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29歳、フェラーリを買う──Vol.83 2020年を振り返る

『GQ JAPAN』の編集者・イナガキ(29歳)が、ひょんなことから中古のフェラーリを購入した! 勢いで買ってしまったフェラーリのある生活とは? 今回は、2020年を振り返る。
29歳、フェラーリを買う 360モデナ 360Modena ローマ ROMA 812GTS
Hiromitsu Yasui

こんなに長く乗るとは思いませんでした

2020年も360モデナと楽しいカー・ライフを過ごせた。当初は去年の車検時(7月)まで数カ月だけ乗るつもりで購入したものの、気づけば1年以上所有している。近年所有した愛車のなかでは、“かなり”長く乗っているほうだ。

【前話】Vol.82 人生初のツーリングに参加

振り返るとDS 3カブリオとアバルト500は約半年で、ルノー・トゥインゴGTは約1年。直近のアルファロメオ・ジュリアはたったの4カ月だった。もっともジュリアの場合、クアドリフォリオに乗り換えようと思っていたぐらいだったので、けっこう気に入っていたが。

が、アルファロメオ横浜町田のバックヤードに360モデナが置いてあったため、運命は大きく変わった。思いもよらなかったことに、フェラーリ・オウナーになってしまったのだ。

わが360モデナは2019年3月に納車された。

ボディカラーは「ツールドフランス」と呼ばれるダークブルーだ。

納車後すぐに町田から御殿場を目指した。

装着タイヤはブリヂストン「ポテンザ」。溝は残っていたものの、2007年製造だった。

購入初年度は車検があったため、大きな出費を要した。100万円近くかかったけれど、おかげで調子は絶好調! 2020年はあまり大きなトラブルはなかった。

とはいえ、細かいトラブルはいくつかあった。ドアロックの不調冷却水漏れなど、だ。ただし、いずれも、走行に重大な支障をきたすほどのものではなかった。20年落ちのフェラーリだから、この程度はしかたない、か。

Vol.78 愛車をイベントに展示しました(後編)
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ドアロック・システムの不調が2020年のスタートだった。

わが360モデナの整備は神奈川県横浜市のフェラーリ横浜サービス・センターに依頼している。

ドアロック修理時、エアバルブキャップをフェラーリのロゴ入りのタイプに変えた。小さな自慢?

4本・8953円のエアバルブキャップ。レッド以外にイエローもある。

12カ月定期点検の費用は9万6800円。内容はエンジンまわりやベルト類などのチェック、フェラーリ専用テスターによる各システム点検、ホイールボルトの締め付けなど。

12カ月定期点検時に発覚した冷却水漏れ。

とはいえ、今後、どんなトラブルが発生するかはなんともいえない。重篤なトラブルが発生し、長期間工場に入庫するリスクもゼロではない。

そこで、新車ないしは認定中古車のフェラーリを購入することを考えた。新車は、今話題の「ローマ」である。性能もさることながら、美しいスタイルに一目惚れしたのだ。

ローマの商談に出向いたのは、「Nicole Competizione みなとみらいショールーム」。2014年2月にオープン。住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1。

ディーラーに足を運び、商談したものの、納車まで数年かかるというので断念した。マンション購入費用を若干抑えられたので、買えないことはなかったけれど、新型コロナウィルスの感染拡大が止まらないなか、数年先の人生がまったく読めなくなってしまった、という事情もあった。新型コロナウィルスの問題がなければ、勢いで購入していたかもしれない。

ちなみに認定中古車は、好みにしっくりくる個体がなかった。気長に探そうかなぁ、と思わぬでもなかったが、やめたのは、360モデナの魅力を再発見したからだ。

Vol.56 新車フェラーリの購入はいかに
Vol.55 いざ、新車フェラーリの商談へ!
Vol.54 ローマの購入を真剣に考える

購入を検討した認定中古車は、Nicole Competizione 横浜認定中古車ショールームで販売されていた2015年型の「カリフォルニアT」。走行距離は1.4万kmで、価格は1898万円だった。

新車当時のカタログをチェックする筆者。

インテリアの状態をチェック。

最新フェラーリに乗って360モデナの魅力を知る

昨年末、「ローマ」や「F8スパイダー」、さらには「812GTS」など最新フェラーリを立て続けに乗る機会があった。とくにローマについては次週、詳細を記したい。

いずれの3台も最新のフェラーリだから、最良のフェラーリのはず。エンジン・サウンド、そしてパワー、フィーリングなど最高だった。快適装備だって満載だ。わが360モデナと比べると、20年分の差は大きい。

【主要諸元(812GTS)】全長×全幅×全高:4693×1971×1278mm、ホイールベース2720mm、車両重量1645kg、乗車定員2名、エンジン6496ccV型12気筒DOHCガソリン(800ps/8500rpm、718Nm/8000rpm)、トランスミッション7AT、駆動方式RWD、タイヤ(フロント)275/35ZR20(リア)315/35ZR20、価格4508万円(OP含まず)。

Hiromitsu Yasui

フロントに搭載するエンジンは6496ccV型12気筒DOHCガソリン(800ps/8500rpm、718Nm/8000rpm)。

Hiromitsu Yasui

一部にカーボンを使ったステアリング・ホイールはオプション。調整は電動だ。

Hiromitsu Yasui

812GTSは電動開閉式のルーフを持つ。812スーパーファストのオープン版だ。

Hiromitsu Yasui

0-100km/hの加速タイムは3.0 秒。

Hiromitsu Yasui

だからといって、360モデナに魅力がないのか? と、聴かれたら、答えはNoである。年末、箱根ツーリングに出かけたとき、あらためてわが360モデナの魅力を知った。

とくに自然吸気エンジンならではの気持ち良さは格別だ。シンプルなインテリア・デザインも好ましい。細かな部分では、フロントのラゲッジルームに置かれたスケドーニ社製のレザーのツールボックスが素敵だ。ちなみに今のフェラーリのツールボックスは布製にグレードダウン(?)している。

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Vol.80 クラシケ取得費用に納得
Vol.79 スーパーカーとソーシャルメディア

【主要諸元(ローマ)】全長×全幅×全高:4656×1974×1301mm、ホイールベース2670mm、車両重量1570kg、乗車定員4名、エンジン3855ccV型8気筒DOHCターボ(620ps/5750〜7500rpm、760Nm/3000〜5750rpm)、トランスミッション8AT、駆動方式RWD、タイヤサイズ(フロント)245/35ZR20(リア)285/35ZR20、価格2676万円(OP含まず)。

Hiromitsu Yasui

最低地上高は十分とられており、車高調整システムはない。

Hiromitsu Yasui

最高速度は320km/h。

Hiromitsu Yasui

最新のフェラーリは、工業製品としていっそう素晴らしいものになっている。信頼性も格段に向上しているというから羨ましい限りだ。ボクの360モデナはというと、それほど信頼性が高いとは言えそうにない。以前、業界の先輩が“高価な民芸品”と評していたのが印象的だった。

が、民芸品ならではの深い味わいがあるのも事実。その味わいに、最新フェラーリに乗ってあらためて気付いたのは大きな収穫だった。

もっとも、お金に余裕があれば最新フェラーリ“も”所有したい。ローマと360モデナの2台生活が実現したら、なんて優雅なんだろう……と、妄想を膨らます。

ドライブレコーダーもアップデート。前後にカメラを装着した。

なぜ、フェラーリ・クラシケ取得を決めたのか?

2020年のフェラーリ・ライフで、いちばんのビッグ・イベントはフェラーリ・クラシケの取得だ。

あらためてフェラーリ社の公式認証プログラムであるフェラーリ・クラシケについて述べると、生産から20年以上経過した個体で、オリジナル状態を保っているものについて、フェラーリ社が有償で、純正フェラーリである旨の鑑定書を発行する、というものだ。鑑定は日本のフェラーリ正規ディーラーが代行するので、わざわざイタリア本社にクルマを送る必要はない。

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Vol.69 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その1

フェラーリ・クラシケ取得のための申請用写真を撮影するテクニシャン。

Hiromitsu Yasui

なぜ、フェラーリ・クラシケ取得したのか? と、いえば、興味本位だ。

わが360モデナは、ワン・オウナーの個体で、ほとんど手がくわえられていなかったので、かなりオリジナル状態に近かった。ゆえに、フェラーリ・クラシケ取得が容易と思ったのだ。

一部パーツには社外品が装着されていたため、外した。

Hiromitsu Yasui

フェラーリ・クラシケの取得にどれほどの意味があるのかは、正直、わからない。巷では「高値で売却するために、フェラーリ・クラシケを取得するんでしょ」といった声もある。

なるほど、フェラーリ・クラシケを取得すれば、下取り価格はアップするようだ。が、これまでの車検&整備費用や税金、保険代などの維持費をすべて合算すると、そのアップ分にはとうてい及ばない。つまり、フェラーリ・クラシケを取得したとしても、経済的に得することは100%あり得ない、と思う。それに、本当に儲かるのであれば、フェラーリ・オウナーが殺到しているはずだ。ボクはあくまで、フェラーリ・クラシケ取得をリアルに体験してみたい! との思っただけだ。

フロントのアンダーカバーを新品に交換した。

Hiromitsu Yasui

わが360モデナは2000年製。

Hiromitsu Yasui

そうして取得を進めるなかで、思いもよらない事実がいくつも判明した。たとえば写真撮影ひとつをとっても、サクッと済むのかと思いきや、すべてのアンダーカバーを脱着するなど、それなりの作業が必要だった。「写真撮影して、申請書作って、本国に送って、ハイ終わり!」では決してなかったのだ。いまは、ようやく必要箇所の撮影がすべて完了し、申請書が作成されて、本国に送付ずみの状態だ。つまり、“鑑定”されているところである。

はたして1発合格出来るのか否か……ドキドキしている。

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文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)