「ロシアがトランプ大統領再選を狙い情報工作」と結論 米国家情報会議

2月28日、米フロリダ州オーランドで開かれた集会で演説するトランプ前大統領(ロイター=共同)
2月28日、米フロリダ州オーランドで開かれた集会で演説するトランプ前大統領(ロイター=共同)

 【ワシントン=黒瀬悦成】米大統領の諮問機関である国家情報会議(NIC)は16日、昨年の米大統領選への外国勢力の干渉に関する報告書を公表した。報告書は、ロシア当局がプーチン大統領の承認の下、トランプ大統領(当時)の再選と民主党のバイデン候補(現大統領)の追い落としを図る一方、選挙プロセスに対する米有権者の信頼をおとしめ、米社会と政治の分断を促進させる目的で情報工作を展開したと結論づけた。

 報告書は具体的な事例として、プーチン氏が工作員として自ら管理下に置くウクライナの親露派国会議員、アンドレイ・デルカッチ氏が「選挙干渉工作に重要な役割を果たした」と指摘。米メディアなどによると、同氏はトランプ氏の個人弁護士だったジュリアーニ元ニューヨーク市長にバイデン氏および息子のハンター・バイデン氏に関するウクライナ絡みのスキャンダル情報を提供した情報源だったとされている。

 報告書は一連の醜聞情報の信憑(しんぴょう)性には言及していない。一方で「ロシアの戦略は、露情報機関に連なる人物を通じ、バイデン氏に不利となる無根拠で誤解を招く情報を米メディアや著名人、トランプ氏に近い人物に拡散させることだった」と指摘し、名指しを避けつつもジュリアーニ氏らがロシアの情報工作に利用されたことを強く示唆した。

 また、ロシアは大統領選が終わってからも、米国民に選挙結果に疑問を抱かせるよう仕向ける工作を展開し、バイデン氏の信用失墜を図ったとしている。

 報告書はさらに、イランがトランプ氏を落選させようと選挙干渉工作を展開したと指摘する一方、中国は米国との安定した関係を求める立場から選挙干渉を控えたと分析した。

 報告書は今年1月7日に退任直前のトランプ氏や政権高官、議会指導部などに機密文書として提出された。今回の公表にあたっては特定の情報や情報源、情報の入手方法など、今後の情報活動に支障が出る内容を削除したとしている。 

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