シンガポール・ケッペル、リグ事業から撤退へ
【シンガポール=谷繭子】シンガポールの政府系複合企業、ケッペル・コーポレーションは28日、一時は主力だった石油掘削リグ事業から撤退すると発表した。ロー・チンホア最高経営責任者(CEO)はネットを通じた記者会見で「(脱石油の)エネルギー改革は急激に加速しており、石油生産に対する逆風は非常に強い」と述べた。今後は洋上風力発電や液化天然ガス(LNG)生産のプラットフォーム、水上データセンターなどを強化する。
リグ建設は15年ころから低迷していたが、前期は原油安がさらに進み状況は悪化した。同日、発表した2020年12月期決算は最終損益が5億600万シンガポールドル(約396億円)の赤字だった。リグ事業の売掛金や資産価値の減損に備え、9億5200万シンガポールドルの引当金を積んだ影響が大きい。最終赤字はアジア経済危機の1998年以来だ。19年12月期は7億700万シンガポールドルの黒字だった。
20年12月期の売上高は前の期に比べ13%少ない65億7400万シンガポールドルだった。新型コロナウイルスのよる経済の減速で原油価格が落ち込んだのが影響した。
経営再建にむけ、倉庫、トラックなどの物流事業も売却する。物流は電子商取引の拡大で成長しているものの、競争を勝ち抜くには新規投資が必要だ。ローCEOは「投資は環境事業など重点分野に回す」と説明した。自己資本利益率(ROE)を19年の6.3%から2030年までに15%に引き上げる目標の達成に向け、事業の選択と集中を加速する。
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