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【今こそ知りたい】日本が100年前に経験した円安政策の「失敗」
木下 智博追手門学院大学 経済学部 教授 兼 経営・経済研究科 教授
板谷先生と花谷さん、このインタビュー記事に感謝、感謝、感謝です。
高橋是清は、板谷先生の名著が解説しておられように、余りにも多種多様な功績がある人です。それゆえに、現代の日本やアメリカの経済学者から、都合の良い部分だけ切り取られ、我田引水な方法で利用されやすいことが、彼に対する正当な評価を難しくしています。
記事の最後にある日銀による国債引受もそうです。当時は未発達だった国債市場を育成するためにいったん日銀が引き受けてから市場売却するマーケットメークの側面もあったにもかかわらず、2010年代半ばまでの内外の経済論談で「日銀は高橋是清に学びヘリコプターマネーをばらまけば簡単にインフレになるのに怠慢している」という主張をする方がたくさんおられました。
板谷先生のご著書を契機に、高橋是清の事績に対する正しい理解と評価が広がっていくことが期待できますね。
英誌が見た「失われた数十年」から脱却する日本と、“日本化”する米国 | 中国に代わる「アジアのリーダー」に
木下 智博追手門学院大学 経済学部 教授 兼 経営・経済研究科 教授
今後の日本の貿易戦略の向かうべき方向を考えるうえで、重要な論点を指摘している有益な論考です。タイトル「米国の日本化」はミスリーディングですので無視して、最後までご一読ください。
この論考は、安全保障や地政学の観点から国際供給網が分断されていくなか、日本が、アジアの中の「世界の工場」としての中国に取って替わり、全体主義国家と競争・対立する欧米先進国に向け製品を供給し輸出していくリーダーになることを強く期待しています。
しかし、米国を中心とするこうしたアングロサクソン的な世界観に乗っかってしまって、大丈夫なのでしょうか。現在の日本経済は、中国や韓国に向け電子部材や機械を輸出することが重要な要素です。これを切って捨て、米国追従一辺倒で良いのでしょうか。
TPPやパリ協定からの離脱にみられるように、米国の経済外交戦略は、そのときどきの国際情勢や国内政治情勢に応じて融通無碍に変化します。保護主義か自由貿易かという単純な「二択」によって米国の貿易戦略を予想し「日本化」と解説するこの論考の主張は問題があります。日本国政府や日本国民こそ融通無碍な貿易戦略を意識し、これまでどおり、中国を切らない全方位外交、したたかなあいまい戦術を続けることが求められます。
24年世界成長率、3.1% OECD経済見通し
木下 智博追手門学院大学 経済学部 教授 兼 経営・経済研究科 教授
「円安は国難」と決めつける世論のなか、それに異を唱える意見は何を言っても「唇寒し」となってしまいます。
それでも、敢えて書きます。世界経済見通しが上方修正される中で、日本経済の24年成長率見通しが下方修正された原因は、円安ではありません。ダイハツの不正、生産停止を受けた自動車関連産業の生産減少と、原油のドル建て価格の再上昇による所得流出が強い悪影響を及ぼしています。日本の実質賃金がマイナスなのは、輸入品のドル建て価格が上がっている(ここでも所得流出しています)ためで、円安ばかりが原因ではありません。
「円安は行き過ぎ」「円安無策の政府・日銀」と指摘される財界トップの方々は、日本経済のこうした深刻な問題から国民の眼をそらそうとしておられるような気がしてなりません。
日本は約3.5兆円の為替介入実施した可能性、日銀当座預金見通し示唆
木下 智博追手門学院大学 経済学部 教授 兼 経営・経済研究科 教授
以前も同じことを書きましたが、短期金融市場のプロである短資の方々による5月7日の日銀当預見通しとのズレは、ニューヨーク時間5月1日の為替介入を強く示唆します。取引のあった2営業日後に資金決済する慣行のとおりですね。
神田財務官の「24時間365日対応できる体制である」という発言を踏まえれば、ニューヨーク時間5月3日の雇用統計発表後も、要注意ということになるのでしょうか。日本が祝日のため、取引は薄くなるタイミングです。
昭和の猛烈サラリーマンの世界を思い出します。為替ディーラーや財務省の為替資金課、日銀の為替課の方々に、「働き方改革の風」が吹くことを祈ります。
日本は介入で巨額の利益、「安く買って高く売る」典型-セッツァー氏
木下 智博追手門学院大学 経済学部 教授 兼 経営・経済研究科 教授
仮に5.5兆円がドル売り円買いの為替介入だったとしますと、1ドル160円で換算して343億ドルのドル売りとなります。外為特会の平均簿価が1ドル110円と高めに仮定し試算しても、約1.7兆円の為替差益が生じていることになります。
セッツァー氏の考える1ドル80円の簿価でドルを買えたのは、史上最大のドル買い介入だった2011年10月31日の8兆円のドル買い円売り介入のときです。たしかにこのとき外為特会は1000億ドル程度を安く仕入れています。しかし、いつもこれだけ安く買えていたわけではありません。1兆ドルを超える外貨準備全体の簿価は、1ドル100円よりも高いのではないかと想像されます。
29日の為替介入は5.5兆円規模の可能性、日銀当座預金見通しが示唆
木下 智博追手門学院大学 経済学部 教授 兼 経営・経済研究科 教授
5月1日10時30分追記
外為特会に入った5.5兆円は、もともと外貨準備を保有するために政府が発行していた債務(国庫短期証券など)を返済するために使われます。ここまで考慮すると、不胎化介入であるか否かという学者的な議論は、意味を失います。詳しくは、白川元総裁による2008年の著書をお読みください。
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4月30日深夜コメント
日銀当預のプロである短資さんの予想値との差額が5.5兆円ならば、これは4月29日のドル売り円買いの為替介入による資金引上げの可能性が高いですね。
その前提で、財務省の公表している外国為替平衡操作の統計から、介入規模のランキングを推計しますと、ドル売り介入の1日当たりの金額としては、僅差で史上2位になります。1位は2022年10月21日の5.6兆円、3位は同年9月22日の2.8兆円、4位は1998年4月10日の2.6兆円です。1~3位は、神田財務官時代。逆に、ドル買い介入は2011年10月31日の8.1兆円が史上最大です。
円安のメリットを重視する「円安上等」論の私としては、榊原財務官時代から貯めに貯めた外貨準備をここで使うのはもったいない気持ちがします。しかし、1.5兆円を越える巨額の為替差益を計上したことで、神田財務官の金銀銅独占を許したい気持ちもあります。
黒田前日銀総裁が財務官時代を含めた長年の多大なるご功績により勲章を受け取られました。政府や日銀の四半世紀にわたる円高との闘いの時代が、名実とともに終わった、円安との闘いに切り替わった、ということなのでしょうか。
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