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 「日本のクラウド利用の進展はとんでもなくスロー。10年間も議論しながら一向に利用が増えない。ユーザー企業は頭で分かっていても身体が動かない状況にある」

 歯に衣(きぬ)着せぬ物言いで知られるガートナージャパンの亦賀忠明ディスティングイッシュト・バイスプレジデントはこう指摘する。ガートナージャパンの調査によると、日本におけるクラウド利用率は2020年1月時点で18%(SaaS、PaaS、IaaS、プライベートクラウドなどの平均)にとどまる。利用率の数字は2015年以降、毎年1%しか増えていない。

 米ガートナーがいう2030年の「New World(新世界)」に日本企業は入れるのか。クラウド利用の「傾向と対策」を今回と次回に分けてお届けする。

 ガートナーの「IT利用スタイル」年代区分によると、1970~1990年がメインフレーム、1990~2010年がオープンシステム、2010~2030年がクラウドコンピューティング。今はクラウド利用スタイルの折り返し点を過ぎたあたりである。クラウドコンピューティングという言葉は2006年に生まれた。2026年ごろに2030年以降のIT利用スタイルを示唆する言葉が現れるかもしれない。

 「頭で分かっても身体が動かない」状況を亦賀氏は解説する。「これから1~2年かけて、外部クラウドサービスとオンプレミスのどちらにより投資すると考えていますか」という質問への回答を見ると「投資意欲ベクトルは外部クラウドに向かっている」(亦賀氏)。

 意欲があるのに進まない理由として亦賀氏は、ユーザー企業の勉強不足と、それにつけ込むかのような日本IT企業の質の低い提案を挙げた。

 ガートナーに来るクラウドに関する問い合わせの85%がいまだに「クラウドは大丈夫か」「利点は何か」といった類いの基本的事項の確認だという。しかも「10年前から口を酸っぱくして言ってきた、『クラウドは自分で運転するもの』というやり方は利用全体の10%でしか実現されず、システムインテグレーター(SIer)への丸投げが続く」。