キリンホールディングス(HD)は5日、ミャンマーでのビール事業の合弁パートナーであり、国軍系の年金基金ファンド会社、ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHPCL)との提携を解消すると発表した。ミャンマーからの事業撤退はせず、同社との交渉は今後行う。ミャンマーでは外資系企業が8割以上の株式を保有できないため、代わりとなる現地企業との提携を模索することになる。
MEHPCLは従前からミャンマー軍の資金源になっているとの指摘を国際的NGOから受けていたが、今回の軍事クーデター発生で、キリンHDは「ビジネス規範や人権方針に根底から反するもの」として、同社との提携解消を決めた。
MEHPCLは軍人や軍事家族の福利厚生を目的とした年金基金を運用するファンドで、1990年に設立。2016年には公開会社化され、ミャンマーに進出した外資系企業との合弁事業も多い。
キリンHDは2015年、ミャンマーの民主化の進展に伴い、現地ビール会社ミャンマー・ブルワリーの当時の発行済み株式の55%(現在の保有割合は51%)を5億6000万ドル(当時のレートで約697億円)で取得、同国へ進出した。17年にはマンダレー・ブルワリーを約5億円で子会社化したが、両社の取得での合弁相手先がMEHPCLだった。
ミャンマーのビール市場は09年から19年の10年間で6倍増となる成長市場。ミャンマー・ブルワリーはシェア8割を占め、19年の事業利益は129億円。キリンHDの海外事業の中でも重点市場となっている。