機械学習やニューラルネットワークといったAI技術が、先端SoC(System on a Chip)の開発を支援する時代がいよいよやってきた。半導体設計ソフトウエア(EDA(Electronic Design Automation)ツール)最大手の米Synopsys(シノプシス)社が、機械学習機能を備えたEDAツールの開発を進めており、その第1弾製品を発表した(ニュースリリース)。国内半導体メーカーのルネサス エレクトロニクスが同製品を先行評価し、効果を確認した。

Arun Venkatachar氏。日経 xTECHが撮影
Arun Venkatachar氏。日経 xTECHが撮影

 これまでSynopsysは、ニューラルネットワーク処理向けプロセッサーコアや同コアを含むSoCの設計に向けたEDAツールを開発・提供するなど、AIに関してEDAベンダーとして基本に忠実なビジネスを展開してきた(関連記事1)。しかし、同社がAIに関して行ってきたのは「これだけではなかった」と、2018年6月13日に東京で開催のプライベートイベント「SNUG Japan 2018」の基調講演に登壇したArun Venkatachar氏(Group Director, Verification Group)が語った。同氏によれば、AIに関して3つのことを行ってきたという。このうち1つが上述したAI処理SoC向けの製品の提供である。残り2つのうちの1つが、「Foresight」と呼ぶ機械学習ベースの技術(ソフトウエア)を使って、社内でEDAツールを開発する効率を高めてきたこと。もう1つがForesightの適用で蓄積した機械学習の活用ノウハウを、EDA製品に組み込む開発を進めてきたことである。

 学会などではEDAツールに機械学習技術を採り入れたという発表はすでに複数ある(例えば、関連記事2)。その動きがいよいよ商用のEDAツールにも広がった。SNUG Japan 2018に先立つ6月5日に、Synopsysがスタティックタイミング解析ツール「PrimeTime」のECO(Engineering Change of Order)機能に機械学習技術を実装したと発表した(詳しくは後述)。Venkatachar氏はフォーマル検証ツールの「VC Formal/VC LP」(関連記事3)へ機械学習技術を採り入れた効果を基調講演で紹介しており、PrimeTime以外にも機械学習技術を実装するEDAツールは増えそうだ。

機械学習機能付きのEDA製品の第1弾「PrimeTime」を先行ユーザーが評価した結果。処理速度が向上していることが分かる。Synopsysのスライド。図中のGBAはGraph Based Approachで、PBAはPath Based Approachの略
機械学習機能付きのEDA製品の第1弾「PrimeTime」を先行ユーザーが評価した結果。処理速度が向上していることが分かる。Synopsysのスライド。図中のGBAはGraph Based Approachで、PBAはPath Based Approachの略
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