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 ルネサス エレクロニクスは2021年2月10日、2020年第4四半期および通年の決算を発表した(決算短信)。報道機関とアナリスト向けオンライン会見の冒頭、代表取締役社長兼CEOの柴田英利氏は20年を振り返って次のように述べた。「上期は、この先どうなるのかという不安にさいなまれた。下期は自動車を中心に需要が戻った。目まぐるしく状況が変わった1年だった」(同氏)

ルネサスの2020年第4四半期および通年の決算(Non-GAAPベース)
ルネサスの2020年第4四半期および通年の決算(Non-GAAPベース)
(出所:ルネサス)
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ルネサスの2020年第4四半期および通年の決算(GAAPベース)
ルネサスの2020年第4四半期および通年の決算(GAAPベース)
(出所:ルネサス)
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 同社の20年通年の売上高は前年比0.4%減の7157億円だった。売上高はほぼ横ばいだったが、「20年通年の営業利益額、営業利益率、粗利率は、いずれもルネサス発足以来の過去最高を記録した(Non-GAAPベース)」(柴田氏)。20年通年の営業利益は1375億円(Non-GAAPベース。GAPPベースでは651億円)、営業利益率は19.2%(Non-GAAPベース。GAPPベースでは9.1%)である。

 目まぐるしく状況が変わる1年だったのは、ルネサスの半導体売上高の約半分が車載向けのためだ。20年の車載半導体の需要は大きく変動した*1。ルネサスの車載事業の売上高で見てみると、第2四半期に急減速、第3四半期には早くも回復に転じた。第4四半期には大きく伸びたが、20年通年では前年比8.1%減少した。もう1つの事業(産業・インフラ・IoT事業)の20年通年の売上高は、半導体世界売上高の前年比伸び率である6.5%よりも、約4ポイント高い10.3%増だったものの、車載事業の減少分を補えず、全体では0.4%の減少となった。

ルネサスの事業別の売上高推移
ルネサスの事業別の売上高推移
(出所:ルネサス)
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 なお、半導体業界最大手の米Intelの20年通年の売上高は、競合の米Advanced Micro Devices(AMD)の追い上げの影響があったものの、前年比8%増で過去最高を記録した*2。そのAMDの20年の売上高はIntelの約8分の1だったが、前年比は45%増と非常に大きく伸びた。AMDの売上高も過去最高である。新型コロナウイルスはIT分野では追い風だったが、自動車分野では逆風となったことが分かる。