サウジアラビアなどアラブ4カ国、カタールと国交回復【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

2021年1月18日 14:58

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記事提供元:フィスコ


*14:58JST サウジアラビアなどアラブ4カ国、カタールと国交回復【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】
2021年1月6日にAFPは「サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、バーレーンの4カ国と3年以上にわたり断絶していたカタールが国交を回復した」とサウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハーン外相が発表したことを報じた。1月5日、サウジアラビア北西部のウラーで開催されたペルシャ湾岸協力会議(GCC:Gulf Cooperation Council)の首脳会議にカタールのタミム・ビン・ハマド・サーニ首長が招かれ、会議終了後に国交の完全回復が公表された。

サウジアラビアはカタールに対して、イランとの外交関係の縮小、トルコの軍事基地閉鎖、イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」への支援停止、カタールに本拠地を置くメディア「アルジャジーラ」の閉鎖などを求めてきた。カタールはこれに応じず、かえってイランやトルコとの関係が親密化する状況であった。このため、湾岸諸国を結束させてイラン包囲網を築きたいトランプ政権は積極的な仲介工作を行ってきた。今回の国交回復の合意内容は明らかにされていないが、カタールのアブドゥル・ラフマン・アル・サーニ外相は、イギリスのファイナンシャル・タイムズに対し、「ペルシャ湾岸協力会議の加盟国との友好関係復活は時間がかかるかもしれないが、カタールはこの地域の緊張を緩和するための解決策を望んでいる」と、この地域の情勢の安定化に前向きな意向を示した。

これまでのカタールの外交姿勢は独特だ。イスラム教スンニ派のカタールがシーア派のイランと関係を強化したのは、世界最大の天然ガス田サウス・パースを共有しているという経済的な繋がりからだ。食料などを全面的に外国に依存していたカタールは、2017年のアラブ4カ国との断交により、陸路、空路の補給ルートが完全に閉鎖され、窮地に追い込まれた。その際、援助の手を差し伸べたのが、ムスリム同胞団と共通の繋がりを有するトルコであり、経済的協力関係にあるイランであった。一方で、カタールは、米国と同盟関係を結んでいる。アル・ウデイド基地は中東最大規模の米空軍基地であり、将兵ら1万1,000人以上が駐屯し、最新鋭のステルス戦闘機F-22が展開している。

アラブ各国は、イスラエルのパレスチナ問題が解決されるまで、アメリカやイスラエルと関係を深めない政策をとってきた。しかし、近年、イスラエルよりむしろイランを敵視し、その動向を注意深く見守るようになってきている。その表れとして、2020年の8月から12月までの間に、UAE、バーレーン、スーダン、モロッコが次々とイスラエルと国交を回復している。そして今回のサウジアラビアをはじめアラブ4カ国とカタールが国交を回復した。AFPは国交回復を仲介したクシュナー大統領上級顧問も湾岸協力会議に姿を見せたと報じており、トランプ政権によるイラン包囲網構築工作を受けたものと窺われる。

1月20日にスタートするバイデン次期政権の中東政策チームは、ブリンケン国務長官、サリバン国家安全保障担当補佐官など、オバマ前政権での中東政策の専門家達で構成される。バイデン次期政権は「イランとの核合意への復帰」を掲げ、イランとの対話路線を模索するようだ。しかし、オバマ前政権当時とは戦略環境が大きく異なっており、「合意復帰」は険しい道のりとなるだろう。今回のアラブ4カ国とカタールの国交回復により、湾岸諸国における勢力図がどう変化するのか、米国の次期バイデン政権がどのような舵取りをするのか、中東情勢は引き続き、不安定で不透明な状況が続くだろう。


サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。《RS》

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