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東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災。復興の様子や課題、人々の移ろいを取り上げます。

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地震予測の舞台裏

「科学だけでいいのか」調査委トップの苦悩と異例の判断 /2

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南海トラフ地震による津波が想定されている高知県黒潮町の沿岸部=高知県黒潮町入野で2019年9月2日、本社機から
南海トラフ地震による津波が想定されている高知県黒潮町の沿岸部=高知県黒潮町入野で2019年9月2日、本社機から

 国の地震調査研究推進本部・地震調査委員会が2013年5月に公表したマグニチュード(M)8~9クラスの南海トラフ地震の長期予測では、30年以内に「60~70%」という発生確率が前面に打ち出された。しかし、実際に議論した地震学者たちは、別の算出方法による「10~30%」を支持していた。なぜ、このようなずれが生じたのか。非公開だった議事録などをもとにひもといていく。

研究が進むほど困難になる「予測」

 地震の発生メカニズムは複雑で分かっていないことが多く、現在の地震学ではいつ起きるか正確に予測できない。地震の研究が進むほど、予測の難しさが分かってきている状況だ。

 こうした中でも、地域によっては同じような規模の地震が、ある一定の間隔で繰り返し起きている傾向も読み取れる。このため地震調査委員会は、南海トラフ以外の全ての地震に関する長期評価では、過去の発生間隔のデータを使った「単純平均モデル」で確率を算出している。この手法で、南海トラフの地震発生確率を計算すると、30年以内に「10~30%」となるという。

 ちなみに「30年」で区切って確率を示すのは「一般国民が人生設計を検討するに対象とするであろう期間」(地震本部の資料)との理由からだ。政策的に防災に生かすためで、決して地震学的な理由からではない。

 しかし「30年」にしているがゆえの問題がある。地震の発生間隔は…

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