高橋 寿瑞

賛否両論ありますが、製薬企業がリスクを冒して革新的医薬品を創出し続けるには、それなりの対価も必要となります。革新的医薬品にはきっちりとした適切な対価を支払い、古い薬は価格を下げイノベーションの循環を活性化させながら医療水準を適切に保つということと、一部の疾患を見るのではなく医療全体として適切な医療費水準に保つことが大事だと考えます。 例えばインスリンは糖尿病患者さんにとっては生命に必須であり長い間使われ続けられいる医薬品ですが、つい最近まで高額に設定されていました。New Amsterdamなどのドラマでも取り上げられる社会問題でしたが、バイデンが大半の国民がインスリンの自己負担額を３５ドルまでとする制度を設け、これに乗じてEli lilyがリーダーシップを発揮し今年3月にはインスリンの価格を70％下げました。他のインシュリンメーカーも追従しています。これにより糖尿病疾患における医療費支出が抑えられることとなります。 健康寿命の延長という観点からはアルツハイマーの予防というのは画期的でありますが、その有効性がまだ限定的であるという点は公正に薬価にも反映すべきではあります。

マイクロバイオーム製剤については、先日4月にNestle Science社/Seres社より経口型の再発生C. Difficile感染症がFDAで承認されましたが、武田薬品は４つの関連製品をバイオベンチャーから導入していました。昨年Finch社の導入製品2つを諦め、今回残っていた２製品も断念という大変残念な結果となりました。

シンガポールでは、今年2月に早々とコロナ関連の全ての規制を撤廃しました(病院ではマスクが必要ですが) 。今でも日常的に誰かがコロナに感染していますが、深刻さはなく従来の風邪のような扱いとなっています。 一方で、コロナになった後に原因不明の症状(胸が苦しい、関節が痛い、ALSになった等)を訴える人も多くLong Covidとも言われますが、Covid19との関連性を証明することが出来ていません。終了宣言が出されはしましたが、WHO、厚労省、研究機関が一丸となって後遺症の継続調査と対策の発案を推進してほしいです。 また、アフリカから始まった非常に致死性の高く従来ワクチンも効かない豚へのswine fever virusの感染の波がインドネシアにも押し寄せており、既にシンガポールでは食用豚供給の15%を占めるPulau Bulan islandからの豚の輸入を差し止めています。聞いたこともないようなウイルスが人畜共に流行しており、これからも新たなウイルスを想定した対策は必要不可欠だと思います。

人口減少、高齢化、財政破綻によりあたり前の生活があたり前でなくなるという非常に悲観的でありながら現実的な未来予測を描いていると思います。 日本や多くの民主主義国家の問題点は、論理的に考えて「今取り組むべき活動を素直に取り組むことができない」という利権にまみれた政治システムに陥ってしまっていることだと思います。 少子高齢化は50年以上も前から指摘されていた国家危機であるにもかかわらずなんら改善の見込みすら立てられていないというのは深刻な政治リスクです。 シンガポールでは政治汚職は死刑も辞さない重罪であり、政治家が一丸となって国家の危機を救うという姿勢が本当によく伝わってきます。コロナ対策は最たる例で迅速かつ的確な対策によって早々に普段の生活に戻すことができました。また、先日も世界のデグローバリゼーションに対して危機を募らせており、新興企業への手厚い支援など早々に将来の危機への対策を打ち出しています。 中長期の視点で将来住みやすい日本を作っていくためには、若い世代の積極的な政治への参加が不可欠です。芦屋市の高嶋市長の誕生は、今後の若い世代にも政治に興味を持たせ、さらに多くの若手政治家が生まれることを期待させます。

シンガポールではタクシーメーカーのComfortDelGro がBYDのe6 station wagonを100台採用していて、乗り心地は快適です。バス会社のSMRTも300台のBYD電動バスを採用しています。 国を挙げて2050年までに輸送用途の排出量を80%削減する目標を抱えており、2030年までには充電スポットを60,000ヶ所設置する計画です。テスラも街でよく見かけるようになりました。