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 「198円+税」「198円(税抜き)」。こうした表示は2021年4月1日から違法になる。消費税の税込み価格を表示する「総額表示」が義務化されるからだ。今後、事業者は「217円(税込み)」、あるいは単に「217円」などと表示する必要がある。

2021年2月上旬時点では「総額表示」に未対応であるリクルートライフスタイルのアプリ(左)と、NTTドコモのWebサイト
2021年2月上旬時点では「総額表示」に未対応であるリクルートライフスタイルのアプリ(左)と、NTTドコモのWebサイト
(撮影:日経クロステック)
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 店頭やチラシ、Webサイト、スマートフォンアプリなど消費者の目に触れる全ての価格表示が義務化の対象だ。「100円ショップ」の看板を「110円ショップ」に変える必要はないなどごく一部の例外はあるものの、事業者は大多数の表示を変更する義務がある。

 税抜き価格と税込み価格(総額表示)が混在すると、消費者にとっては価格の比較がしづらかったり、最終的に支払う金額が分かりにくかったりする。そのため、もともと消費税法は総額表示の義務を課している。ただし経過措置として特別措置法を制定し、2021年3月末までは総額表示をしない特例を認めてきた。この特例が失効するため、4月1日以降は総額表示が義務化される。

 事業者が違反しても罰則はない。ただし、財務省主税局の担当者は「消費者から価格表示について苦情があるようなら、所轄の税務署から行政指導することもあり得る。消費者の誤認を防止する観点から、義務を果たしていただきたい」とくぎを刺す。事業者が法を無視して税抜き価格表示を続け、消費税分を安く見せようとした場合、社会的批判を受ける可能性が高い。

2カ月前時点で未対応の事業者も

 世の中を見渡すと、既に総額表示に対応済みの事業者も多いが、一部に未対応の事業者がある。

 例えば、航空や鉄道・バスなどは既に総額表示が浸透している。だが、リクルートライフスタイルが運営するホテル予約サービス「じゃらん」のWebサイトやアプリでは、2021年2月上旬時点で宿泊料金を総額表示ではなく税抜きで表示している。同社広報は「総額表示に対応予定で準備中」とする。Webサイトなどで2月24日から総額表示に切り替えると告知している。

 通信業界では、「月額2980円」などの税抜き価格で料金の安さを訴求するのが一般的だった。だがこれも過去のものになりそうだ。NTTドコモは「Webサイトの価格表記は早ければ2月中にも切り替える。ショップやカタログなどの表示も3月中に順次切り替える。特に店頭で古い価格表示のままのものが4月以降も残らないように丁寧にやらなければならない」(広報)とする。

 一方で、総額表示に合わせて価格改定をする事業者も出てきそうだ。リンガーハットは3月1日から、総額表示で10円単位になるようにして硬貨の受け渡しを減らす価格改定をする。主力メニューの「長崎ちゃんぽん」の価格は東日本エリアで税込み649円から650円に変わる。メニューによって値下げになるものと値上げになるものがある。

 ファーストリテイリング傘下のユニクロは2月上旬時点では、店頭やオンラインストアで「1990円+税」といった価格表示を続けている。「法令に従う方向で対応を検討しており、決まり次第発表する」(ファーストリテイリング広報)という。