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環境省、「炭素税」本格導入を検討…段階的に税率引き上げへ
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授・東京財団政策研究所上席研究員
今は「頭の体操(思考実験)」の段階。段階的に引き上げるとも引き上げないとも断定していない。ましてや、いつ上げるなどと決め打ちできるはずもない。
ただ、将来像として、いずれの時期にか段階的に税率を引き上げることで、脱炭素化に向けた国内の動きを加速させる必要があるというコンセンサスを作ることが重要で、今はそのための地均しをしているというべきだろう。現時点で、そのコンセンサスはまだできていない。
炭素税にいつまでも消極的だと、欧米から「日本は遅れている」と見なされ、日本企業を対象に入れた懲罰的な措置を講じてこないとも限らない。せめて、議論の姿勢だけでも「前向き」と国際的に見せることで、日本企業に欧米で不利にならないようにしなければならない。
炭素税論議の時期として、一つの焦点は、今夏の税制改正要望。これを環境省(と願わくば経済産業省との共同で)から要望すれば、税制審議の与党プロセスに乗せられる。もちろん、与党がどのような結論を出すかは不透明だが、少なくとも議論の俎上に載る。今夏に税制改正要望が出せなければ、そもそも与党内での本格的議論にすらならず「不戦敗」状態になる。今夏に税制改正要望を出せるか否かが、菅義偉内閣として炭素税に前向きか否かを占う試金石になるといえるだろう。
困窮世帯への給付金検討へ 政府・与党、追加経済対策を4月にも取りまとめ
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授・東京財団政策研究所上席研究員
4月に取りまとめるというのは、いかにも予算審議との兼ね合い。目下衆議院で2021年度当初予算政府案の審議中で、3月2日に予算委員会と本会議を開いて採決を行うとセットしたばかり。
さりとて、困窮世帯への給付金について、一旦衆議院で議決されたばかりの予算政府案を修正するとなると、衆議院で議決をし直さなければならない。
3月2日よりも衆議院通過を遅らせると、4月からの新年度に予算成立(予算の自然成立によっても)が間に合わず、内閣の沽券に関わる。
必要性や緊急性が高い予算なら、昨年末の予算政府案の閣議決定前に、きちんと仕込んでおかなければならなかった。今頃議論しても当初予算案に盛り込むには遅い。
通常、予算の追加を要する議論は、予算審議中に政府内はもちろん与党も持ち出さないのが仁義。政府・与党の不統一を露呈して、予算審議で、野党に格好の審議拒否材料を与えてしまう。なのに、こうした観測記事が出るというところは、政権の求心力の衰えの一端が垣間見られるということか。
オンラインで大学がアップデート。「共感力」がつなぐ学びを
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授・東京財団政策研究所上席研究員
オンラインだからこそ、対面ではできないきめ細かい対応がデジタルでできる。それは、たとえリアルタイムでなく、オンデマンドであってもである。単に、一堂に会するか否かの違いだけでなく、対面≒アナログ、オンライン=完全デジタル、という差異も大きい。デジタルでできると、教える側の限界コスト(初期費用はかかるものの、学生が追加的に1人増えたときの費用)が劇的に下がる。その分、きめ細かい対応も可能になる。
学生は、デジタルだからこそきめ細かくできる教員側の対応によって教育効果が高まるという意味で、恩恵が受けやすくなっているだろう。対面だと人目をはばかって質問ができないが、オンラインなら気にせず質問できる場合もある。
経済学者の池尾和人氏が死去 慶大名誉教授
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授・東京財団政策研究所上席研究員
巨星墜つ。<同じ訃報の別の記事へのコメントを転載>
1999年から19年間、同じ学部で同じ分野の教員としてご一緒させて頂きました。2004年度からは共同で企業金融論を担当し、池尾先生がたずさわられたコーポレートガバナンスコードの策定など、リアルタイムで、わが国における企業金融や企業統治の課題に向き合う機会を頂きました。池尾先生が日銀審議委員に推薦されるとの新聞辞令を受け、内輪でフライングの前祝いをしたり、2018年3月の慶應での最終講義の際にパネルディスカッションを企画しモデレーターをさせて頂いたことが、まるで昨日のことのようです。財政投融資などで政府の審議会での委員もご一緒したり、深く議論させて頂いたり、大変お世話なり誠をありがとうございました。
謹んでお悔やみ申し上げます。
池尾和人氏が死去 経済学者、慶応大名誉教授
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授・東京財団政策研究所上席研究員
巨星墜つ。
1999年から19年間、同じ学部で同じ分野の教員としてご一緒させて頂きました。2004年度からは共同で企業金融論を担当し、池尾先生がたずさわられたコーポレートガバナンスコードの策定など、リアルタイムで、わが国における企業金融や企業統治の課題に向き合う機会を頂きました。池尾先生が日銀審議委員に推薦されるとの新聞辞令を受け、内輪でフライングの前祝いをしたり、2018年3月の慶應での最終講義の際にパネルディスカッションを企画しモデレーターをさせて頂いたことが、まるで昨日のことのようです。財政投融資などで政府の審議会での委員もご一緒したり、深く議論させて頂いたり、大変お世話なり誠をありがとうございました。
謹んでお悔やみ申し上げます。
「ウーバー運転手は従業員」 英最高裁が判断
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授・東京財団政策研究所上席研究員
イギリスの法体系で、フリーランスをどう位置づけることにしたから、このような判断になったのだろうか。私が知る限り、米仏独やわが国では、「労働者性」が争点になっている。労働者性が認められると「従業員」とされ、否定されると「従業員ではない」と判断されている。
わが国では、2020年7月に閣議決定された「成長戦略実行計画」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/ap2020.pdf
で、フリーランスとして業務を行っていても、(a)実質的に発注事業者の指揮監督下で仕事に従事しているか、(b)報酬の労務対償性があるか、(c)機械、器具の負担関係や報酬の額の観点から見て事業者性がないか、(d)専属性があるか、などを総合的に勘案して、現行法上「雇用」に該当する場合には、契約形態にかかわらず、独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法に加え、労働関係法令が適用されることを明確化することとされている。
ワクチン接種管理システム 民間企業と3億8500万円で契約
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授・東京財団政策研究所上席研究員
電子母子手帳のノウハウは、ワクチン接種管理にはかなり有用。子供のワクチン接種スケジューラはもちろん、母子手帳での発育記録は、接種後の経過観察記録に相通じる。
接種管理に、マイナンバーを使うか否かは、住民票(住民基本台帳ネットワークシステム)とどちらを使うか次第だろう。ワクチン接種券は、住民票に基づいて配布され、接種管理は(マイナンバーを使わなくても)住民票に基づいて行われるから住基ネットと紐付けるのは容易だ。
しかし、住基ネットには、氏名、生年月日、性別、住所だけでなく世帯構成まで収録されている。接種管理をそこまで紐付ける必要はない、と考えれば、そうした個人情報と紐付けられる心配がないマイナンバーと紐付けて接種管理をした方が無難なのだが、そうした国民的合意が得られるかどうか。
「マイナンバーカードの利用」と「マイナンバーの利用」は次元が異なる。そもそも、マイナンバーは住民票コードから生成されている。接種管理に(マイナンバーカードでなく)マイナンバーを利用することは、本人がマイナンバーを忘れていても自治体側が把握している。マイナンバーの利用に、目くじらを立てる必要はないはずだが・・・
マイナンバー、中国で流出か 長妻氏指摘、年金機構は否定
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授・東京財団政策研究所上席研究員
流出が事実ならばそれ自体は重大な問題だが、マイナンバーとどの個人情報がセットになっていたかで、事の重大性は異なる。マイナンバーと(年金に対する)所得税源泉徴収額だけで、住所や氏名とは紐付けられていないならば、その情報単体ではあまり活用する余地はない。納税のためだけにマイナンバーが用いられたならば、住所や氏名まで紐付ける必要はなく、(年金機構ではなく)それを受け取る国税庁が、他に所得があってそれと合わせて正しく納税されているか否かを確かめるためにマイナンバーで名寄せするまでの話である。
ただ、マイナンバーと住所や氏名と(さらには年金給付額も)セットになっていると、事は極めて重大だろう。
マイナンバーだけでは、それらの情報とは一体化されず分散管理されているという点に、マイナンバー制度の利点があるのだから、委託業者にデータ入力を委ねるなら、マイナンバーとセットにする情報は、極力少なくしておくに越したことはない。複数の情報を紐付ける必要がある際には、委託業者ではなく権限を持つ行政機関内で公務員の手で行うべきだろう。
英財政赤字の穴埋め、1回限りの富裕税が有効の可能性=有力議員
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授・東京財団政策研究所上席研究員
経済学的には、抜き打ちで1回限りの財産課税は、経済活動の悪影響が少なく、経済格差を是正する意味で、望ましい課税とみなされている。抜き打ちで1回限りだと、裁定取引(arbitrage)の余地もなく、所得や消費といった経済活動に比例しない形で課税できるため、経済活動を萎縮させにくい。
ただし、「抜き打ち」でないと、課税を予見した動きがでて、そこに経済活動での歪みが生じてしまい悪影響があるのと、「1回限り」であることにコミットできないと、その後の資産形成に悪影響を与える。
租税法律主義である以上、「抜き打ち」が容易でないし、1度行うと2度目があるかと疑心暗鬼になるから、抜き打ちで1回限りの財産課税が理論通りに効果を出すのは難しい。

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