日本株に資金流入 ワクチン承認で「コロナ後」先読み

日経平均を示す株価ボード=15日午後、東京・八重洲(佐藤徳昭撮影)
日経平均を示す株価ボード=15日午後、東京・八重洲(佐藤徳昭撮影)

 日経平均株価が15日、約30年半ぶりに3万円台の大台を回復した。市場では、「日本経済の成長軌道入りを示唆する象徴的な出来事だ」(大和証券グループ本社の中田誠司社長)と歓迎する声が挙がる。一方、新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言が続く中、期待先行の株高にはバブル崩壊への警戒感もくすぶる。

 先週末から15日にかけて、いくつかの好材料が重なった。12日には、イエレン米財務長官が先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で「今こそ大胆な財政出動に踏み切るときだ」と呼びかけ、景気刺激策への期待感が醸成された。国内では14日、ワクチンの製造販売が承認された。

 企業業績の回復傾向も鮮明になってきた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストは「ソニーなど経済構造の転換に対応し、最高決算を出す企業が出てきた。平成バブルとは状況が異なる」と語る。

 1株当たり最終利益の何倍の価格がついているかを示す株価収益率(PER)を比べると、日経平均の予想PERは平成バブルの際は70倍に達したこともあったというが、足元では23倍程度と割高感は薄い。

 15日は米国市場が休みとなることも、海外資金をいつも以上に日本株に向かわせた。

 その際、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の辞任劇が日本株への注目度を高めたとの見方もある。エコノミストの豊島逸夫氏は「一連の騒動を受けて、海外投資家は日本はオールジャパンで大会を強行開催すると受け止めた」と指摘する。

 日経平均は今月に入って計2420円上昇し、一部で過熱感も出ている。とはいえ金融引き締めの気配が出てこない限り、コロナ収束後を先取りした上昇トレンドが崩れることは考えにくい。(米沢文)

会員限定記事会員サービス詳細