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【3分解説】円安は158円台に。それでも日銀が「動かない」理由
NewsPicks編集部
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
日銀が動か(け)ないとすれば、理由はデフレ脱却に向け、政府と一体となって取り組むことを謳った2013年の共同声明およびその政府がデフレ脱却を認めていないことでしょう。2006年に内閣府が国会に提出した資料によればデフレ脱却の定義は「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがなくなること」。これではいつまでたっても逆戻りする可能性があるとの解釈が成り立ち、日銀は動けません。さて、金利を上げると日本経済がもたない、だから低金利と円安を受け入れるしかない、との論調もみられますが、円安が度を過ぎるとかえってマイナスが大きくなります。例えばこの調子で160円が定着し、資源価格も今の水準が続くとした場合、交易条件の悪化により、今年の交易損失は2022年並みの15兆円程度となりそうです(昨年は約11兆円)。この分だけ日本の実質国民総所得GDIはGDPから下押しされます。一方、日本の家計が抱える債務は昨年末時点で388兆円ですから1%の金利上昇で増える利払い負担は約3.9兆円です。ただ金融資産も2141兆円ありますから家計にとっては金利上昇によるメリットもあり、負担はいくらか軽減されます。これに対し、企業はネットで金融資産よりも債務が多いのですが、それでも差し引き674兆円。1%の金利上昇による利払い負担増は約6.7兆円です。企業からみれば120円や130円でも本来は十分な水準。これでもまだ「低金利+超円安」の方がいいでしょうか。日本は食品、エネルギーの自給率が低く、輸入抜きに生活が成り立ちません。従って物価や経済の安定にとって本来、為替の安定は極めて重要なファクターと考えられます。
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