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詳細で緻密なデータを大量に集めて分析すれば、そこから思いがけない発見が得られる。そう思い込んでいる意思決定者がいまだに多い。データ分析はたしかに有益だが、真のインサイトを得るためには、他者の視点で世界を見ることが必要だ。すなわち、顧客と本格的に向き合い、顧客の声に耳を傾けることが避けて通れない。


 詳細で緻密なデータを大量に集めて分析できれば、市場における思いがけない関連性が見えてくると言われている。しかし、「詳細」データは本当に「インサイト」を生むのだろうか。

 この問いの答えがイエスだと思っている意思決定者が明らかに多い。

 たとえば、オーストラリアの4大銀行であるウェストパック銀行、ナショナル・オーストラリア銀行、ANZ銀行、コモンウェルス銀行は、膨大な量の顧客データを分析して、顧客の属性に関する個別の要素(たとえば、性別、年齢、職業など)とさまざまな金融商品やサービスの関連性を見出そうとしている。最大手のコモンウェルス銀行は、ビッグデータ活用の推進を大々的にぶち上げている

 大手銀行だけではない。オーストラリアでは、大手スーパーマーケットチェーンのウールズワースとコールズも、膨大なコンピュータ処理能力を投入し、統計手法を駆使して顧客データを分析することにより「インサイト」を得ようとしている。ウェブ閲覧履歴、ソーシャルメディアの利用状況、購買パターンなど、さまざまなプラットフォーム上のいくつものデータを照らし合わせて、複雑な分析を行っている。

 相関分析と回帰分析などの手法を用いて大量のデータを解析することには、一定の意義がある。しかし、筆者が気がかりなのは、そうした分析手法に頼るあまり、企業のCEOや経営幹部たちがオフィスに引きこもり、顧客の声を聞くという手間のかかる仕事をIT部門に任せきりにしてしまうのではないか、という点だ。