自社の事業活動に加え、製品利用で排出するCO2までゼロにする厳しい目標を掲げた。顧客である鉱山の要求は強い。石炭縮小も含め、需要家の動きを上回る変わり身が必要だ。中国勢も力を付けてきた。激変する経営環境にどう対処するのか。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)
小川 啓之[おがわ・ひろゆき]氏
1985年京都大学大学院修了、コマツ入社。2004年コマツアメリカ・チャタヌガ工場長。10年執行役員生産本部茨城工場長、16年常務執行役員、18年取締役専務執行役員。19年に代表取締役社長兼CEO。インドネシア総代表を務めたことがあり、アジアの市場を知る。大阪府出身。
2050年に工場だけでなく、コマツの製品を顧客が使用する段階まで含めて二酸化炭素(CO2)の排出量をゼロにするという目標を掲げました。
CO2削減はお客様からの要望であり、社会貢献としても欠かせません。燃費や消費燃料あたりの生産性を改善して、当社の機械を動かした時に排出されるCO2の量を19年度には10年度比で14%削減しています。さらに弾みを付けようと、19年に発表した中期経営計画では、30年度までに10年度比で機械の生産段階と使用時に生じるCO2を半減するという目標を盛り込みました。
機械の電動化や、自動化・半自動化を進めると同時に、ドローン測量やシミュレーション技術を駆使してお客様の建設工事や鉱山採掘を効率化するソリューションも提供しながら、CO2削減につなげていきます。30年度半減はステークホルダーへのコミットメント。つまり必達目標です。50年のCO2排出ゼロ、すなわちカーボンニュートラルはその延長線上にあります。
50年目標のカーボンゼロはさすがに容易ではない、と。
ハードルは非常に高い。チャレンジ目標です。最終的に必要なのはバッテリー駆動や有線駆動、燃料電池、それからエンジンで言うと水素エンジンです。鉱山機械ではどんな動力でも動くパワーアグノスティックと呼ぶ車種を30年までに開発します。
カーボンゼロは特に鉱山メジャーといったユーザーのニーズが強い。彼らもサプライチェーンの中で製造業からプレッシャーを受けています。
使い手の要請が強い鉱山機械では建設機械とまったく違う時間軸で電動化が進みそうです。英豪リオ・ティントや英アングロ・アメリカンといった大口顧客からは、30年までに鉱山のカーボンニュートラルを達成したいという要求があります。
林業部門を育てる理由
脱炭素はビジネスチャンスになりますか。これまで進めてきたスマートコンストラクションがCO2削減につながるのであれば、競争力が高まるはずです。
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