ヘルスケアのユニコーン 「出口」過去最高の水準に
21年3月3日時点での世界のヘルスケア業界のユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)は51社で、合計企業価値は1181億ドルに上る。
こうした企業の成長に伴い、企業価値が10億ドル超でエグジットを果たすヘルスケアのユニコーンの数も増えている。この業界のユニコーンによる全てのエグジットのうち、20年以降に起きたものは55%を占める。21年には個人の遺伝的特徴を検査する米トゥエンティースリー・アンド・ミー(23andMe)などのユニコーンが既にエグジットの方針を明らかにしている。
今回のリポートでは、ヘルスケア業界のユニコーンによるエグジットの増加と、これが業界の未来にもたらす意味について分析する。
知っておくべきこと
・20年のヘルスケアのユニコーンのエグジット活動、過去最高の水準に : 20年にエグジットを果たしたヘルスケアのユニコーンは7社で、18年の2社、19年の4社から明らかに増えている。7社には新たな形のプライマリーケア(初期療法)を手掛ける米ワンメディカル(One Medical、20年1月)、独バイオ製薬会社キュアバック(CureVac、20年8月)、リキッドバイオプシー(1滴の血液による疾病診断)でがんを早期発見する米グレイル(GRAIL、20年9月)などが含まれる。
・ヘルスケアのSPACが登場 : 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて公開市場に不確実性が生じたため、20年には時間がかかる従来の新規株式公開(IPO)を経ずに企業を上場させる「ブランクチェック(白紙の小切手)」の空箱企業SPACの設立が急増した。より速く確実にエグジットにたどり着けるメリットがあるため、20年以降、後期段階(シリーズDよりも後)のヘルスケア業界のユニコーン5社がSPACを活用した上場に目を向けている。こうした企業には超小型の超音波装置を手掛ける米バタフライ・ネットワーク(Butterfly Network)、トゥエンティースリー・アンド・ミー、オンライン薬局の米ヒムズ(Hims)が含まれる。
・ヘルスケアの有力ベンチャーキャピタル(VC)投資家、多額の利益を回収 : 15年~21年3月3日のヘルスケアのユニコーンへの投資件数トップ10社のうちの5社が「ヘルスケア・スマートマネーVC(CBインサイツが選んだヘルスケア業界の有力VC25社)」だった。5社には米ゼネラル・カタリスト、セコイア・キャピタル・チャイナ、米ベンロックなどが含まれる。こうした投資家はバイオ医療の米10Xゲノミクス(10X Genomics)やオンライン医療保険の米オスカーヘルス(Oscar Health)などのユニコーンへの投資で高リターンを得た。
次の展開は
・短期的にはヘルスケアのユニコーンのエグジットが増える : ヘルスケアのユニコーンの67%が最終段階だ。こうした企業は一般投資家からの資金調達に目を向けるため、エグジットは増えるだろう。医療テック市場全体でも、投資家がエグジットを求めている成熟企業は数多くある。
・21年はヘルスケアSPACの1年になる可能性 : 調査会社SPACトラックによると、ヘルスケア・ライフサイエンス業界で対象企業を積極的に探しているSPACは約53社に上る。このため、21年を通じてSPACを活用した上場を選択するスタートアップが増える見通しだ。
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