全2106文字

 老朽化したシステムが企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を阻害した結果、2025年以降、最大で年12兆円の経済損失が生じるとした「2025年の崖」。期限が迫るなか、ユーザー企業はCOBOL資産を継続すべきか、マイグレーション(移行)すべきかの岐路に立たされている。

 しかしどちらの道も険しい。現在企業に残るCOBOL資産は100万ステップを超えるような「ラスボス」級のCOBOL資産ばかりだからだ。ここで言うマイグレーションとはメインフレームなどで稼働するCOBOL資産をオープン系COBOLやJavaプログラムに変換することを指す。

 ラスボス級のCOBOL資産をマイグレーションするのは年単位で時間がかかる。そこでベンダー各社はマイグレーションを効率化する取り組みを強化している。例えばアクセンチュア(東京・港)は2021年2月1日、COBOLプログラムをJavaプログラムに自動変換するサービス「VENUS」を持つジェイ・クリエイション(東京・千代田)と協業した。COBOLプログラムの変換効率を高めてプロジェクトの期間短縮やコスト削減を狙う考えだ。

 アクセンチュアは自社でCOBOLからJavaへのプログラム変換するツールを持っている。2019年3月にカルテック・エスキューブ(大阪市)から知的財産譲渡によって得たツール群だ。変換ツールを持つという面ではライバル同士がなぜ協業に踏み切ったのか。

2025年の崖で案件急増

 アクセンチュアとジェイ・クリエイションの協業は大きく2つある。1つは「互いが持つ変換ツールのノウハウを共有する」、もう1つが「アクセンチュアが手掛けるマイグレーションプロジェクトにジェイ・クリエイションのエンジニアが参画する」である。

 協業の背景にあるのは、マイグレーションプロジェクトの急激な増加である。「年間のマイグレーションプロジェクトの数は、『2025年の崖』が発表されてから2016~2018年の約3~4倍に増えた」。アクセンチュアの西尾友善テクノロジーコンサルティング本部インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービスグループマネジング・ディレクターはこう証言する。ジェイ・クリエイションの赤木伸作取締役技術本部本部長も「近年では受注したくても人的リソースが限られているため断るケースが増えた。機会損失が発生していた」と続ける。

 残されたCOBOL資産は巨大であり、結果としてプロジェクトの規模も大きくなる。大量のエンジニアの確保が不可欠だが、多くの案件もこなしたい。そこでツールの変換効率を一段と高めるためにライバル同士が手を組んだというわけだ。