米国の安全規格であるUL規格*で長年、不正を続けていた京セラと東洋紡。現在、両社で第三者による調査が進んでいる。このうち、京セラが手を染めたと分かっているのは、いわゆる「替え玉受験」だ(2021年4月4日執筆時点)。
* UL規格 米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories(UL)が策定する製品の安全規格。
ULが実施する認証試験および確認試験(後述)の際に、量産する材料とは組成の異なる「偽のサンプル」を提供。その“優秀”なサンプルで試験に合格して認証を取得した後、実際にはUL規格に対して不適合品(以下、不適合材料)を量産していながら、「適合材料」と偽って顧客に販売していた。
不適合材料は、有機材料および機能性材料だ。同社は「ケミカル製品」と呼んでいる。具体的には、難燃性(UL94)と絶縁性(UL1446)に関して不適合が見つかった。難燃性では、注型レジン(樹脂)とプリミックス成形材料(不飽和ポリエステル)、フェノール樹脂、電機用樹脂ボード、半導体封止材料の5製品が、絶縁性ではワニスの1製品が不適合だったと判明している。
驚くのは、これらの不適合材料を顧客に販売し続けた期間が、実に34年間にもわたっていることだ。ただし、少々込み入った事情がある。