Text by Rebecca Greenfield
LGBTQの人々の具体的な権利をめぐる議論が、日本でも活発になっている。その分野では「先進国」と言えない日本だが、同じような「後進国」ではどんな動きがあるのだろうか? 米経済メディア「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」が、世界7ヵ国からの貴重な声を集めた。
LGBTQの人々を受け入れようという動きが世界中で広がり、彼らの権利も拡大している。
「ピュー研究所」が同性愛に関する世界的な意識調査を始めてから20年が経つが、その間、カナダやケニアなど約10ヵ国で、LGBTQは「社会に受け入れられるべきだ」と回答した人の割合が2桁増となった。
この傾向は、経済発展を遂げ、一人当たりのGDPが高い豊かな国で顕著だ。たとえば、スウェーデンやオランダでは、ピュー研究所の2020年の調査に応じた90%以上の人が受け入れに好意的な回答をしている。
だが、カトリック教徒やイスラム教徒の多い国などで起きていることをよく見てみると、心もとない状況が浮き彫りになる。苦労して勝ち取った権利が保障されず、一部では後退しているのだ。ポーランド各地では最近、反LGBTQの決議が可決されている。
ブラジルでは最高裁が同性愛嫌悪を違法とし、ゲイ男性の献血禁止を覆すなど、LGBTQの権利を擁護する判決が下された。だが一方で、「ジェンダーイデオロギー」に反対するジャイル・ボルソナロ大統領の発言に後押しされ、暴力が急増している。
逆に、世界の意外な場所から、新たな希望の光が見えてきている。2020年、カトリックの牙城であるコスタリカでは同性婚が合法となった。アジアでは珍しく、タイが同性婚を検討している。
トランプ政権下のアメリカでは、トランスジェンダーの軍隊入隊を禁じたことを皮切りに、トランスジェンダーに対する敵意が高まった。だが、2020年、米最高裁はLGBTQの人々の職場における権利の保護を拡大し、バイデン大統領はトランスジェンダー入隊禁止の措置を撤回した。
LGBTQの権利を求める闘いについて、世界各国7人に聞いた──。
ブラジルでは最高裁が同性愛嫌悪を違法とし、ゲイ男性の献血禁止を覆すなど、LGBTQの権利を擁護する判決が下された。だが一方で、「ジェンダーイデオロギー」に反対するジャイル・ボルソナロ大統領の発言に後押しされ、暴力が急増している。
逆に、世界の意外な場所から、新たな希望の光が見えてきている。2020年、カトリックの牙城であるコスタリカでは同性婚が合法となった。アジアでは珍しく、タイが同性婚を検討している。
トランプ政権下のアメリカでは、トランスジェンダーの軍隊入隊を禁じたことを皮切りに、トランスジェンダーに対する敵意が高まった。だが、2020年、米最高裁はLGBTQの人々の職場における権利の保護を拡大し、バイデン大統領はトランスジェンダー入隊禁止の措置を撤回した。
LGBTQの権利を求める闘いについて、世界各国7人に聞いた──。
じつはLGBTQの「オアシス」でなかったタイ
タイ司法省の職員クーチョック・カーセームンジ(56)は、2012年に初めて同性パートナーシップ法の草案を作った。同性間の関係を法的に承認させるという、望み薄い試みだった。
それから10年近くが経ち、同性カップルの共同資産管理や養子縁組を認める彼の法案は、内閣から正式に支持された。
「法案を作りはじめたときは、自分がいつか使えるようになるとは思ってもいませんでした」とクーチョックは語る。ゲイであることを公表している数少ない官僚のひとりだ。
LGBTQにとって、タイはアジアのオアシスというイメージが培われてきた。だが、現実には、法的保護がほとんどなく、LGBTQの人々は日常的に差別を受け続けてきた。
20年前のタイには、LGBTQの権利を明記した法律はおろか、LGBTQについて言及した法律すらなかった。現在は、同性婚を正式に認める3つの可能性があり、そのひとつがクーチョックの法案で、早ければ2021年内にも国会で審議される予定だ。
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PROFILE
Translation by Shiho Tanaka
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