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なぜ?AppleはTeslaをあの時、買収しなかったのか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:テスラCEOイーロン・マスクのtwitter

KNNポール神田です。

Appleの自動車プロジェクト『Project Titan』が『Reuters』のリークで急浮上してきた。

□Appleが2024年に独自の電気自動運転車の生産を開始する計画だと、Reutersが米国時間12月21日に報じた。

□Appleの自動運転車の中核となる要素は「バッテリーのコストを『大幅に』抑え、走行距離を伸ばせる新たなバッテリー設計」

□このバッテリーは「独自の『モノセル』設計」を採用し、個々のセルの容量を拡大するという。またAppleは、リチウムイオンよりも安全性の高いリン酸鉄リチウムと呼ばれるバッテリー技術を検討している

□Project Titanにはここ数年目立った動きがなかったが、Appleは自動運転車に改造した「Lexus」を複数台シリコンバレーで走らせるなど、さまざまな自動運転技術への取り組みを続けていた

□Appleは2019年、既存の乗用車を自動運転車に改造するキットを開発していたシリコンバレーの新興企業Drive.aiを買収

https://news.yahoo.co.jp/articles/b73af40f82b46315b46807513043c53e07407391

『Drive.ai』の買収は2019年6月

https://japanese.engadget.com/jp-2019-06-25-drive-ai-project-titan.html

ロイターのApple自動車のスクープ記事のツイートに反応したある一人の男がいた…。

なんと、あのテスラ社のイーロン・マスクだった…。

さらに、テスラがAppleへの売却の話を突然リークしてしまったからさあ大変!

■イーロン・マスクのテスラ売却カミングアウト

2020年12月23日午前5:46

テスラCEOでもあるイーロン・マスク氏が、AppleへTeslaの売却話があったことを突如tweetしてしまった…。

@wintonARK のAppleがまだ自動車(iCar)を開発しているというロイタースクープのツイートに対してのコメントであった。

出典:@eronmusk tweet
出典:@eronmusk tweet

※twitterは翻訳機能があるのですぐに日本語でも表示できる。

TwitterはGoogle翻訳であるが、Deepl翻訳を使うとこうだ…。

『モデル3計画の暗黒時代、私はティム・クックにAppleがテスラを買収する可能性について話し合うために接触しました(現在の価値の1/10で)。彼は会議を受けることを拒否した。』

こちらが該当tweetだ ↓

https://twitter.com/elonmusk/status/1341485211209637889

出典:Google
出典:Google

現在のテスラ(TSLA)の株価は、史上最高値クラスへと上昇している。2019年までは1株50ドル前後だったのものが600ドルを超えている。

本日の時価総額では6,123億ドル(約61兆円)となっている。

https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/detail/TSLA?d=1y

イーロン・マスクの言うように、現在の1/10とすると、612億ドル(6.1兆円)の時になぜ? Appleのティム・クックCEOは、TESLAを買収しなかったのだろうか?

■Beats社 20社分だったTESLAの買収金額予測

もちろん、Apple最大の買収額が2014年の Beatsの30億ドル(3,000億円)なので、1/10といっても612億ドル(6.1兆円)とすると、いくらAppleにとっても、Beats社がなんと20社も買える金額である。

しかも、Appleにとっていまだに1台も作っていない自動車事業である。そんな事業に612億ドルの買収はありえない…いや、1/100の61億ドル(6,100 億円)でもBeats社の2倍であるのでありえなかっただろう。しかし、この価格で、今だったら、TESLAの買収はあったのかもしれない。しかも、すでにTESLAからの転職エンジニアも多くAppleには存在している。

ご存知のように、Beats社買収のおかげで『Apple Music』に代表されるサービス部門のサブスクリプション売上は2020年で537億ドル(5.3兆円売上シェア19.5%)に達し、買収金額を十二分に回収(サービス部門はBeats買収金額30億ドルの18倍に成長)し、2020年には『AirPodsMAX』のような余裕のBeats事業関連製品も出荷している。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20201209-00211614/

■なぜ?イーロン・マスクはこんな昔のNDA案件のハナシをもちだしたのか?

これはあくまでも筆者の推測だけど、イーロン・マスクが酔っ払ってツイートしたりとか思えない…。

いや、もしかすると、Appleに対しての警戒心からのツイートで話題性を醸し出したかったのかもしれない。

今度は、買収ではなく提携を匂わしているのかもしれない。

そもそも、自己承認欲求の強い、完全自前主義者のイーロン・マスクと、ロジカルで常に冷静なサプライチェーンマネジメントの天才ティム・クックのキャラクターのズレはあれど、AppleとTESLAのユーザー層は親和性が高いと考えられる。

Appleにとって、自動車は遠い存在ではい、自前で生産しなくても自動車メーカーはいくらでもある。ただ、Appleの『10日分の在庫しか持たない』というフリーキャッシュフロー経営で『鴻海フォクスコン』のような支払いサイトで応じてくれる自動車メーカーは皆無だろう。

TESLAがAppleにとってのフォクスコンになりえるとはとても思えない…。

しかし、TESLAへの期待値が高い今だからこそ、イーロン・マスクのデシジョンひとつで世界は変わる時を迎えるのかもしれない。

そんな文脈で両社の、未来への投資のスタイルを眺めるのは、買う買わないの前にワクワクする世界を見せてくれる。

あと、4年後、5年後のテクノロジーはさらにおもしろくなりそうだ。

■関連コラム

□乗らない時はアルバイトしてくれる『テスラ』の『ロボットタクシー』自動運転イーロン・マスクの皮算用

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20190507-00125153/

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https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20180123-00080563/

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https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20180109-00080293/

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https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20150216-00043077/

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https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20180106-00080156/

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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