ホーム
92フォロー
616フォロワー
【3分解説】円安は158円台に。それでも日銀が「動かない」理由
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
日銀が動か(け)ないとすれば、理由はデフレ脱却に向け、政府と一体となって取り組むことを謳った2013年の共同声明およびその政府がデフレ脱却を認めていないことでしょう。2006年に内閣府が国会に提出した資料によればデフレ脱却の定義は「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがなくなること」。これではいつまでたっても逆戻りする可能性があるとの解釈が成り立ち、日銀は動けません。さて、金利を上げると日本経済がもたない、だから低金利と円安を受け入れるしかない、との論調もみられますが、円安が度を過ぎるとかえってマイナスが大きくなります。例えばこの調子で160円が定着し、資源価格も今の水準が続くとした場合、交易条件の悪化により、今年の交易損失は2022年並みの15兆円程度となりそうです(昨年は約11兆円)。この分だけ日本の実質国民総所得GDIはGDPから下押しされます。一方、日本の家計が抱える債務は昨年末時点で388兆円ですから1%の金利上昇で増える利払い負担は約3.9兆円です。ただ金融資産も2141兆円ありますから家計にとっては金利上昇によるメリットもあり、負担はいくらか軽減されます。これに対し、企業はネットで金融資産よりも債務が多いのですが、それでも差し引き674兆円。1%の金利上昇による利払い負担増は約6.7兆円です。企業からみれば120円や130円でも本来は十分な水準。これでもまだ「低金利+超円安」の方がいいでしょうか。日本は食品、エネルギーの自給率が低く、輸入抜きに生活が成り立ちません。従って物価や経済の安定にとって本来、為替の安定は極めて重要なファクターと考えられます。
日銀の植田和男総裁、円安で影響あれば今後「金融政策の判断材料に」 追加利上げは見送り
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
日銀は物価の番人。そして日本は食品、エネルギーの自給率が低く輸入依存度が高い為、物価は為替と国際的な商品市況の影響をまともに受けます。後者は日本でコントロールできませんから、日銀は表だっては言えないにせよ、物価の安定に本来は為替への目配せも欠かせません。為替介入だけでは円安は止まらないでしょうから夏場にかけて輸入インフレの再燃は必至です。六本木のビルが海外勢の買いで軽く10億を超える状況下、これ以上の円安が日本にメリットがあるとは到底考えにくく、今年の交易損失は軽く10兆円を超えてくるでしょう。30数年ぶりの賃上げでも一向に実質賃金は上がらず、世界に向けて日本のバーゲンセール開催中。しばらく日本(人)は通貨安の意味を体感していくことになると考えられます。
鈴木財務相、為替水準は今の金利差のみでつくられているわけではない
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
金利差と為替の関係は実に不安定で、どの金利を用いるか、名目金利か、実質金利か、などによって答えがいくつも出てきます。一方、2022年以降に限れば、金利差とドル円の相関は極めて高く、例えば日米実質長期金利差から推計したドル円は現在150円ちょっとですから、今の為替水準はほぼ金利差です(±5円程度は誤差で十分に生じます)。一方、シカゴIMMなどで投機筋のポジションを見ますと、確かに過去2年余りの中で、円ショートが最高水準に積み上がっていますから、この辺りを指摘されたいのでしょうが、そもそも投機筋が円ショートを積む背景は、いつまでも実質金利のマイナス状態とそれに伴う自国通貨安を放置してきた日本の政策を見据えた円安期待であり、それが相場です。
日銀総裁「金融政策の変更もあり得る」 円安加速で物価上昇率に影響大の場合
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
当然と思われます。日本は資源、食料とも自給率が低く、ドル建の資源価格とドル円のどちらかまたは両方が上がると輸入物価が跳ね上がり、輸入インフレとなります。日銀はかねてより、これを第1の力として物価と賃金の好循環から生じる理想的なインフレ(第2の力)と切り分け、放置してきました。しかし、広く日本国民にとってインフレに第1も第2もありません。円安は企業業績に恩恵をもたらす一方、家計にとっては交易条件の悪化を通じた実質所得の減少と実質賃金の目減りを招きます。さすがに円安の側に行き過ぎていると考えられ、その抑制に向けた処方箋は介入ではなく、金融政策です。尚、インフレ率を下回る範囲で利上げをする限りにおいては、まだ実質金利はマイナス、つまり緩和的な状況が続くことになり、先般緩和的な環境が続くとした植田総裁発言に矛盾は生じません。
円は約34年ぶりの安値を連日で更新、ドル堅調-一時154円61銭
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
34年ぶりというのは象徴的ではありますが、当時よりも日米とも物価が上がっている為、1ドル、1円の価値がそれぞれ変化しています。従ってドル円の名目の数字が何年振りか、により得られる情報は限定的です。その点、内外のインフレ率の格差を反映させ、貿易量に応じて加重平均した上で指数化している実質実効為替レートが重要です。それによれば、今の円は変動相場制移行後の最安値を更新中です。尚、円安は企業業績、インバウンドにプラスとなる一方、家計には交易条件の悪化(昨年は約11兆円の公益損失が発生)を通じた実質所得の減少、実質賃金の目減りをもたらすなど、対照的なインパクトをもたらします。
円安加速、一時1ドル153円台に NY為替市場
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
足もとでは折からの円安にドル高が被さっており、当面のリスクは155円方向です。円安の主因は短期金利からインフレ率を差し引いた実質金利が大幅なマイナス圏に位置していることであり、そこに手を付けない限り、介入で円安を抑えることは容易ではありません。これは2022年の介入当時より現在の方が円安であることからも明らかです。一方、一段の円安が日銀の利上げを誘発する可能性はあります。日銀の理想とは異なりますが日本が直面する輸入インフレは円安と原油高のWパンチの影響をまともに受けるからです。財務省も介入規模の拡大のほか日銀との政策連携を探っている可能性もあるでしょう。逆に言えば、2022年同様、介入だけの単独メニューではなかなか円安に対抗できないと言えます。
NORMAL
投稿したコメント