30年ぶり高値の日経平均 デジタル・脱炭素が主役
29日の東京株式市場で、日経平均株価が1990年以来30年ぶりの高値をつけた。新型コロナウイルスの感染再拡大で景気不安がくすぶる中でも、前日に米下院が可決した財政出動への期待が勝った。マネーはデジタル化や脱炭素など新たな構造変化の勝ち組を選別しようとしている。ただ、業績拡大期待が先行して株価と足元の利益が乖離(かいり)する企業が目立ち、急騰には危うさをはらむ。
日経平均は前日比714円(2.7%)高の2万7568円と、バブル崩壊直後の90年8月以来の水準に上昇した。年末で薄商いのなか、上昇に弾みが付いた。けん引役にはデジタル化や脱炭素に関連した銘柄が多い。
工場自動化支援のキーエンスや、デジタル機器に不可欠な半導体の製造装置大手、東京エレクトロンなどが、株高が加速した10月末から時価総額を増やした。さらに、全固体電池を手掛ける村田製作所や、水素製造機器の川崎重工業の株価も足元で急伸。「脱炭素社会への転換が商機になる水素や再生可能エネルギー、蓄電池関連の日本企業が買われている」(シティグループ証券の松本圭太市場営業本部長)という。
30年の期間を経て、従来の主役だった自動車や銀行、商社などとは違う顔ぶれの株高が目立つようになってきた。企業の稼ぐ力も高まり、東証1部上場企業の1株利益は30年で2倍以上に拡大している。野村資本市場研究所によると、株式持ち合い比率はこの30年間で約4分の1に低下。企業統治改革も海外投資家の評価を高めた。
ただ、足元では再び企業の利益と株価の乖離が目立ってきた。株価が1株利益の何倍まで買われているかを示すPER(株価収益率)は、足元の業績に比べた市場の先行き期待が高まると上昇する。コロナで利益は減っている一方、株価は2~3年先の利益回復を織り込んで上昇しているため今後1年の利益でみたPERの水準が過去平均の15倍程度から20倍近くまで高まっている。
デジタル化や脱炭素の勝ち組企業のPERが切り上がっていることも原因だ。医師向けに医薬品の情報をオンラインで提供するエムスリーのPERは223倍まで高まった。モーター需要が伸びている日本電産も70倍を超える。
海外では電気自動車のテスラの時価総額が今年8倍近くになり、PERは1000倍を上回る。トヨタ自動車の最高益の2倍となる年間5兆円の純利益を出してようやくPERが他の自動車大手並みの10倍台前半に低下する計算になる。
コロナ後の世界的な金融緩和や財政出動が、実態以上に株価を押し上げている側面が強い。米国では失業者向け給付金の一部が株式市場に向かった。デジタル化や脱炭素は勝ち組企業に大きな利益をもたらす可能性があるが、中長期の急激な成長を織り込むような動きもあり、市場に警戒感も高まっている。