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【3分解説】小林製薬の対応の何がまずかったのか
山形 方人Harvard University 研究員
食品で、毎日、同じものを多量に食べるというというのは米、しょうゆなど限られたものです。例えば、ワラビなどを多量に長期間毎日食べるというようなことはないと思います。一方、サプリメントは、成分がある程度濃縮されているものを毎日、長期間摂取するという点が、異なります。成分が決められた医薬品と違うのは、ロットごとに何が入っているのか、わからないということがあると思います。
ちなみに、経営上の判断だけでなく、科学的な視点や姿勢を企業もメディア、消費者ももっと持つことが大切だと感じています。そういう視点から以下のNewspicks記事を書きました。
紅麹菌と納豆菌はここが違う【入門・合成生物学】
https://newspicks.com/topics/synbio/posts/299
紅麹の秘密:遺伝子で理解するポリケチド【入門・合成生物学】
https://newspicks.com/topics/synbio/posts/301
【小林製薬】5人死亡の「紅麹」に何が起きていたのか
山形 方人Harvard University 研究員
一般の治療薬ならば、化学構造が決まっている物質だけが含まれていて、純度についての基準もあって、出荷前にロットごとの確認ができるのです。有機化学的な合成ならば、生じる不純物も想定したものだけのはずです。ところがこの麹サプリの場合、化学構造が決まっている物質だけでなく、さまざまな不純物が含まれているので、その成分を完全に定義することができないという根本的な問題があると思います。
コンタミなど生物的な要因が原因とするならば、これからの解決策としては、培養後に培養した真菌を凍結保存しておき、その一部について、PCR検査やゲノムシーケンシングを行って、ゲノムレベルでアオカビなどの他の生物の混入や紅麹自身の変異が起こっていないという確認をすることが可能だと思います。このような方法が、既に実施されているのか、法的にどのくらい整備されているのでしょうか。最新の技術を使って、品質管理を厳密に行うことは原理的には可能だと思います。
小林製薬「紅麹」サプリ “未知の物質”は「プベルル酸」か 健康被害との関係は明らかにならず
山形 方人Harvard University 研究員
プベルル酸についてはwikipediaに項目ができています(wikipediaの信頼性は議論の対象ですが、文献も引用されており、本項目に関しては詳細な内容が記述されているようです)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%AB%E9%85%B8
全く馴染みのない「プベルル酸」そのものの毒性も気になりますが、もっと重要なのは、真菌Penicillium puberulumなどのアオカビのコンタミの可能性を強く示唆しているということでしょうか。類似したプベルロン酸などの他の物質が腎毒性に関係しているのかもしれません。紅麹の真菌が、条件でこのような物質を作るようになるのか、あるいは変異体が出現したという可能性も否定はできません。プベルル酸がどのような代謝経路で作られるのか、という点についてもほとんど情報がないようですが、遺伝子レベルで解明されることが今後待たれます。
このように代謝物を検出することも有効ですが、もうひとつの原因究明のアプローチとしては、ゲノムシーケンシングのデータが待たれます。オープンサイエンスとして、研究コミュニティに情報を開示するという姿勢も、このような企業の危機管理に際しては、これからの時代大切になっていくものと思います。
子供から大人まで、食物アレルギーで「諦める人」をゼロに。
山形 方人Harvard University 研究員
米国で2月末にFDAが承認した食物アレルギーXOLAIR®(Omalizumab)です。既に、日本国内でも別の目的で使用されていることもあり、承認される可能性もあると思われます。2~4週間ごとに皮下注射というのが課題かもしれませんが、このような食物アレルギー薬を利用した場合と、QOLの比較をすると、それぞれに長所、短所がありそうです。
FDAが承認した食物アレルギー薬
https://newspicks.com/topics/synbio/posts/268
https://www.afpbb.com/articles/-/3506847
サプリ摂取、新たに2人死亡確認 紅こうじ使用、死者計4人に
山形 方人Harvard University 研究員
繰り返しますが、「因果関係」については全く不明であるということは注意したいところです。
小林製薬からの「紅麹関連製品の使用中止のお願いと自主回収のお知らせ(第5報)」などを拝見すると、メディアによる報道内容の奇妙さに気づくと思います。
https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2024/20240328/
「生前に紅麹コレステヘルプをお使いになられていた方(2021年以降使用とお伺い)が亡くなったとのご連絡を、同じく昨日(3月27日)に、ご遺族の方からいただきました。」
ここには亡くなった理由も書かれていません。「水を飲んでいた方が亡くなった」と同じことです。人は誰でも死にます。
おそらく、小林製薬の危機管理での文面作成にも大きな問題があると思います。その点では、危機管理に関わる方にとっては、良くない事例として参考にできるケーススタディになるかもしれません。ちなみに小林製薬の文面を生成AIで評価してもらうと、酷評されて、大修正されます。
小林製薬の「紅麹」サプリ摂取し死亡2人に 厚労省がサプリ3商品の廃棄命令を通知
山形 方人Harvard University 研究員
明らかに報道機関の姿勢として問題のある「見出し」です。
因果関係が全く不明なのに、この見出しでは、摂取して死亡したという因果関係があるような印象を与えてしまいます。
昨日も別の記事でコメントさせていただきましたが、サプリとは全く無関係に、潜在的に腎臓病の罹患者は多く、当然ながら高齢者の方が亡くなる可能性も高いです。
「日本の慢性腎臓病罹患率は成人全体で8人に1人ですが、80歳台では2人に1人と高齢になるに従って高くなります。(日本腎臓学会)」
https://jsn.or.jp/general/kidneydisease/symptoms04.php
むしろ、私が、今回の問題に感じるのは、日本のバイオ関連産業の基盤の弱さ(+日本の報道機関の科学リテラシーの低さ)みたいなところです。ゲノムシーケンシングが1万円でできる時代に、ロットごとのゲノムシーケンシングのデータとか持っていないのでしょうか。
今回の問題とも関係しているポリケチドの説明をさせていただきました。
ポリケチド、NRP、RiPP
https://newspicks.com/topics/synbio/posts/294
小林製薬、遅かった自主回収の判断 積み上げた信頼に傷 工場管理に落とし穴も
山形 方人Harvard University 研究員
私は「紅こうじ」サプリの効能については知識がありませんが、日本で使われているM. pilosus NBRC4520のゲノム解析では、腎毒性があるシトリニンを作る遺伝子が「ない」と、奈良先端大のチームとの共同研究で小林製薬からは発表されています。
https://research.kobayashi.co.jp/material/benikoji/benikoji_report03_1.html
https://bmcgenomics.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12864-020-06864-9
https://en.wikipedia.org/wiki/Citrinin
そういう真菌を使っているということになれば、「シトリニンが混入するはずがない」という信念とそれに基づく判断になると思います。そして、腎毒性がある未知のポリケチドやNRP、RiPPが存在しているという発見にもつながる可能性もあります。科学的にも興味深い事例となると思います。
いずれにしても、遺伝子レベルの解析、合成生物学、企業経営などの関係を科学の問題として、しっかりと捉えることができるメディアが日本に存在しているべきだと、私は思います。
【すぐ実践】これでだいぶラクになる!花粉症対策の新常識
山形 方人Harvard University 研究員
この記事もそうですが、日本の花粉症についての、メディアのリテラシーの低さや「素人」判断による対策こそが、経済的な損害を与えているのではないか、と私は考えています。基本的には、躊躇せず医療機関に相談することだと思います。
3つの対策があると思います。
1番目は、「治療すること」
症状が鼻炎の場合は、鼻噴霧用ステロイド薬(フルナーゼなど、フルチカゾンプロピオン酸エステルやステロイド配合のもの)を処方箋なし(スイッチOTC)で入手できます。ステロイド薬でない点鼻薬は頻繁に使うと、逆に鼻炎を悪化させることも多いです。目のかゆみも、ケトチフェンフマル酸塩という成分が入っている目薬が市販されています(昔はザジテンとして処方されていた)。私の場合、フルナーゼとケトチフェンフマル酸配合点眼薬の2つだけで、鼻炎、目のかゆみは、かなり対処できます。
鼻炎と目のかゆみが、こうした薬だけで十分でない場合は、市販(スイッチOTC)の眠くならない第2世代抗ヒスタミン薬(アレグラ、クラリチンなど)を服用します。アレグラか、クラリチンか、ですが、これは人によって違いがあるようです。私の場合、アレグラはあまり効かず、クラリチンを使っています。花粉量の年ごとの変動にもよりますが、上のステロイド点鼻薬、目薬だけで不十分なピーク時の半月くらいの間、服用することがあります。年によっては不要なこともあります。ひどくなりそうな年は事前に服用するとよいそうです。
病院に行くのは面倒とか、あまり悩まず医療機関を受診すると、もっと良い薬を入手することができるはずです。
それと、20才から30才台の間は一番症状が重いですが、年齢が高くなると、花粉症の症状は軽くなるとも言われ、私もそういう感じです。
2番目は「花粉を避ける」
外出時はマスクを着用します。目のかゆみなど、目に症状がでる場合は、ゴーグルも有効です。花粉飛散量の多い時間帯(正午前後、午前10時から午後3時頃)の外出を避ける。
洗濯物や布団は部屋干しとして、外には出さない。空気清浄機の利用も一定の効果はあるかもしれません(ただし、空気洗浄機やエアコンなどの、集じん効果をうたう機能の一部は疑問視もされています)。帰宅後は衣服を払い、うがい・手洗いを徹底する。
3番目は、「体調に気をつける」
NORMAL
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