抗生物質にまみれ…日本のニワトリが辿る「悲劇」をご存知ですか?

目を背けてはならない

白かった羽も黒ずんでいく

「私が勤務していたブロイラー鶏専門の養鶏場では、一つの鶏舎に約4万~5万羽の鶏がいました。ブロイラーは肉用鶏なので、ケージ(鳥かご)飼いではなく、地面の上で『平飼い』で飼育されていました。

しかし、平らで広々とした場所で鶏が自由に歩き回っているわけではありません。窓がない『ウインドレス』と呼ばれる鶏舎の中で、1㎡あたり16~17羽の鶏がすし詰めにされていました。

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どのぐらい密集しているかというと、常に満員電車の中にいるような状態です。鶏たちは生まれてから出荷されるまで、餌を食べるのも、寝るのも、ずっとその状態で過ごすのです」

そう語るのは、関東北部のブロイラー農場で働いていた梅田正孝さん(仮名)だ。

唐揚げ、焼き鳥、卵焼き、オムライスなど、私たちは毎日のように鶏肉や卵を使った料理を口にしている。

日本人の一人当たりの卵の年間消費量は約340個で、世界2位('19年)。鶏肉の消費量はアメリカやEUなど、肉食文化の国には劣るものの、世界8位となっている。

さらに、'18年度の農水省の調査では、日本人が最も食べている「肉」は、豚肉(年間12・9キロ)や牛肉(同6・5キロ)を抑え、鶏肉(同13・8キロ)である。

日本が世界有数の卵と鶏肉を愛する国なのは間違いない。だがその背後には日本のニワトリたちの大きな悲劇が隠されていることをご存知だろうか。

 

日本のニワトリは主に食肉用の「肉用鶏」と、卵を産むために育てられる「採卵鶏」に分けられる。前者の代表種が「ブロイラー」だ。

ブロイラーのヒナは生まれてすぐに鶏舎に移される。窓がなく、薄暗い鶏舎の中で、ギュウギュウ詰めになって暮らすのだ。梅田さんが話す。

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