ふくおかFG「みんなの銀行」、デジタル世代の支持狙う
ふくおかフィナンシャルグループ(FG)は14日に事業概要を発表したデジタル専業の銀行「みんなの銀行」について、2023年度までに120万件の口座を獲得し、事業を黒字化する目標を掲げた。同行は21年5月にサービス提供を始める予定で、デジタルとの親和性が高い若年層を中心に囲い込みを狙う。構築したサービス機能は一般企業への提供も視野にいれ、利用データの収集・分析を通じて次世代の金融サービスのあり方を探る。
同日、都内で記者会見した同行の横田浩二頭取は「店舗などのしがらみから離れ、デジタルの世界でゼロから銀行を設計した」として、「お金の世界の『SNS(交流サイト)』」になることを目標に掲げた。
同行はスマートフォンアプリを通じ、口座開設や入出金などの銀行機能と、収支管理や決済など生活に関わる機能を一括で提供する。ターゲットとする20~30代に使ってもらえるよう、口座開設をいつでもスマホで完結できるなど利便性を売りにする。開業3年目には預金残高で2200億円、ローン残高は800億円を目指す。
ふくおかFGでは1981年以降に生まれ、子どものころからデジタル機器に親しんだ世代が、2030年には就業人口の6割以上を占めると推計する。同世代は今後、資産形成や相続で重要な顧客層となるが、銀行とのつながりが希薄化している。つなぎ留めは将来のグループ経営に直結する課題で、みんなの銀行がその一翼を担う。
次世代の金融サービス開発に欠かせないデータの集積拠点にもなる。例えば、融資審査での活用が期待される人工知能(AI)が威力を発揮するのは「顧客単位で5千件からが目安」(同行幹部)。データ数が多いほど顧客の行動分析や審査の精度は上がる。
みんなの銀行は既存の銀行本体より一般企業や金融機関と組みやすく、地域や業種の壁を越えてデータを集めやすいとみる。横田頭取は与信などシステムの個別機能を切り出す形での外部連携を90社超と協議しているとして、「(データの共同分析など)金融と外部データの融合で新たな価値を創造できる」と話す。
勘定系システムも業界初となるクラウド完結型を採用した。ふくおかFGとしても中長期的にコストが安く微調整もしやすいクラウドへの基盤システム移管は悲願だが、「グループ内だけで200超の個別システムがあり時間がかかる」(幹部)。みんなの銀行でシステムを素早く微調整する経験を重ね、将来銀行に必要なシステムのあり方を探る。
ふくおかFGが同行開設へ19~20年度に約100億円を投じたのは「次世代への先行投資の意味合いが強い」(幹部)。新銀行には一定の収益とともに、次世代の金融機関のあり方を探る「探検隊」としての成果が求められている。
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