日本で2月17日に新型コロナウイルスのワクチンが承認されてから、1ヶ月ほどが経とうとしている。日本ではまだ医療従事者など一部の人のあいだでしか接種が行われていないが、いち早くワクチン接種を導入していたイスラエルでは、2021年2月の時点で国民の半数以上が(2回接種するタイプのワクチンの)1回目の接種を完了。70歳以上の高齢者の80%以上が2回目の接種を完了している。

そんななか、2月24日、アメリカの医学雑誌『New England Journal of Medicine』にイスラエルで行われたワクチンの効果を検証する大規模な研究の結果が掲載された(※1)。その内容をもとに、現時点でわかっている新型コロナウイルスのワクチンの有効性について解説したい。

 

速やかに大規模研究ができた理由

イスラエルでは予防接種開始後から、国内の感染者数が減少している。ワクチンの効果ではないかといわれているが、予防接種と並行して、イスラエルは強力なロックダウンも行っているため、患者数の減少がワクチンの効果だけによるものかは断定できないともいわれていた。

ワクチンの効果であるのかどうかを確認するには、ワクチンを接種した人と、まだ接種していない人を同じ条件で比較する必要がある。それを実現したのが、先の大規模な研究だ。

研究の詳細について伝える前に、イスラエルの医療保険制度について簡単に説明したい。イスラエルは日本と同様に国民皆保険制度だが、中身はかなり異なっている。イスラエルには4つの非政府、非営利の健康保険組織があり、国民はその中からいずれかを選択して加入する仕組みになっている。

「Collection of Statistical Data - 20 Years of the National Health Insurance Law」より筆者作成

図に示すように、Claritが最大の健康保険組織で、2014年時点で人口の過半数が加入している。次いで、Maccabiがシェア2位となっている。また、これらの健康保険組織は健康保険を提供するだけでなく病院を運営し、共通のプラットフォームに基づいて医療を提供することで、施設間でデータの共有を可能にしている(※2)

このような仕組みがあるので、個人の病歴の把握も容易で、研究に関しても、大規模なデータベースを速やかに構築し、解析を進めることができるのだろう。現在、施設間で個人の医療情報の共有がなされていない日本では、このような研究は難しい。