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 経済産業省・中小企業庁は2021年3月中にも「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)」の公募を始める。2020年度第3次補正予算で1兆1485億円を計上した。新型コロナウイルス感染拡大による経済落ち込みへの対策の一環だ。

 補助額は最大1億円。デジタルトランスフォーメーション(DX)のためのIT投資でも補助金を受けられる可能性がある。中小企業だけではなく中堅企業も対象になる。2021年3月上旬時点では詳細が未定の部分も多いが、IT関係者はIT投資にも使える補助金として知っておくべきだ。

事業再構築補助金の目的と申請要件
事業再構築補助金の目的と申請要件
(出所:中小企業庁)
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 中小企業庁の概要説明資料によれば、申請要件は「1.売上高が減っている」「2.事業再構築に取り組む」「3.事業計画を策定する」などだ。

事業再構築に関わるシステム導入費などを補助

 このうち、2.の「事業再構築」が何を指すかが大きなポイントになる。詳しくは今後公表される「事業再構築指針」で示される。現時点で中小企業庁が示しているのは、例えばコロナ禍で売上高が減少した居酒屋がオンラインで弁当の宅配事業を新たに開始する業態転換をするケースだ。そのための建物改修費やシステム導入費、広告宣伝費などが補助対象になる。

補助対象経費と、対象外経費
補助対象経費と、対象外経費
(出所:中小企業庁)
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 紳士服販売を営む小売業で売上高が減少したため、紳士服のネット販売やレンタル事業の業態転換する例も示している。このケースも、建物改修費やシステム構築費などが補助対象になる。

 現時点での例示では「システム購入費」「クラウドサービス費」、ネット広告の「広告宣伝費」などのIT関連経費も幅広く補助対象として認められる。ただしパソコンやタブレット、スマートフォンなどの「汎用品」の購入費は補助対象外となることに留意が必要だ。こうした汎用品は制度の趣旨に反して転売・転用される懸念があるため、他の補助金制度でも対象外とされることが多い。

中堅企業も対象

 売上高が減っていることは絶対要件だが、事業売却や撤退などの「リストラ」は要件ではない。補助金を所管する中小企業庁経営支援部技術・経営革新課は「新しい製品・サービスを出したり、新しい売り方にチャレンジしたりすることを広く対象とするので、積極的に申請してほしい」と呼びかける。

 補助額は100万~1億円。中小企業庁の制度ではあるが、法令上の「中小企業」だけではなく、資本金10億円未満といった「中堅企業」も対象になる。最大補助額1億円を獲得するには、中小企業は400社限定の「卒業枠」、中堅企業は100社限定の「グローバルV字回復枠」に選ばれる必要がある。これら以外の通常枠でも補助額上限は中小企業が6000万円、中堅企業では8000万円と比較的大きい。