日本人がまだまだ知らない、オードリー・タン「天才以外の5つの顔」

台湾のデジタル担当大臣オードリー・タンに、世界中が注目している。新型コロナ危機において、台湾は「世界で最も防疫に成功した」と賞賛され、マスクマップを開発したオードリーもまた、さらに広くその名を知られるようになった。

台湾在住の筆者がオードリーを初めて取材したのはコロナ前の2019年10月。Yahoo!ニュース特集のインタビューだった。「オードリーさんのような大臣がいる台湾がうらやましい」「新しく設立されるデジタル庁に来てほしい」「日本のデジタル施策はオードリーさんにお願いしたい」――こうした反応が驚くほど多かった。

だが、台湾在住者として感じていることがある。20時間近く彼女に単独対面インタビューを行い、『オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと』という本を書いて見えたことがある。

台湾は決してオードリー単独でコロナの封じ込めに成功した訳ではないし、台湾におけるオードリーも、決して皆を引っ張る絶対的リーダーのような存在ではないということだ。彼女は2016年の入閣時に行政院長(首相に相当)に対し、「命令は受け付けないし、自分からもしない」という条件を提示していることからもわかるように、どちらかというとバックアップを得意としている。

一体、オードリー・タンとは何者なのか? 日本からは見えてこないオードリーにまつわる「5つのこと」を、現地からお届けする。

〔PHOTO〕gettyimages
 

1. 多くの共感を呼ぶ、その生い立ち

中学中退という学歴やトランスジェンダー、IQ180の天才現役ハッカー、「世界の頭脳100」選出、台湾史上最年少の35歳で入閣など、オードリーは話題に事欠かない。

そんな天才的な頭脳や技術を持ちながら、入閣時には「公僕(公衆に奉仕する人のこと。一般的に公務員を指す)の公僕になる」と宣言し、政府の中で手腕を発揮し続ける姿を見て、台湾人たちは口々に「オードリー・タンは台湾の希望」と語る。

ただ、はじめから今の彼女があった訳ではない。波乱と希望に満ちたオードリーの生い立ちは、日本でも多くの人々に希望を与えてくれるに違いない。

関連記事