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日本発の「3Dプリント住宅」に世界から“羨望の眼差し”が集まる理由
クーリエ・ジャポン
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
3Dプリント建築には、いくつかの新しい可能性があります。 1. 工期の短縮とそれに伴うコスト削減 2. 自由でカスタム対応可能な造形性 3. 素材開発による環境やリサイクルなどの性能開発の可能性 4. 省人化と低スキル化による非属人的産業化 5. 災害時などの緊急対応 もちろんこれ以外にも可能性は多くありますが、同時に以下のような課題もあります。 a. 部屋単位以上の一体的な出力が難しい b. 材料が単一かつ均質で、構造的なハイブリットによる対応が難しい(例えば鉄筋コンクリートは鉄とコンクリートのハイブリットで成立する構造) c. 垂直方向の積層が原則のため、水平方向への施工(基礎や床天井など)が難しく、求められる構造や機能に対して材料が過剰になる d. プリント可能な材料が限定的 e. 汎用な構造計算に対応するだけの質的な補償もしくは実績に乏しい f. 耐候性実績に乏しい g. そのままでは仕上げとしての質に乏しい h. 断熱や耐火などの性能が保証されていない i. 配管打ち込み等の対応が難しい もちろんまだまだありますが、これだけ見ると問題点がまだ多い現状は見えてくるでしょう。ただし、課題側にはいずれも「現時点では」と言う条件が付きます。 建築というのは、なかなか単純に最低限の部屋ができれば良いとはいかないものなので、現時点でまだ商品化への道のり難しいかもしれません。人の生命や財産を守る建築関連法規の観点からも、国際的にも認めるに足りる条件には程遠いという判断がほとんどで、今回のものも可能性のうちかなりの部分を諦めて、ピンポイントでまずは実験的な販売というのが現状でしょう。 とは言え「現時点では」と言っているように、この周辺技術は日進月歩で進んでいます。法規や特殊な性能および新しい販売や所有の形との組み合わせの中でメリットを探していけば、今後大きく価値が出る可能性は十分にあります。そもそも3Dプリンタは全ての構造や要素を一体成形するよりも、既存の材料と合わせて適材適所の部分適用が本丸です。 ごく近い将来、建築においてもある一定の部分が3Dプリントで作られていて、結果これまでなかった多様なデザインや性能が実現されるようになることは確実で、そのためには今から先行投資で、ノウハウや周辺の新しい知識が集まるフラグを立てておくことは重要です。
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築地再開発案にスタジアム、事業費9000億円 三井不連合
日本経済新聞
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
詳細まだ不明ですが、これは東京の国際的な顔を作る上で、ものすごく重要なプロジェクト。一事業者としての範疇を超えて、十分に長期的な戦略訂正を持った開発にしてもらいたいところです。 現時点で中央区はタワマンの一時的かつ急速な増加により一定条件の賃貸以外のマンションの建設を積極的に認めない方針です。この巨大な敷地にマンションを作らないとなると、事業者として採算ベースで床を埋めるのはなかなか困難。立地的にもどうしてもMICEやスポーツ施設等に頼らざるを得ません。 一方、地下で首都高が延伸し、地下鉄のハブとなることも計画されている本立地は、特に水上交通との結節点と言う性格をも強く持たせることで、都心の多様な交通の東側の結節点、新たな新都心になり得るポテンシャルを大きく持っています。月島方面に空中トラムなどを設ければあちら側の交通の不便なども解決できますし、ニューヨークのイーストリバー沿いの水際エリアが、地下鉄システムの拡張としてのイーストリバーフェリーの開設により、裏側の低付加価値地域から一気に高所得者向けのハイエンドエリアに変貌したように、築地周辺が品川や羽田との水上ネットワークにより都市のフロントサイドになる可能性、東京の表と裏をひっくり返す可能性を、このプロジェクトは握っています。 現時点で、国際的なVIPビジネスやエンタメ拠点としてのスポーツ施設と言うスタンダードから遥かに取り残されてしまっている東京ドームを解体再開発し、こちらに国際レベルのフランチャイズの拠点として、ビジネスや観光までも含めた最先端施設を作ると言うのは理に叶っていますし、むしろ東京のグローバル視点でのVIP社交施設の不足を築地でも補っていく姿勢は、国際的の都市戦略としても非常に重要です。 現時点で東京は、シンガポールやニューヨーク、ドバイのような海から見たときの顔が決定的に不足しています。今回の築地の再開発は、東京の新しい顔を作る、とても重要な機会です。 その意味で、過去の記憶を辿ることも重要とはいえ、今回は大胆な戦略性がとても重要かと思っています。これからの詳細公開を期待しながら見守っています。
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未来系の「麻布台ヒルズ」 開業は11月24日、コンパクトシティーの全貌明らかに
産経ニュース
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
皆さん一斉に反応していますが、コンパクトシティーと言うのは主に地方都市で散在している既存の都市機能や生活圏をコンパクトに集約、再編することで社会的コストの効率化を図るものなので、大都市、特に東京でも最上の極を狙った圧倒的な資本集約型のこのプロジェクトに、この名称を使うのはかなりミスリードだと思います。 本当に辻社長が意識的にこの言葉を使ったのか、あくまでメディア側が勝手に適用したのかはこの文脈では分かりませんが、消費の最上位の極を上に引き上げる動きと横に広がりすぎて身が縮みつつある地方をローカル拠点に集約する動きの本質的な違いは、しっかり明示されるべきだと。 さらに言えば、これからのスマートシティーの本質は、都心一極集約型ではなく、都市拠点の集約力を生かして、それを郊外やリゾートと連携させることで、土地区画や行政区画に縛られない広域の相互依存的なエコシステムを形成/維持することにあります。その意味で都市側の極を単体で上にばかり目指す森ビルのやり方は、オープンと同時に半分時代遅れになりつつある動きでもあると個人的には考えています
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増える図書館、活性化の核に 高知の施設は100万人集客 - 日本経済新聞
日本経済新聞
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
いい動きだし、時代の必然でもありますね。 図書館はむかしからある書籍のシェア施設。本が稀少だった時には民間でも貸本業が成立してましたが、コモディティ化すると好況が非営利の形でアクセスの量を維持する形に移行してきました。最近ではカフェや集会、創作活動などの機能を併せ持つ複合施設として、地域のコミュニティ核施設として計画されることが多くなってきました。建築家がかかわり、特色ある施設として地域のシンボルもしくはプライドを担う役割をうまく備えた成功例も多くなってきています。 一方ITインフラが社会基盤化することで、これまで商業化が難しかったニッチの需要と供給が、低いコストで十分な供給量としてつながる技術的環境ができてきています。その結果、公共でなければ実装が難しかったような多様なアイテムやサービスが、シェアという形で社会実装されるケースが急速に広がっています。Airbnbは居住の、Uberは車移動の、WeWorkはオフィスのシェアビジネスで、その他多様な領域で、ニッチなニーズを接続するシェアサービスが広がっています。 同時に新しい環境ならではの、民間では拾えないけれど公共なら担える、これまででは難しかったシェアの領域もその周辺に広がります。これらを担うのが、次世代の図書館になっていきます。その意味ではかならずしも物理的な場所が不要なサービスの基点という役割も担うことになっていきますし、物流のシェア拠点としての一時保管やピックアップなどにも対応する機能は今後求められるようになるでしょう。個人では所有や保持が難しい機材などのシェアも、図書館のような規模と場所を持つからこそ担えるし、ニーズの規模との相関性も重要です。その意味では、公共の図書館という施設は相応に民間サービスとの相乗りを志向し始めるはずですし、より小さな近隣スケールでは、逆に現行の民間拠点施設として機能しているコンビニが、プチ図書館のサービスも代行するような流れにもなっていくでしょう。 図書館とコンビニの機能のシームレス化とネットワーク化、公と民のグラデーション化、それぞれの運営とコンテンツのシームレス化など、この領域は次世代のスマートシティ実装を考える上で、非常に重要な既存インフラです。そうなると、図書館とコンビニという名称自体、再考する必要が早晩でてくるでしょうね。
アドビの快進撃続く、AI効果で最高値接近へ-モルガン・スタンレー
Bloomberg.com
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
アドビがインター”フェース(平面)”時代のAIフロンティア企業の象徴だったのに対し、次にくるのはインター”スペース(立体/空間)”時代のAI企業ですね。 実際にAppleのVision ProもSpatial Computing(この概念自体は以前からあるのでAppleのオリジナルではない)を打ち出していますし、Chat GPTをはじめとしたLLMやそれに先行したStable DiffusionやMidjourneyなどの画像生成AIが大いに注目を集める中、LLMが扱ういわゆる言語領域に対しての非言語領域への拡張、もしくは画像生成AIの学習対象としての平面画像に対する拡張領域として、空間の記述と認識はまさに今多様な研究開発のホットゾーンとなっています。 ただし、平面から空間への次元の拡張を行う上で、空間の記述の仕方や対象領域が一気に多様化するのと同様に、空間記述と一口にいっても、多様な産業ドメインごとに異なる記述仕様やスケール、精度などのバリエーションが広がっていて、簡単に汎用化や標準化ができる領域ではありません。静的な記述か動的な記述か、対象とするのが空間なのかエージェントなのか関係性なのかに応じても、それぞれ扱う領域は根本的なレベルで異なります。 これらの新しい領域の記述仕様の汎用領域の獲得合戦が今後しばらくの新大陸の獲得競争。個々に関しては、うまく動けばまだまだ日本企業にも戦線に参加する可能性は大いに残されています。
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九州大の跡地をスマートシティーへ 動き出した大開発 企業が熱視線
朝日新聞デジタル
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
スマートシティ実装の候補地として長く話題になりながら、ようやく実装へ動き出しましたね。スマートシティ実装を行う上でのブラウンフィールド実装の難しさがある程度体感されてきている中で、グリーンフィールドの貴重な機会として、しっかり世界目線で有効に活用してほしいと思います。 スマートシティの大きなポイントは、どんな既存の企業や業態でも単独ではできないし、やっても意味がないという点。もしくは事前に有効な構造やビジネスのしくみが見えるわけではなく、開発と実装を繰り返す中で最適な実装アーキテクチャやパラメータを探索することが不可欠だという点にあります。特に日本の大企業の経営層には技術開発や知財の囲い込み型志向が異常に強いので、事前に自社の利益回収が見えていないと、勝ち方が保証されていないと投資に動けないというほとんど病的な強迫観念が根強くあります。しかしこれこそまさにスマートシティの価値構築における最大のアンチ要素で、見えない価値を、共同で、探索しながら開発実装していく姿勢と実行力が、その価値を最大化するためには不可欠です。 他の企業との守秘契約を回すだけでも半年、共同開発の座組や人材の共有体制をつくるのに1年、実際の共同開発を実効的に回せるようになるのにまた1年とかかるような既存の企業の契約や承認、判断の体制を積み重ねるだけでは、おそらくは10年後に今でも予想可能な予定調和的な成果を3つ4つ重ねておしまいということになりかねません。一番重要なのは、産官学すべてに共通した特に法務や契約、体制における前例のない体制の実装力。前例のないスマートシティモデルの先行成功事例の構築のために、関係各所の大胆な踏み出しを期待します。
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ARで観戦するエアレース「AIR RACE X」が渋谷を舞台に開催へ
CNET Japan
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
XRという技術が持つ可能性と現段階での限界、モータースポーツが持つ興奮の規模と限界、二つを掛け合わせたイベントがいよいよ始まります。XRといっても現段階で規模や精度に限りがあり、このスケールでのスポーツでのメイン実装は世界初のはず。 AR技術は日進月歩で進みつつあり、GPSおよび機器内蔵のジャイロ等での位置情報にVPSでの周辺の地物との位置補正を組み合わせることで、スマホのような端末でも相応の精度で視界を振り回せるようになってきました。さらにいわゆるヘッドマウント型のARヘッドセットなら、自分の手や指、眼球の動きなども正確にセンシングし、映像に反映することも可能です。ただし主に広域でのARに使われる前者はまだ精度に、特に大きな振り回しに対して難があり、主に室内で使われる後者はどうしても外部での多人数かつ大規模なイベントへの活用には限界がありました。 その点で、スピードと規模、位置精度や地物のスケールなど、現時点でギリギリ実現可能な絶妙なラインで成立するのがこのARと実際のフライトを組み合わせたAirRaceXになります。 街で感じることのできるスケールとスピード感、室内の特設会場ならではの地物との精度高い連携と圧倒的な立体音場、モータースポーツの一カ所に集まることで生まれる興奮と、それと相反する各チームの本拠地で本番のアタックをイベント化して開催可能という地方分散開催との両立など、これまではF1の都市型グランプリなど一部の特殊例を除いて不可能だった都心型大型モータースポーツの実現に、新しい可能性と参加の選択肢をもたらす画期的な試みです。 僕もNOIZの立場でかかわる中の人でもありますが、急ピッチで進む技術と事業、体験デザインの準備が進めば進むほど、この奇跡的な組み合わせに自分ごとながら驚くばかりです。今年はまだそれでも一度限りの試験開催。来年以降は世界各都市での転戦や、求めに応じて日本の地方都市や特殊な商業施設での開催など、多様な展開が見込まれています。
新SNS「Threads」、登録者数1000万を突破 開始から7時間で
ITmedia NEWS
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
ツイッターの一般アカウントへの一時的な制約が、サービス持続性への先行きへの不安を急激に高めたタイミングにうまく当ててきましたね。タイミングが絶妙です。 InstagramやTikTokなど画像や動画SNSが主流になっていく中、仮にTwitterがダメになった場合文字系のSNS発信の場がなくなる!と多くの人が戦慄したでしょう(Facebookは実質その機能を果たせていません)。まさにそのタイミングでの前倒し投入、準備していたとはいえお見事です。 僕も早速アカウント作ってみましたが(noiz_toyoda_noiz)、ぱっと見は初期のプロモーションもあるのか、直接の友人やフォロワーなど関係なしに、知らない人の投稿がどんどん流れてくる印象です。 僕はTwitter(toyoda_noiz)は現状で主に2つの目的で使っていて、一つはパーソナルメディアとしての情報発信、もう一つはフォローする人の選択による最新の情報や動向、社会の反応や感性のサンプリングです。 一つめの発信目的ではフォロワーが増えてくれるほどに良いので、FacebookやInstagraなど既存のメディアと連携してフォロワーの相乗りを可能にすることで、ゼロから積み上げなくても良いことは大きなメリットです。 一方情報源としてのセレクトメディアという点では、現時点ではほぼ自分の興味に関係のないことがバンバン流れてくる状況なのでまだ評価のしようがありませんが、Facebookでテキストや画像からユーザーの興味抽出をする技術や既存ユーザーの嗜好性データを相応に持っているMetaのことなので、むしろTwitterでは直接フォローするか否かでしか流れてくる情報の選択が(ほぼ)できなかったのに対して、よりAIが間接的な興味領域の情報補填をしてくれて情報収集効率アップということになるのかも、とちょっと期待してはいます。 少なくともほとんど活動実績がない段階で、一定の僕の嗜好性が反映されたフィードが続くようであれば、ほぼ間違いなくFacebookやinstagramでの顧客データを流用しているということになるので、その辺どうなるのか、実験結果が今が楽しみです。
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渋谷は「おじさんの街」化、新大久保は10代が溢れる若者の街に予期せぬ社会的背景
ビジネスジャーナル
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
都市のホットなエリアというのは時間とともに推移していきますし、そのホットだった時期に中心的だった若者世代がそこに固着する形で経過していくので、ある程度以上の大都市には不可避な、自然の摂理に則った都市相の変遷でしかないのかなと。 東京でいっても昔から、繁華街は両国から浅草→銀座→新宿→渋谷のように数十年単位で最先端の街は変遷して、同時にそこで青春を過ごした世代が固着する流れは持続していますし、渋谷単独で見ても、徐々に渋谷中心から代官山や池尻、恵比寿等へのスライドは起こり続けています。むしろ、バブル期の停滞期を象徴するかのように、東京はその都市ののスケールに比して、こうした推移が非常に遅かった位です。 世界中どこの大都市でも、安くて多少治安が悪いところにアーティストや感度の高い若者が入り込み、彼らのたまり場としてアートや先端的な店が増え、徐々に一般人が入り込み、結果としてジェントリフィケーションで最先端の人たちが周辺に押し出されるという都市の新陳代謝の一般形で、これだけ超高層化が起こっている中で、もうその流れは不可逆でしょう。 都市は一つの生態系でありどうしても新陳代謝が必要で、そのためにはエリアを遷移させることで自らの体を入れ替えていく必要があります。むしろその動きがない都市は、活性度の低い都市。日本の文化と経済の中心東京なのだから、どんどん新しい渋谷を別の場所に作っていくくらいの割り切りが必要だと思います。
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2年で10回リピートするほどの人気ボロボロだった築90年の小学校が「観光客が殺到するホテル」に生まれ変わるまで
PRESIDENT Online:プレジデント社の総合情報サイト
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
デジタルなコンテンツがどこでもアクセスできるようになって、世界中のコンテンツが瞬時に出回るようになって、デザインのトレンドと製品とコストのバランス、法的な制約などで新しく作るものがどこでも均質化していく中で、本当にユニークなもの、誰かがデザインできないものは歴史と物語、その場所やモノに蓄積された「想い」の厚さになっていきます。 体験というのは個人の中に新しく作られる部分と、より多くの他者や社会と共有しているものの合成で価値が醸造されるものでもあるので、その場にしかない形や歴史というのは、デジタル時代だからこそより固有性と希少性を持つ価値あるコンテンツになっていきます。 脱酸素などのサステナビリティ等の視点だけでなく、また社会的な正しさとしての文化的/歴史的価値だけでもなく、歴史や物語の蓄積をちゃんと経済的/客観的に評価できるしくみ、もっと広く共有されて一つの有効な手法になってくれるといいですね。 ただ正論を振りかざす、感情や主観に訴えるだけでなく、そういう共有された経済的な仕組みや手法が、こうした日常のちょっといいものに新しい価値を与え、世代を超えて使い続けることが可能な社会をつくっていくと思います。そのためにもこれを一つの特殊解に終わらせず、事業者には仕組みの公開やその後の運用や変遷に関する資料や分析の積極的な公開など、公共視点で進めて行ってほしいいと思います。
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Googleは都市1つを破壊した
AppBank
北海道新幹線「羊蹄トンネル」、強度不足の可能性…熊谷組がコンクリート試験で虚偽報告
読売新聞
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
正しさを追求し始めるとコストは際限なく上がり続け、とは言え大規模で安全性も妥協できない施設では万一のいい加減さもは許されないのも事実だし、難しいですよね…。 札幌の高層ビルの件もそうですが、最近建設工事の細かな検査の不手際が発覚することで、計画全体の信頼性にまで波及するケースが目につきます。人の命や社会インフラを扱う施設にずさんな管理や安全面での不適切さがあってはならない事は言うまでもありませんが、とは言え(今回のケースがどの程度の重要度や許容値の中のことなのかが分からないので何とも言えませんが)ありとあらゆる細かい事象をすべて全体に結びつけていては、とても現実的にこうしたスケールのプロジェクトは扱えません。 施工会社が昭和的などんぶり勘定での管理体制を見直し、デジタル技術を駆使したより効率的なシステムに移行する努力を必要としている事はもちろんですが、一般論としてこれだけの規模の施設の施工や管理には、ある程度の冗長性が組み込まれていることを前提にして議論をする必要があります。スケールの違いを前提にせず、異なる事象や個別の正しさを無批判かつ短絡的につないでしまう事は、無駄な社会コストを劇的に増加させかねません。 山崎豊子さんの「大地の子」に、日本の製鉄会社が中国に技術移転をしていく過程の描写で、巨大な機械にほんの小さな機械の削りカスが1つ入っていたことで大問題になる場面が描写されています。もちろんこれは小説の中の話ですが、いかに規約やがあるとは言え、現実的なバランスも都度考えていく姿勢がいかに大事かが痛感される場面にもなっています。 建築や土木の構造計算やシステム、施工過程には当然ながら十分以上の冗長性が加味されていて、ある程度の細かな齟齬は(システムの規模上どうやってもある程度は生じてしまうことを前提に)吸収できるようになっています。もちろん今回の内容がその範囲を超えないか、今後同様のミスが起きないかの分析は不可欠ですが、同時に冷静なシステマチックな検証をしてほしいなとも思います。ローカルの正義の過剰な適用は、グローバルの価値や調整能力を殺しがちです。
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高層ビル開発、地方に波及 2つの規制緩和で競争過熱
日本経済新聞
豊田 啓介建築家、東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
高層ビルの容積緩和で中心地の活性化という流れ、ある程度以上の経済規模と集約があるところでは定番の金の杖化しつつありますが、これ自体原理としては昭和の産物で思考停止の現れでもあり、当事者たちは目の前の肉を食べるばかりではなくもっと時代に即した新しい仕組みの開発に動くべきなのでは、と強く思います。 こうした容積緩和の仕組みは、広場や地域貢献施設などの提供はあるものの、原則は投資も利益回収も敷地内で完結する仕組み。今のネットワーク型社会の本質である、場所や所属を大きく超えた価値の離散化と流動化の動きにはほとんど関与しない、いわば旧式の重火器による局所戦です。不動産や行政の場所や組織に閉じた仕組みを超え、場所をつなぐ経済的/社会的な仕組みを、都心型拠点の経済力と集約力を生かして提供する可能性を開拓実装する方(そちらへ投資を促す方)が、よっぽど広域に市民に価値を提供するし、自らの長期的な価値も高め(かつ関与領域を広げ)ることになるはずです。 少子化が進み既存ストックがより余るようになる流れの中で、特殊解でしかない都心部がより周縁部から人と金と機会を吸い上げて特殊解化を促進することは、グローバル視点での吸引効果というメリットも相応にあるものの、国全体の体力はむしろ削ぐ方向の動きでもあります。都心の特殊解の利益が直接に、間接に地方に流れ、それが地方の経済や文化活動や価値の向上につながるような仕組み、ネットワークのハブとして広域エコシステムを活性化する仕組みやインフラの開発といった役割こそ、都心型大規模開発に投資できる事業者に、義務として課していくべきです。 文中にもあるように、過度のタワマンの集積は、中央区がすでに露呈しているような短期の過度な小学校ニーズの集中問題を引き起こしますし(世代やステータスの多様化の導入という点で高度成長期のニュータウン問題から何も学んでいない)、さらには災害時の大規模停電などではリスクの集積地にもなりかねないことは、ニューヨークの大停電などでも証明済みです。施設に閉じない災害向けインフラの整備など、より明確に戦略的義務化していく視点も必要です。 不動産業も行政も一番変化の遅い業界。気がついた時には追いつけないくらい時代から取り残されかねません。動くなら、まだ収入がある今です。
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