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 米国時間2021年2月1日深夜(日本時間1日午後8時)に米Tesla(テスラ)の創業などで知られるイーロン・マスク氏が話題の音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」(米Alpha Exploration(アルファ・エクスプロレーション))に初めて登場した。マスク氏がどんな話をするのか興味津々のユーザーがルームに殺到。システム全体が不安定になる騒動となった。おかげでClubhouseの1ルームの最大収容数が約5000人だと明らかになった。さすがマスク氏だ。

Clubhouseの秘密を探っていると…
Clubhouseの秘密を探っていると…
(イラスト:ヤミクモ)
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 これが何を意味するか。前回説明したとおり、Clubhouseの1人あたりの音声ストリームのビットレートは50kbps。これが5000人なので単純計算で音声ストリームの合計帯域は250Mbps、スピーカーが4人で最大1Gbpsとなる。これは現在の一般的なLinuxサーバー1台でまかなえる処理量とほぼ一致している。マスク氏の登場でClubhouseのシステム全体が不安定になった事実とも合致しているように思う。なお、現在は入室者が5000人を超えると、入室制限がかかるようにシステム側で対応策がとられている。

遅延が小さいから雑談が弾む? どうやらそうではない

  Clubhouseを使って驚くのはオンライン越しの会話なのに妙に雑談が弾むところだ。著者は音声系のネットアプリの開発に関わるエンジニアで、Clubhouseがどうやって「雑談しやすさ」を実現しているのか、実際の通信を解析し、技術的な裏付けを調べてきた。引き続き、Clubhouseの技術の秘密を探っていく。

 前回までにClubhouseが単純なクライアントサーバ-型の接続であることや最大4人までしか同時発話できない仕様などが分かってきた。次に調べたのは遅延だ。Clubhouseが雑談しやすいのは遅延が少ないからだという説は根強い。もっともらしく聞こえる話だが、これも測ってみるとそんなことはなかった。