文在寅「大統領侮辱罪」騒動…国民もメディアも政権に完全に背を向けた

どこぞの「独裁国家」じゃあるまいし

最高権力者が一般国民を告訴!?

文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領が、自分を批判するビラを配った男性に対する侮辱罪告訴を取り下げた。

4月29日、文大統領が国民を侮辱罪で告訴したというニュースが初めて報道されてから、保守メディアだけではなく、左派政党や進歩市民団体からも「大統領侮辱罪は独裁国家でみられる犯罪」という非難が続く状況は、支持率が20%台まで落ち込んだ任期末の文大統領にとって、相当な負担になっただろう。

〔PHOTO〕gettyimages

韓国メディアの記事を総合すると、ターニングポイントという青年団体代表のキム・ジョンシク(34歳)氏は、2019年7月、ソウル汝矣島にある国会前の噴水台広場で、文在寅大統領を非難するビラ数百枚を配布した。

ビラの表面には文大統領や朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長、親文系の次期大統領候補とされる柳時敏(ユ・シミン)盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団理事長などの先代が親日行為をしたという内容が、裏面には「北朝鮮の犬、韓国大統領・文在寅の真っ赤な正体」という日本の週刊誌の記事がプリントされていた。

これが問題になり、キム氏は1年以上にわたって、文大統領に対する侮辱罪で警察の執拗な取り調べを受けた。キム氏は携帯電話を3ヵ月も押収され、10回も警察に出頭して取り調べを受けたが、警察は彼を告訴した人が誰かについては最後まで口を開かず、4月28日にキム氏を「大統領侮辱罪」という起訴意見で検察に送検した。

侮辱罪は被害を受けた本人、あるいは代理人の告訴がなければ捜査が始まらないことから、韓国メディアは、文在寅大統領自身がキム氏を告訴したと推測した。告訴の時点は、キム氏が参考人として警察に召喚された同年10月以前と思われる。

これについて韓国青瓦台(大統領府)は、「2年前に事件が発生した際、文大統領の代理人を通じて告訴が行われた」と説明し、文大統領ではなく、代理人にフォーカスをあてながらも告訴事実については認めた。

しかし、『中央日報』は、「大統領の指示なしに代理人が青年を侮辱罪で告訴したとすれば私文書偽造に当たる」という弁護士の見解を紹介した。告訴代理人になるためには、被害当事者の印鑑が押された委任状を警察に提出しなければならないからだ。

ある韓国日刊紙の記者は、文大統領の告訴が国民的な非難を浴びていることについて次のように説明する。

 

「ビラには“北朝鮮の犬”のような刺激的な表現が使われるなど、韓国国民が見て拒否感を感じられる内容が確かにある。しかし、そうだとしても、最高権力者の大統領が一般国民を告訴するという行為は、進歩層があれだけ独裁政権だと非難してきた李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権でさえなかった初の事態だ。

そもそも、文在寅大統領は、これまで何回も“国民はいくらでも大統領の悪口を言っていい”と言ってきた。文大統領の言行不一致に対する非難という意味合いも大きい」

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