実家の母親にオレオレ詐欺(振り込め詐欺)の電話がかかってきました。
「おばさん?」というので、思わず「あら、タッちゃん?」と、名乗らぬ相手にこちらからおいっ子(私のいとこに当たります)の名前を呼んで反応してしまった。
こうなると詐欺集団の思うツボです。最近の掛け子は洗練されていて、いきなりカネの話などはしてこない。適当な世間話をしながら、相手の家族構成や懐具合にそれとなく探りを入れます。私と同じように、一方的に捲し立てる母親のことですから、家のことを洗いざらい話してしまったのでしょう。「また電話します」と言い残して、相手は一旦電話を切った。
しばらくして、母親はハテおかしいぞ……あの子は私のことを「おばさん」なんて呼んだかしら……と気になってきた。で、タッちゃん本人に電話をかけてみた。当然「私、電話なんかしていませんけど」という話になる。ここでようやくオレオレ詐欺と気付いたわけです。
日本の警察は優秀です。110番を入れると、わずか15分ほどで私服の刑事さんが家に飛んできたそうです。何しろ捜査真っ最中の案件ですから、これ以上詳しい話はできませんが、捜査員諸公が家に来る際のコスチュームからして振るっていました。いや、お役目ご苦労さまです。悪党どもを一網打尽にしていただきたいと存じます。
時計を買って3年がたつので、メインテナンスに出しました。針の多い時計ですからね。トラブルを起こす可能性もそれだけ高くなる。定期的なメンテは、転ばぬ先の杖であります。
ちょうど社長がいらしたので、「せっかくだからお店の写真を撮って載せましょう」と話したら、「それだけはやめてください」と。
ベストカーのインタビューで、BUZZ & Co.の長谷川大祐社長にお話を伺いました。
BUZZ社は今年からマクラーレンF1のスポンサーをしているのです。F1をスポンサーするとはどういうことか、広告効果だけでは語れない、F1の裏話をたっぷり伺いました。どこまで書けるかが問題ですが……。
ということで本編へとまいりましょう。
クルマ選びの確かなレーダー(古い!)。リクルートが発行するカーセンサーの西村泰宏編集長へのインタビュー第2弾です。
フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):中古車オークションってあるじゃないですか。次から次にクルマが出てきて、魚のセリみたいに価格がポンポンと上がっていって、はい落札となるやつ。あそこがいまコロナの影響でひどいことになっていると聞きました。不人気のクルマだと入札が入らず、どんどん流れていってしまう日が続いていると。
カーセンサー編集長 西村泰宏氏(以下、西):事実だと思いますよ。最近はまた賑わい始めていると思いますが、そもそもここしばらくは、新型コロナでオートオークションそのものが開催できない会場もありましたから。登録業者なら、会社にいながらオンラインでも入札が可能です。それでも忙しい業者さんが、わざわざ会場まで足を運ぶ。こんなネットの時代になっても、会場には結構な人数が集まるんですよ。
F:最終消費者と同じように、実車を見ておかないと不安、ということなのでしょうか。
西:それもありますが、やはりあの会場独特の匂いとか空気感に触れておきたいというのはあると思います。会場に行っても入札はそっちのけで、ずっと食堂でダベっているオヤジさんも多いんですよ。オークションは情報交換の場でもあるんですね。
F:なるほど。何しろプロ中のプロが大勢集っている。業界の最新情報を得るにはこれ以上の場はありませんものね。
西:そうなんです。仲のいい業者さん同士で入庫状況や売れ行き動向の情報を交換したりという。一種の社交場みたいな感じになっているので。
F:みなさん会場で必死になって価格ボードを見つめているのかと思いました。
西:今は必死になって価格を見て、こうカチカチやっているのは、ほとんどが外国の人なんですよ。
F:外国人がオークション会場に?
西:はい。いま大変な数の外国人バイヤーがオークション会場に詰め掛けています。もしかしたら成田空港より外国人比率が高いかもしれません(笑)。会場に行くと、アラビア語のポスターとか、見たこともないような言語のポスターがバンバン張ってある。分かりやすく言うと、ターバンを巻いたひげもじゃの人が大勢輪になって話していたりします。そして日本人バイヤーが見向きもしないような、廃車寸前のクルマをこぞって買っていく。
F:ひょえー。そんなことに……。
西:そうしたローエンドなクルマが売れる一方で、ポルシェ911のGT3とか、コンディションのいいR32、R33、R34のGT-Rとか、80スープラとか、そんな希少車があっけにとられるくらい高い値段でどんどん落札されていく。あとランクルとかハイエース等の商用車も人気ですね。中東やアフリカ、アジア圏で高い需要がありますから。アルヴェル(アルファード/ヴェルファイア)なんてもう根こそぎガサッと買っていかれる感じです。
AD高橋マン(以下、マン)マン:フェルさんに基礎知識として入れておくと、日本って世界で一番中古車が安いと言われているんですよ。
F:そうなの? 昔ジャガーの中古は世界で一番安いと聞いたことがあるけど。
マン:ジャガーだけじゃありません。国産のクルマはもちろん、ポルシェもメルセデス・ベンツもベントレーも、間違いなく日本の中古が世界で一番安いです。理由としては、前回も話があったように日本では新車の方が多く売れる。そして中古車を買う人もなるべく新しいものを欲しがる傾向があるからです。一方で品質が高い日本車は年式が古くても壊れにくい。日本のオークションで安く落札できれば、輸送費を含めても向こうで高く売れて結構な利益になるという構図があるんです。
F:そういや海外に行くと、「山口酒店」とか日本のお店の塗装そのままのトラックが走っていたりするもんね。昔バハマに行ったら、大昔の富士急の塗装のバスが走っていた。入り口に「ワンマン」なんてそのまま書いてあったりして(笑)。
西:日本ではいいクルマでも走行距離が10万キロを超えてしまったら敬遠されますからね。値段もガクッと下がる。でも向こうなら20万、30万キロ乗るのなんて当たり前で、10万キロ程度なら、むしろ「日本でいい具合に慣らし運転が終わっていますよ」みたいな感覚なので(笑)。しかも日本は道路のコンディションがとてもいいから、車両がダメージをほとんど受けていない。さらに高いクルマはたいてい屋内保管されていて、オリジナルペイントが残っている。内装も日焼けしてない。コンディション最高です。こうなるともう本当に絵画じゃないですが、がんがん優良物件がオークションを通して海外に流れていっちゃう。
F:これは由々しき問題ですね。少し前は空冷ポルシェがガサっとやられたし、R32、33、34のGT-Rや80スープラなんて、文化遺産の流出じゃないですか。どげんかせんといかん。ボストン美術館へ行くとムカつきますよ。敗戦のときに接収でガサっと持っていかれた名刀がたくさん展示してありますから。このままだとクルマも同じことになってしまう。
マン:いま例に出たクルマとか超高額車って、カーセンサーを見ると「価格応談」になっている場合が多いですよね。あれにはいろいろな理由があるのですが、あるお店で聞いたのは、海外ブローカー対策というのもあるそうです。お目当てのクルマがオークションに出てこないから、お店に並んでいるクルマを買って、向こうへ持っていこうとするブローカーが結構いる。彼らは、高値でも買ってくれる。一方で心ある業者さんは日本にいいクルマを残しておきたいという思いがある。
F:「価格応談」は外国人ブローカー対策。
マン:「ASK」となっている中古車って問い合わせしづらいですよね。つまり冷やかし防止になる。そして問い合わせがしづらいのは業販を狙う中古車販売店や外国人バイヤーも同じ。一概には言えませんが、そういう側面もあるということです。
F:そんな気概のあるお店があるんですか。1円でも高く売れたら、その方がもうかるからいいや、という考えだけじゃないんだ。
西:いやいや、そういう「厳しいお店」は本当にありますよ。お客さんと話すのが商売のための「商談」ではなくて、この人に売っていいものかどうかを見極める「面接」をしているようなお店って、実は結構多いんです。お前なんかには売りたくないと。もちろんモロにそう言うわけではないでしょうが(笑)。こだわってやっている専門店とか、昔のスポーツカーを扱っているようなところは、ほぼ面接と思っていいですね。
F:札ビラ切って、「気に入ったわ。コレちょうだい」とか言うのは……。
西:あーもうぜんぜんダメです(笑)。
マン:「帰れバカ。二度と来るな!」って話ですよホント。
F:いい話じゃない。そうやって文化遺産の国外流出を防ごうとしている業者もあるんですね。
西:でもこれにはいろいろな考え方があって、「日本人だからといって必ず大事にしてくれるとは限らないじゃん。買った後は金をケチってロクにメンテもしないじゃん。むしろ海外の大事にしてくれるファンに流した方が、キチンとメンテもするし毎日ちゃんと乗ってくれるし、クルマとしてはその方が幸福じゃん」っていう業者さんもいますよね。
F:なるほど。確かに確かに。日本刀にしたって、わけも分からず相続した親族が、納屋に放り込んでサビサビになってしまうくらいなら、海外の美術館でキチンと手入れされて湿度も温度も管理された環境下で展示されていた方がずっと幸福なのかもしれません。
西:私は別にどちらが尊いとか美しいとか言うつもりはありません。ど真ん中には、単純に金儲けのためには海外に流した方が効率がいいよね、という人が大勢いるのが現実です。いいとか悪いとかいう話ではなく、ご商売のモデルとして、そういう人たちが一定数いらっしゃる。そしてその人たちが、積極的に“あるタイミング”で、例えば今回のコロナのような大きな転換点でワッと買い漁る。そういう事実があります。それを嫌う人もいれば、利用して高く売って儲ける人もいる、ということなんです。それぞれのご商売のスタイルだと思うんですけれど。
F:なるほど。面白い。いや実に興味深い。
西:あの……こんな話でいいんでしょうか……。ちょっとカーセンサーからはズレてきてしまったような。
F:いやいや、こういうお話こそ伺いたいです。面白ければ何でもいいです。
マン:あー。フェルさんは高ければ誰にでも売っちゃうタイプだわ(笑)。
F:な……僕は文化遺産の国外流出を憂えているんですよ。
西:傾向としては、同じ屋号で3店舗以内のお店。そんなに営利を求めないでやっているところが多いかもしれないですね。もともとクルマが好きでやっているようなお店がそんなイメージです。自分が好きなモデルだけを扱いたいとか。
F:なるほど。大きく多店舗展開をしていない会社。
西:もちろん儲けたいけれども、あまり商売が上手ではなくて多店舗展開していない会社も多いですよ。4店舗、5店舗以上で法人化して、組織立ってエリアリーダーを立てるような、いわゆるビジネス然とした会社は、どうやって利益率の高いものをキチンと数多く売っていくかをシビアに見ています。仕入れの観点からも売値の観点からも厳しくチェックして、台数当たりの粗利をキッチリ管理する。やっぱり規模が大きくなっていくと、そういうマネジメントにどんどんなっていきますね。どこも。
F:でもそれ、普通の仕事なら全く当たり前のことですよね。なるたけ安く仕入れて、極力高く販売して、固定費も可能な限り抑えて利益を最大化させる。中古車業界だけがクルマで儲けるのは悪だみたいに思われるのはたまらないですよね。ちなみに中古車ビジネスって、今でも上手にやれば、いわゆるオイシイ商売なんですか。昔は50万で叩き買って、ピカピカにお化粧だけして翌日に100万で売っちゃうようなことがまかり通っていたわけじゃないですか。
西:今はそこまでの粗利は乗らないと思います。一番難しいのは仕入れです。今が正にターニングポイントで、適切な仕入れルートを持っていれば、恐らくそれなりに利益は出るのだと思いますが。
F:要するにオークションに行って展示場にクルマ並べて売っていても、それほど儲からないということですか。
西:はい。それだけではもう儲かりませんね。オークションで買ってくるタイプの中古屋さんが儲けるには、そこに付加価値を付けて、ある程度高い値段で売れるという仕組みを作らなければなりません。それができているところは、比較的儲けられていると思います。
F:オークションで落としてきたクルマに付加価値ですか。それはどういう……。
西:それはですね……。
と、いいところですが以下次号。そろそろ会社に行かなくちゃ。
そうそう。今回の取材がご縁でカーセンサーに連載することになりました。
私に書かせるなんて、リクルートも度胸あるよなぁ。どうなっても知りまへんでワシは(笑)。
こんにちは、AD高橋です。
先週よりスタートした西村カーセンサー編集長へのインタビュー。前回もですが、今週も「あれ?それって話していいのかな……」という内容もありますが、まあ大丈夫でしょう(たぶん……)。
今回は日本の中古車が海外ですごく人気があるという話が中心でした。日本から輸出された中古車を買った人たちは「ETCカードが挿入されていません」という日本語を覚えるという、笑い話のような本当の話がバズっていましたね。こういう装備はそのクルマが実際に日本で使われていた証になるので、そのまま販売した方が輸出国での信頼性が高まるのだとか。
本編のキャプション(写真の下の解説文のこと)にも書いた通り、タイではアルファードの新車価格が388万9000バーツもします。マジェスティ(日本名:グランエース)が170万9000バーツ(約587万円)ですから、アルファードがどれほど高級車かわかるはず。ちなみにマレーシアでは44万6609リンギット(約1120万円)、シンガポールでは22万5888シンガポールドル(約1740万円)もします。
それでもアルファードの人気は高いといいます。新車の人気が高ければ、当然中古車も人気に。ただ、元々の販売台数がそこまであるわけではないので、日本から中古車が輸出されていくわけですね。ちなみに東南アジアでは高級装備がテンコ盛りの高級グレードの方が人気だそうです。
タイの中古車サイトを見ると初代アルファードが60万バーツ(約206万円)前後、2代目は90万~135万バーツ(約310万~465万円)くらい、現行型は200万~300万バーツ(約690万~1030万円)くらいで売られていて「Contact Seller」(日本で言う価格応談)となっている中古車も結構あります。
初代アルファードだと日本では距離とグレードさえ気にしなければ乗り出し50万円以下の中古車も見つかるし、高いものでも120万円くらいです。
クルマの輸入にはそれぞれの国で独自の規制があります。例えばマレーシアは国産車保護政策により、商業目的の普通乗用車は車齢5年以内のものしか輸入が認められないそうです(車齢25年以上のクラシックカー、ヴィンテージカーは除く)。
米国は、国内で販売されていない車種は米国の安全基準や排ガス試験を通っていないので輸入ができません。しかし、製造から25年以上経過するとクラシックカーとなり、排ガス試験などが免除されます。“25年ルール”と呼ばれるものですね。
2014年にはR32GT-Rが25年ルール適用となり、日本から大量に輸出され相場が高騰しました。1995年1月に登場したR33GT-Rも25年ルールの適用対象に。1999年1月にデビューしたR34GT-Rに25年ルールが適用されるのは2024年。しかし数年前から中古車流通量が激減し、相場が高騰しています。
25年ルール適用とともに海外需要が高まるのが目に見えているモデルですから、少しでも安いうちに買ってどこかに隠している人がいるのかもしれないですね。
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