スポーツ・健康のいま

「乳酸」は競技力向上の源

【スポーツ・健康のいま】「乳酸」は競技力向上の源
【スポーツ・健康のいま】「乳酸」は競技力向上の源
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 サッカーやラグビー、あるいはマラソンなどのスポーツにおいて、試合や競技の前半と後半では、選手はどちらが疲労を感じるかと問われれば、おそらく大抵の人は「後半」と答えるのではないだろうか。前半と後半で、乳酸がたまっているのはどちらか、と問われても、同様に「後半」と回答するだろう。しかし、実際は、前半よりも後半の乳酸濃度は低いのである。

 こうした思い違いは、乳酸が「疲労物質」や「筋肉痛の原因」と誤解されてきたことによるものかもしれない。そう、最近のスポーツ科学の分野では、それが誤解であることがわかってきた。筆者らの研究成果から、乳酸はむしろ運動中の骨格筋や脳のエネルギー源となり、持久性競技力の向上や、試合中に重要となる状況判断能力(例えば、サッカーでパスするかシュートを放つか、など)の維持などに関わることが明らかとなった。つまり、試合中に骨格筋から生み出された乳酸をしっかりと利用することが、競技力向上の重要な要素なのである。

 では、乳酸の利用能力を高めるにはどのようなトレーニングが有効か。それは、乳酸を生み出すような比較的激しい運動トレーニングを行うことである。

 例えば、中程度の強度の運動を一定時間実施するよりも、短時間でも高強度の運動を休憩を挟んで行う高強度インターバル運動の方が、高次脳機能(状況判断能力など)が高まることが、最新の研究で判明した。さらに、乳酸が骨格筋の生育や脂肪分解を促進することもわかってきた。

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