トランプ氏支持者扇動 共和党に離反の動き

6日、米ワシントンの連邦議会議事堂の前に集結するトランプ大統領支持者ら(ゲッティ=共同)
6日、米ワシントンの連邦議会議事堂の前に集結するトランプ大統領支持者ら(ゲッティ=共同)

 【ワシントン=黒瀬悦成】米民主党のバイデン次期大統領の就任を正式確定させた6日の上下両院合同会議は、本来は単なる形式的手続きであるにもかかわらず、暴徒の乱入で一時中断されるという未曽有の騒動に発展した。共和党のトランプ大統領が敗北を頑として認めず、「不正選挙があった」とする客観的根拠のない主張を展開して選挙への信任を傷つけ、支持者を扇動してきたためだ。

 連邦議会議事堂が襲撃されるのは、米英戦争終盤の1814年、議事堂が英軍に焼き打ちされて以来207年ぶりとなる。

 上下両院合同会議で進行役を務めたペンス副大統領は、合同会議の再開に際し「私たちはきょう議会を守った」と述べ、「暴力は決して勝利しない。自由が勝利する」と強調した。

 FOXニュースなど複数の米メディアによると、トランプ氏が議事堂への乱入に対応しようとしなかったことから、ペンス氏が独断でミラー国防長官代行らに電話をかけ、州兵部隊の緊急出動を要請した。

 トランプ氏による「不正選挙」の主張に同調し、合同会議で選挙結果に異議を申し立てると表明した共和党の上院議員13人と下院議員百数十人も、この日の事態を受けて異議を取り下げる議員が相次いだ。

 これらの議員は元来、トランプ氏の退任後の影響力や支持基盤の票にあやかることを見越して同氏を支えてきたが、政治専門家の間では、急進的な同氏の支持勢力によるこの日の行動を機に、一般の共和党支持者の間で潮目が「トランプ離れ」に変わる可能性があるとの指摘が出ている。

 共和党のキンジンガー下院議員は声明で「トランプ氏はもはやわが党の指導者ではない。同氏による(議事堂襲撃の扇動という)反逆罪に相当する行動を拒否すべきだ」と訴えた。

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)社説は「トランプ氏は残り2週間の任期を全うするには不適格だ」とし、米憲法修正25条に基づく同氏の解任を主張した。

 バイデン次期政権は、6日のジョージア州の上院決選投票の結果を受け、民主党が上下両院を支配する比較的有利な状況で政権を運営することが確定した。

 ただ、トランプ氏および支持勢力は、今後もあらゆる形でバイデン氏に対して政策遂行の妨害や醜聞の追及を通じて攻撃を仕掛けていくとみられ、対立が尾を引くのは必至だ。

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