って顰蹙を買った過去を知る身には、ちょっぴりもの悲しさを感じさせる出来事です (*_*)
32Picks
現状判断DIは前月比-2.4ポイントの47.4=4月景気ウオッチャー調査
Reuters
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
可処分所得に対する家計の貯蓄の割合が、コロナ渦中の2020年度に、ゼロパーセント近傍から一気に12%近くまで高まりました。2021年度も、半減しながらも高い水準を保っています。政府が一律給付金などでお金を配ってくれるけど、コロナ渦中の行動制限で使えなかった結果です。 その後、社会経済活動が正常化するにつれ、家計の貯蓄率は再びゼロパーセント近くに低下しましたが、マイナスに転じることはなく、コロナ禍中に貯め込んだ60兆円ほどの余剰貯蓄が家計の懐に残っています。活発な消費活動で余剰貯蓄が使い果たされたんじゃないかと心配されている米国辺りとは、状況が大きく異なります。 水際対策が諸国に大きく遅れながらも解除され、感染症分類も漸く見直された当初は、旅行と飲食を中心に消費意欲が一瞬盛り高まりましたけど、インフレが勢いを増すに連れて節約ムードが強まって、残念ながら元気が出ませんね・・・ 今年こそは実質賃金が上がって家計に安心感が広がって、コロナ禍中に蓄えた貯蓄が使われて、諸外国に遅れた経済規模の拡大を取り戻して欲しかったけど、極端に進んだ円安に起因するインフレで、その期待もすっかり消え去りました。 異次元金融緩和の拠り所は、通貨を大量に供給してインフレ期待が高まれば、物価が上がる前にモノやサービスを買っておこう、設備投資をしておこう、というので人々の行動様式が変わり、経済が成長軌道に向かうというものでした。ところが実際に起きた現象は、インフレが心配で人々が節約に走るというものでした。期待というあやふやなものに依存する政策の危うさです。 10年以上前から恐れていたことが現実になったような気がしますけど、日本の本質的な成長力が高まって人々の間に安心感が広まれば、余剰な貯蓄が取り崩されて景気のムードも回復するでしょう。政府も日銀も、性根を据えてそうした環境作りに精を出して欲しいと念じます。 (^.^)/~~~フレ!
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神田財務官 為替介入「いつでもやる用意ある」市場けん制も円安続く
TBS NEWS DIG
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
日銀と政府が組んで実質的な円安政策を続けているうえ、長年の財政拡張と金融緩和の組み合わせで金利上昇に耐えられない構図が出来上がっていますから、いかに日銀総裁が為替に注目していると”口先介入”で牽制しても、意表を突いた急激な利上げは実際には難しい。そうなると、円安を期した投機の勢いは、たぶん、簡単には収まりません。 そんな中、実際に介入しても押し戻されることがはっきりすれば、今後の介入は、投機筋に絶好の儲けの機会を与えることになりかねませんし、介入に限界があると投機筋に見くびられるのも、絶対に避けたいところでしょう。介入余地が大きく広がっているように見せながら、すべてを曖昧にして疑心暗鬼を誘っておくことが、最善の防御策かと納得です。米国債を売ることが仮に米国当局と合意出来ていなくとも、手の内を明かさなければならない理由はないはずです。 国連から制裁を課されながら核ミサイルの開発に突き進むどこかの国じゃないですが、核で報復する能力を持っている、権力を握る親分が何をするか分からない、という状況は、相手に恐怖心を植え付けて攻撃を思いとどまらせる大きな抑止力になりますからね (^^;
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安倍派会計責任者、起訴内容大筋で認める 自民派閥裏金事件の初公判
毎日新聞
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
「特捜部は松本被告を起訴したものの、安倍派の事務総長経験者ら幹部議員については、松本被告との共謀が認められなかったとして、立件を見送っている」 (@@。 「松本淳一郎」をインターネットをググっても本件関係以外で殆どヒットしないので、世耕氏がNTTの幹部から連れてこられたということくらいしか、私には分かりません。76歳というご年齢と、本件を除けばネットに殆ど情報がないことから察するに、純然たる民間人として人生を送られて、いざという時の首切り要員、ン?尻尾切り要員?、まあどっちでも良いですが、そういう役割を担うべく「会計責任者兼事務局長」という一見重いタイトルに”抜擢”されたんじゃないかという気がします。だって、政治の世界を殆ど知らず議員経験も無い”会計責任者兼事務局長が、大物政治家も絡むこれだけの資金の扱い方、故安倍元総理がやめようと言っても終わらなかったほどの重い事案の扱い方を、自ら決める裁量と権限を実態的に与えられていたとはとても思えませんものね。名前は重々しいけど、実態は多分軽いポジションでしょう。 日本の犯罪捜査の恐いところは、事件の構図をどのように描くかも、立件するかしないかの判断も、検察当局の胸三寸にあって、誰もそれに意を唱えられないところであるような気がします。検察審査会はありますが、たとえそこに持ち込まれても抜け道は多々あって、根本的なところで構図が崩れることは先ずないでしょうから、ややこしいところには踏み込まないのが一番です。かといって、世論がこれだけ盛り上がっている案件で誰も立件しなければ、検察のメンツと庶民の気持ちが収まりません。 税金や社会保険料は取り易いところから取る、犯罪は裁き易いところから裁く、といった風潮が、政治と関係各所に拡がっていなければいいけれど。 いや、本件の裏事情を知る立場に全くない私の、単なる妄想に過ぎません f(^^;
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実質賃金プラス、遠のく恐れ 一段の円安、輸入物価押し上げ
時事通信社
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
大胆な金融緩和が始まりそうになったあたりから、円安によるインフレは真綿で首を絞めるように国民を貧しくすると言い続けて来ましたが、残念ながらそんな様相になって来ましたね・・・  インフレが国民を豊かにするのは、生産性の上昇で儲けた利益を企業が従業員と企業自身で分け合って、従業員が消費を増やし、企業が投資を増やして生産性を更に上げ、消費と投資で需要が増えて消費者物価(≒販売価格)は上がるが、生産性の上昇がコスト上昇を抑えて企業が更に儲かる好循環が起きる場合に限ります。生産性が上がらぬ中で円安と資源高が交易条件を悪化させ、日本が生み出すモノとサービスの価値、即ち労働が生み出す賃金の原資となるべき価値の一部が海外に流出する状況下では、企業が成長投資を減らすなり株主の取り分を減らすなりして身を削らない限り、実質賃金は減少するのが当然です。 そこをインフレが襲いましたから、物価の上昇に賃上げが追い付かず、労働分配率が下がって実質賃金の下落が際立つようになったのです。足元の企業物価の上昇率は消費者物価の上昇率を下回っていますが、4年前と比べて2割強上がった企業物価はまだ半分ほどしか消費者物価(1割弱上昇)に転嫁されていないように感じます。近時の賃上げで企業物価に代わってサービス価格が上昇し始めていますから、物価の上昇はおそらく簡単には止まらないでしょう(企業が購入するモノの値段の企業物価とサービス価格は共に生産コストの上昇要因)。 24ヵ月連続で実質賃金が下がり続けた、つまり消費者物価(≒販売価格)の上昇に賃上げが追い付かなかった結果生まれた余剰の一部を今年は大幅な賃上げで従業員に還元するので、過去の実質賃金の低下分は取り戻せないまでも、今年だけは賃上げ率がインフレ率を超えて実質賃金が上がると期待されていたわけですが、円安がインフレを後押ししてそれさえも難しくなったとすると、状況はかなり深刻です。実質賃金が減り続けるにもかかわらず名目賃金が増え、累進課税の所得税率が上がり続ける状況が続くわけですからね。 円の毀損策でインフレを起こせば日本が成長軌道に戻って国民が豊かになるとの幻想は、そろそろ捨て去るべき時が来ているように思います。中長期的に日本を成長軌道に戻して国民を豊かにする道は、企業と産業を国内で育て、国内で価値を生み出すほかないのです。
54Picks
ライドシェア、開始から1カ月 広がるか、安全担保が前提
共同通信
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
「ライドシェア、開始から1カ月 広がるか、安全担保が前提」 (@@。 日本版ライドシェアはライドシェアでなく、タクシー会社の運転手不足の解消策。ライドシェアは未だに日本に入っていないというのが現実です。 タクシーは、知らない土地に行って知らない人が運転する知らないクルマに乗るなぞ怖くてできなかった時代に、一定の条件を備えた事業者に政府が「タクシー」という名のお墨付を与えて安心・安全を担保する仕組みです。 ライドシェアは、GPS、キャッシュレス決済、クラウド、ビッグデータ、客と運転手の相互評価、スマホといった新しい技術とシステムが、SNSで安心と安全を担保する仕組みです。 タクシーとライドシェアは人を運ぶという点で似ていても、社会インフラとして全くの別物です。これをタクシー業法の枠内に押し込めて実質的に認めず、日本版と称されるまがい物をライドシェアと同列に並べて「拡がるか、安全担保が前提」なんて言っているようじゃ、大本営発表に誤魔化されて国民の現状認識を誤らせかねないように感じます。 日本版ライドシェアなるものは、タクシー会社とタクシー議連に代表される政治家と監督官庁の権益の”シェア”に過ぎません。敢えていうならタクシー利権への相乗り(ライド)です。登場から僅か2年で世界800都市に拡がったほどのメリットの恩恵は、日本国民に及びません。なんだかなぁ・・・ (・・;
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日本の「報道の自由度」は70位でコンゴ共和国以下!マスコミを萎縮させる諸悪の根源とは - 情報戦の裏側
Diamond Online
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
「既存の報道機関のみ、記者会見や政府高官へのアクセスを許可する「The system of kisha clubs(記者クラブのシステム)」こそが、記者に『自己検閲』を促し、フリーランスや外国人記者に対する露骨な差別にもつながる諸悪の根源だと国境なき記者団は批判」 (@@。 他の記事のコメントに「記者クラブ頼りで自分で記事が書けない不自由度は能力不足の問題で論外です」と書きましたが、政府に批判的な記事を書いたら記者クラブから締め出される、というのは、記者クラブ頼りで記事を書き続け、努力と勉強が足りず主体的な記事が書けないメディアと記者の劣化の問題で、報道の自由と関係があるとは思えません。記者クラブでの”大本営発表”なぞ無視して、思い通りの記事、場合によったら嘘さえ書いて恥じない自由が日本にはあるのです。 https://newspicks.com/news/9935684/?ref=user_1228737 このランキングはパリに本拠を置く国境なき記者団なるものが各国のジャーナリスト団体や人権団体にアンケート調査をして、その結果を集計したものです。政府に批判的なジャーナリストや人権活動家が意図的に悪い評価を下して政権批判に使おうとすれば、簡単に順位が下がります。言論が自由であればあるほど、そうした批判もやりやすい。主要メディアに左派系の影響が強い我が国のジャーナリストが、自らの努力と勉強不足を棚に上げて記者クラブ制度を悪者に仕立ててランキングを押し下げたとすれば、世界の中で日本の評価を下げる忌々しき行為です。 基準を明確に示して客観的に評価したランキングはそれなりに信頼できますが、判断基準も根拠もはっきりしないこの手のランキングを金科玉条のように扱うと、国民は判断を誤ります。大々的に報道するほどの質を持つランキングではありません。 それはそれとして、「報道すべきことを報道していない」というのは本当で、記者とメディアを劣化させる記者クラブ制度は廃止して然るべしと思いますけどね。
48Picks
実質賃金減、過去最長に 24カ月連続、リーマン期超え
共同通信
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
異次元緩和で無理やり起こす円安とインフレは真綿で首を絞めるように国民を貧しくするとリフレ策が一世を風靡し始めた当初から言い続けて来ましたが、インフレが激しくなって以来、実質賃金が下がり続けるところにその兆候を感じます。資源高と円安で交易条件が悪化して日本企業が生み出す価値、即ち賃金の原資の一部が海外に流出しているのですから、円安を原因とするインフレを超える賃上げが出来る筈がありません。 今年の賃上げ率の高さが喧伝されますが、過去2年の賃上げはインフレに追いつかず、その分、労働分配率が下がっています。人手不足と政府の音頭で労働分配率が元に戻って瞬間的に実質賃金が上がる状況が仮に生まれても、生産性が向上して企業が生み出す真の価値、即ち真の賃金原資が増えない限り、長続きする筈がありません。 円安で日本が生み出すモノとサービスと蓄えた資産の価値が世界の中でバーゲンセール状態になっているのです。これが続けば日本人が世界の中で相対的に貧しくなるのは必定で、実質賃金も中長期的に下がり続けるのが自明の理。インフレと賃上げのタイミングのずれで一時的に実質賃金が上がっても、長続きするとは思えません。 円安で無理やり起こすインフレが日本を成長させて国民を豊かにするという幻想は、そろそろ捨て去るべき時が来ているように思います。実質賃金を上げるには、日本のビジネス環境を改善し、日本で生産性の高い企業と産業を育て、伸び続ける世界の需要を取り込んで、一人当たりGDPを増やして行くほかないのです。
316Picks
政府・日銀、4月29日と5月2日に為替介入と政府関係者-報道
Bloomberg.com
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
4月29日に5兆円規模、5月2日も3兆円規模の介入があったとの推察が既に何度も報じられているので特に驚きはありません。植田総裁のアピールもまた然り。 1回目は一旦円高に動いて押し戻される途中で2回目の介入が入って更に円高になりました。一瞬151円近辺まで行った2回目の介入も、再び押し戻されて今は155円台。米国との調整がどの程度進んでいるかは分かりませんが、3回目の介入はかなり難しい状況にあるかもしれません。 為替は財務省の管轄で日銀が目標するところではないというのが日銀の公式見解ですが、量的緩和でモノとサービスの裏付けのない円を大量にばら撒けば世界のモノとサービスの価値に対して円の価値が下がる、即ち円安になるのは当然ですし、政策金利と長期金利を共に低く抑え込めば円を持つ魅力が相対的に下がってこれまた円安になるのは当然です。ここまで円安が激しくなって日本が生み出す労働力とモノとサービスと資産が世界の中でバーゲンセール状態になり、円安で輸入資源を買い負ける状態が生まれてインフレが昂進すれば、そして日銀が円の毀損策を取る中で為替介入することの限界が見えてくれば、為替は財務省の管轄と言って済ますわけにもいかなくなって来たということでしょう。 しかし「(為替)動向次第で金融政策運営上の対応が必要になると考えている」と植田総裁が仰っても、為替がさして円高方向に動く様子はありません。異次元緩和による巨額の資金供給と長年に亘る低金利で ①1200兆円の政府の低利の借金 ②600兆円の日銀保有の低利国債 ③家計が持つ変動金利住宅ローン ④企業が長期運転資金(赤字資金を含む)と設備資金に充てる短期転がし貸金 ⑤一部地銀等が積上げた低金利の長期債や長期固定低金利の不動産貸金 といったものが積み上がっていますから、金利を急激に引き上げれば景気が一気に冷えかねません。実態的に3%を超えるインフレが2年以上も続いているにも拘わらず、日銀が”基調的なインフレ率“なる摩訶不思議なものを持ち出してインフレは十分でないと主張して低金利策を続けざるを得ない状況にあると、たぶん見切っているからでしょう。 円安とそれに起因するインフレは、真綿で首を絞めるように国民を貧しくします。インフレが昂進して以来、2年以上に亘って実質賃金が下がり続けているのがその証左。難儀なことではありますね・・・ (・・;ウーン
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物価見通しの上振れとリスク大きくなれば金利早めに調整-日銀総裁
Bloomberg.com
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
「上振れリスクが大きくなった場合、利上げのタイミングの前倒しを検討する」、「下振れリスクが高まった場合には、現在の緩和的な環境をより長く維持していく」、「必要があれば、これまで用いてきたさまざまな非伝統的な手段も含め、あらゆる手段をあらかじめ排除することなく、対応を考えていく」 (@@。 要は、状況に応じて何でもやりますということですね、たぶん。 長く続いた異次元の金融緩和と財政拡張で、日本経済の背後には、今の低金利政策を本格的に変えれば溜まりに溜まった歪が一気に表面化する、今の政策を続ければ歪が益々大きくなる、というジレンマが生まれています。“基調的インフレ率”という摩訶不思議なものはいざ知らず、顕在化しているインフレと急激な円安は、その歪が日銀のコントロール外のところで噴き出したものであるように感じます。  インフレに関しては上振れリスクの方が高そうに感じますが、インフレ退治に乗り出せば、一気に景気が冷えるリスクも孕んでいるのが今の日本の経済状況です。溜まった歪が大きいだけに、政策変更による景気の振れ幅は半端なものじゃないでしょう。これ以上の円安とインフレはなんとか止めたいけれど、景気の急減速が起きたらどうしよう、という日銀の悩みを感じないでもありません。さて、円安とインフレは、この先、どうなって行くものか・・・ (・・;
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最高額面、5倍に引き上げ 紙幣価値はわずか1700円―アルゼンチン
時事通信社
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
通貨の対ドル価値が過去5年で20分の1に落ち、年率300%だ、400%だ、というインフレが続いているのですからそりゃそうなるでしょう。 ペソを捨てて通貨を米ドルにするといった極端な話も選挙戦の最中に出ていましたが、ここまで来ると、そのくらいの荒療治を覚悟をしないと、通貨価値の下落を止めるのは難しいかもしれません。流石に私も記憶はないですが、旧円の預金を封鎖して強制的に新円に切り換えてインフレを抑えた戦後の日本も、今のアルゼンチンと似た状況下にあったのだろうと想像します。預金封鎖で国債と円が紙くずになった話を両親がしているのを子供のころに聞きました。 中学生だったころ、先生からアルゼンチンは豊かな憧れの国だと教わりました。しかしその後、アルゼンチンの政府が放漫財政で借金を積み上げ、私が銀行に入って国際部門で働き始めた1980年代の初めころ、米国がインフレ退治のため金利を大きく引き上げた途端にデフォルトし、その後は立て直しがうまく行かず混乱に混乱を重ね、今では昔の豊かさは面影さえもありません。 借金と利息を借り換え続けることが出来る限り財政が行き詰ることはないですが、何かへん、ということが嵩じて借り換えが難しくなった瞬間、危機は突然やって来ます。かつてのアルゼンチンがそうでした。自国通貨を大量発行して凌ぐことは出来ますが、その代償は、通貨価値の毀損と激しいインフレです。たとえデフォルトにならずとも、これは、国民の豊かさを激しく毀損するという意味で、国家運営の破綻でしょう。 中学生だったころ、パンパを背景に躍動する若い女性の写真に憧れを抱いたアルゼンチンが、こんなことになろうとは・・・ (・・;
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為替動向次第で金融政策対応が必要、円安けん制強める-日銀総裁
Bloomberg
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
日銀が何と言おうとも、モノとサービスの裏付けのない円を大量にばら撒く異次元緩和が、円の価値の毀損策であることは明らかです。政府と日銀が組んでこれを進めるなかで元手に限りがある為替介入を財務省がやっても、その効果は限られます。150円を超える極端なインフレになって日本の労働力も日本の財とサービスも世界の中でバーゲンセール状態になる中で、そして輸入に頼る資源が円の購入力低下で買い負けかねない状態になる中で、物価に責任を負う、言い換えれば通貨の価値に責任を負う中央銀行として、日本銀行も流石に為替は財務省の問題で日銀の守備範囲ではないと言っていられなくなって来たということか・・・ とはいえ、長く続いた財政拡張と異次元緩和の組み合わせで、日本経済の背後には、利上げに耐えられない構図が生まれています。量的縮小で長期金利が上がったり、政策金利の引き上げで短期金利が上がったりしたら、景気が一気に失速しかねません。そういう意味で、円の魅力を高める利上げの容認は難しい。 口先だけの介入に終わるのか、それともリスク覚悟で金利上昇の容認に動くのか。火中の栗を拾われた植田総裁の難路が続きそう (^.^)/~~~フレ!
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【野口悠紀雄】円安信仰がもたらす3つの損失
NewsPicks編集部
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
円の実力が上がり続ける中で日本企業が世界を席巻し、ニューヨークに行ってもパリに行ってもロンドンに行ってもホテル代もレストラン代も随分安く感じるようになった時代を私が体験していたころは、政府の財政は均衡し、金利がインフレをそれなりにカバーして預金で蓄財ができました。ところが1990年代半ばになって日本の停滞が本格化すると、経済が思うように成長しないから税収が不足する、だから政府が赤字国債を発行して景気を刺激して、日銀が低金利でそれを側面支援することが始まりました。しかし景気刺激の効果は常に一時的に留まって、政府の借金と日銀のバランスシートが膨らみ続け、円の実力は下がり続けることになりました。金利が極端に低く抑えつけられて円の魅力が低下し、政府の借金が膨らんで日本経済の底力が落ち続けているのですから当然です。 デフレなり低インフレなりの国の通貨は高くなり続けてこそ購買力が維持できるのです。たとえばハンバーガーが日本で100円、米国で1ドル、ドル円が1ドル100円なら、100円玉で日本のハンバーガーも米国のハンバーガーも1個買えますが、インフレの米国でハンバーガーが2ドルになれば、100円玉では米国のハンバーガーは半分しか買えません。この時、1ドル50円の円高になれば元通り100円玉で米国のハンバーガーが買えますが、これを無理やり1ドル200円の円安に誘導すれば、米国のハンバーガーは4分の1しか買えなくなってしまいます。今起きていることは正にこれ。 異次元という名の異常な金融緩和と財政拡張で行った円の毀損策は、この状態を作り出すことでした。設備と人材と研究開発への投資を怠って競争力を失った企業と産業が、日本の労働力と製品・サービスを円安で世界にバーゲンセールすることで支えても、中長期的に日本が豊かになれるはずがありません。 異次元緩和が始まる前から、というより、リフレ策が叫ばれ始めた当初から、極端な金融緩和と財政拡張が引き起こす円安とインフレは真綿で首を絞めるように日本を貧しくすると言い続けて来ましたが、残念ながらそれが現実になり、遂にじわじわどころか一気に加速するに至った感じです。円の価値を毀損してインフレを起こせば日本が成長するという幻想は、そろそろ捨て去るべきじゃないのかな (・・? 記事が発する警鐘を、軽く受け流してはならないように思います。
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