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ゆったりと余裕のある袖に、胸や腕の部分に赤や青の繊細な刺しゅうが施されたブラウス。ファッションに関心を持つ人ならば、一度は目にしたことがあるだろう。「実はルーマニアの民族衣装『イエ』からインスピレーションを受けたものなのです」。タティアナ・ヨシペル駐日ルーマニア大使は、自身もブラウスを着ながらその魅力を語ってくれた。【日下部元美】
ルーマニアは民族衣装が地域ごとに異なり、イエも刺しゅうの色や柄などに違いがある。ビーズを縫いつける場合もあるが、基本形は胸元に刺しゅうが川の字に入り、腕には「アルティザ」という複雑な刺しゅうが施されている。現在、同様の民族衣装があるモルドバと協力して、アルティザが施されたイエの世界遺産登録を目指している。
「イエは私たちの伝統文化であり、日常(の洋服)でもあります」。祝い事や教会に行く際に着る伝統的なイエは非常に高価だが、比較的安価なものは日常的なファッションとして親しまれている。「軽くて着心地が良く、今、私が着ているように仕事着に合わせても、ズボンと一緒に着てもすてきです」
大使が「生活遺産」と語るイエは、多くのルーマニア女性にとって家族との思い出が詰まっている。「母は私とおそろいの服を着るのが好きで、イエを注文する時は、必ず子どものサイズも頼むのです。一緒に着て、よく写真を撮りました」と幼い頃を振り返る。日本の着物のように親から譲り受けることもあり、大使も中部シビウで母親が買った3着のイエを譲ってもらった。シビウがある地域では黒い刺しゅうが特徴だという。
美の巨人も魅惑
イエは各国の芸術家たちも魅了し、フランスの巨匠アンリ・マティスが描いた「ルーマニアのブラウス」は自身の代表作の一つだ。近年はファッション業界でも注目され、イエに似たデザインの服が出回るようになったが、ルーマニアから着想を得たものだと知る人は少ないといわれる。
大使は「最近、ファッションなどのデザインで特定の文化から影響を受けた場合、その発想…
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