日本は責任あるプレーヤーたれ 3氏の21世紀キーワード

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 日米欧を代表する「知」の3氏はオンライン鼎談(ていだん)で2021年以降の世界の行方を、キーワードを書き記した上で展望した。社会・経済構造や国際秩序が岐路に直面する中、それは日本と日本人に対し、積極的かつ主体的に行動し、21世紀の世界を形づくる上で責任を担うよう求めるメッセージだ。

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細谷氏「新しい世紀」

 「新しい世紀」。国際政治学者の細谷雄一氏は21世紀が20年経過する今、あえてこの言葉をキーワードに選んだ。

 英歴史学者のホブズボームは、第一次世界大戦勃発の1914年からソ連崩壊の1991年までを1つの時代区分とし、100年に満たないこの時代を「短い20世紀」と呼んだ。細谷氏はこれにならい、新型コロナウイルス禍を引き金に「短い21世紀」という新たな時代区分が2021年に始まるとの見解だ。「その姿はまだ見えず、21年からの10年間で形が決まる」とする。

アタリ氏「希望」「利他主義」

 仏経済学者のジャック・アタリ氏はその21年に「希望」をみる。新型コロナのワクチン開発で経済活動が正常化に向かい、経済が成長軌道に戻ることなどを期待するためだ。

 アタリ氏は、コロナ禍を教訓に危機体験を共有した人類が利己的な振る舞いから、他者の利益を考慮する「利他主義」へと行動様式を転じることも期待する。医療や教育、環境などを優先する「命の経済」への転換を唱えるのは同一線上にあり、その実現が自身の「願い」だという。

 ただ、期待は「悲劇」と裏腹だ。特にデジタル技術の進展は経済構造の転換を促す一方で、社会の格差拡大の要因ともなる。テレワークなどへの対応に差が出たことは日本でも問題化した。アタリ氏は富の偏在が加速すれば「革命の可能性が広がる」とまでいった。

ルトワック氏「技術の加速」

 デジタル技術への問題意識は米歴史学者のエドワード・ルトワック氏も真っ先に示した。キーワードは「技術の加速」。人工知能(AI)など技術革新が人々の制御を超える速度で進展していることへの警戒を込めた。超高速計算が可能な量子コンピューターを引き合いに「最初に実用化した民間企業がスーパーパワーになる」と語った。

 コロナ禍は社会生活のデジタル化を促し、米IT大手4社「GAFA(ガーファ)」をさらに肥大化させた。国境を超えた活動にどう網をかけるかは、世界的な課題だ。ルトワック氏は「日本政府も独自に動かねばならない」と促した。デジタル社会の規範づくりへの積極関与である。

 21世紀を展望する上で「中国」は避けて通れない。アタリ氏はキーワードに挙げ、ルトワック氏は「地政学的には中国(が課題)」と述べた。3氏とも中国の覇権確立は実現しないとみるが、対処の必要性で一致した。

 アタリ氏は中国の民主化への期待をつなぎ、日本にそのための「努力」を促す一方で、ルトワック氏と細谷氏が米国やオーストラリア、インド、欧州連合(EU)といった民主主義諸国の連携強化による中国の押さえ込みを重視するなど、対処の仕方に違いはある。

 ただ、民主主義を守るため、日本がとるべき行動については共通の見解だ。

 「米国の支援は永遠ではない」(アタリ氏)

 「戦略的自立が今までより必要になる」(細谷氏)

 「積極的で責任を取る政策を続けなくてはならない」(ルトワック氏)

 米国がバイデン次期政権下で多国間主義に回帰しても、もはや頼るばかりではならないということだ。

 鼎談ではコロナ禍の世界が「映画館で途中退場できずに、ひどい映画をみさせられている」状態と例えられた。映画館を出れば「いろんな変化」(ルトワック氏)に人々は気づく。変化の荒波は21年、一層厳しくなるだろう。その世界で日本は埋没せず、プレーヤーであらねばならない。

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