日本は、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを年間約12億1300万トン(令和元年度)排出している。これを水素などクリーンエネルギーや洋上風力などの再生エネルギーの活用で大幅に削減する一方、やむを得ず排出される温室効果ガスと同じ量を吸収や除去することで大気中の排出量を2050年時点で「差し引きゼロ」、つまり「ニュートラル(中立)」にすることを目指すのが、菅義偉(すが・よしひで)政権が昨年10月に表明した「2050年カーボンニュートラル」だ。ただ、実現へのハードルは高い。
各国への支援表明
「気候危機は、世界にとって生存に関わる脅威だ」
16日(日本時間17日)に開催された日米首脳会談の共同声明では、日米が連携して気候変動対策で主導的な役割を担うと表明。「日米気候パートナーシップ」を立ち上げ、(1)米国が復帰した温暖化対策の枠組み「パリ協定」の着実な実施(2)クリーンエネルギーの開発(3)インド太平洋の各国への脱炭素支援-を打ち出した。
22日に開催される気候変動サミットでは、米国が50年の脱炭素実現を視野に、温室効果ガス排出削減の国別削減目標「NDC(nationally determined contribution)」で、野心的な数字を打ち出すとみられる。これを受け、日本が従来の「13年度比26%削減」との既存目標をどこまで上積みできるかが焦点だ。計算上、50年の実質ゼロを目指すために一定の割合で排出量を削減していく場合、30年には同40%以上の削減が必要とされる。日本は難しい選択を迫られている。
ビジネスチャンス
では、なぜ菅政権は一気に実質ゼロへのかじを切ったのか。