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南米ブラジル最大都市サンパウロの貧困街で、一人の音楽家が子供たちの非行防止を目的にボランティアで音楽教室を開いている。この教室は、新型コロナウイルスの流行で学校が閉鎖され、居場所をなくした子供の受け入れ先にもなった。指導に打ち込む背景には、自身を音楽の世界に導き、その後非業の死を遂げた親戚への思いがあった。
1月末、「ファベーラ」と呼ばれる貧困街の一つ、サンパウロ・パライゾポリス地区の駐車場。打楽器演奏家アカシオ・ヘイスさん(28)のかけ声に合わせ、4人の子供たちがたたく太鼓の音が響いた。週末に開かれる無料の「青空教室」の生徒は約60人。この日は二つのクラスで6~12歳の計7人が練習した。全員が手を消毒し、感染防止に努めている。
へイスさん自身も子供の頃から音楽教室で楽器を学んだ。先に入っていた3歳年下の親戚ダニエウ・ジルベルトさんに誘われたのがきっかけだった。パーカッションの腕を磨いたヘイスさんは17歳でオーケストラに入団し、プロの道を歩むことを決意。その後オーケストラは経営難でつぶれたものの、特待生として音大を卒業することができ、現在はイベントでの演奏などで生計を立てている。
一方、別の道を歩んでしまったのがジルベルトさんだった。通っていた教室の閉鎖を機に音楽から離れたジルベルトさんは、やがて貧困地区の犯罪組織に加わり、少年院や刑務所に入るようになった。ヘイスさんは何度も足を洗うよう説得した…
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