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大リーグでなぜ、スカウトが消えているのか

スポーツライター 丹羽政善

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大リーグの2020年シーズンの開幕前、スカウトが退団した、というニュースをよく耳にした。表向きは、新型コロナウイルスの感染拡大による経済的な損失を受け、リーグ全体で大規模なリストラが行われたと解釈されているが、それは一因であって、すべてではない。そもそもここ数年、大リーグではスカウトの減少傾向が続いている。

背景には何があるのか。

このオフ、田中将大がヤンキースからフリーエージェントとなった。年齢は32歳。ここ数年の成績や各球団の経営状況などを併せ考えると、多くのチームが長期契約には二の足を踏んでいるよう。

19年に苦しんだ印象が強い。アウトピッチ(決め球)だったスプリットの落差が小さくなり、それが原因とも指摘された。その被打率は2割5分4厘で、メジャーに移籍してからワースト。相手が空振り(Whiff per Swing)したのは19.27%で、プットアウェイ率(その球種で三振に仕留めたかどうか)は13.7%。いずれも前年の半分程度に下がった。

スプリットの落差、本当に小さくなった?

ただ、不思議である。実は今年、そのスプリットはさらに落差が小さくなった(後述)。Whiff per Swingは20.93%で19年とほぼ同じ。プットアウェイ率は10.7%とワーストを更新したが、被打率が2割7厘に改善されたからか、落差のことが話題になることはほとんどなかった。

もはや投球の36〜37%がスライダーで、スプリットを気にする人が減っているのかもしれないが、そもそも19年のスプリットは、本当に落差が小さくなっていたのか? 

それを15年に導入された「Statcast(スタットキャスト)」という動作解析システムの軌道データを基に確認すると、さらに矛盾が浮かび上がった。

まず、16年から今年までの5年分を確認したところ、確かに19年は前年に比べて5㌢ほど落下幅が小さくなっていた。ところが、田中にとってはキャリアベストのシーズンだった16年のスプリット(被打率1割6分7厘、プットアウェイ率20.4%)と比べれば、むしろ19年のほうがよく落ちていた。それをCGで再現したものが以下だが、そこに今年の軌道も重ね合わせると、その落下幅は、16年よりもさらに小さかった。

※CGの中のSPIN DIRECTIONは回転方向。SPIN EFFICIENCYは回転効率。球種はすべてスプリットだが、分かりやすくするため球種を変えて色分けした。左から順に16年(青)、19年(赤)、20年(緑)。CGはシアトル郊外にある「ドライブライン・ベースボール」が提供している「EDGE」というオープンソースのソフトを使用。作成にあたっては事前に使用許可を取った。球速、変化量、回転数に関しては、大リーグが提供しているStatcastのデータをbaseballsavant.comから抽出。回転効率に関してはイリノイ大のアラン・ネイサン教授の論文「Determining the 3D Spin Axis from Statcast Data」を参考にした。

19年のスプリットは決して落ちていないとまではいえないのに、なぜ痛打されるケースが多かったのか。16年と比べて、なぜここまで結果が異なるのか。

それをたどるため、フォーシームの平均軌道もデータから算出してCGで再現したところ、16年のフォーシーム(赤)は、19年(緑)に比べて約9.6㌢も縦の変化量が大きかった。これは20年のリーグ平均(青)と比べても10㌢ほど縦の変化量が大きい。

おそらく16年のフォーシームというのは、打者にしてみれば浮き上がってくるように見えたのではないか。被打率も2割5分と低く、このフォーシームがあったからこそ、16年の落下幅はそれほど大きくなかったものの、効果的だったといえるのかもしれない。

ちなみに16年のフォーシームとスプリットの縦の変化量の差は約30.1㌢。19年の同数値は約27.4㌢だったので、やはり16年の方が打者には落差が大きいと感じられたのではないか。19年の軌道は20年のリーグ平均に近いが、実は17年以降、16年の伸びるようなフォーシームは失われたままである。

ではなにが、16年と19年のフォーシームの質の違いを生んでいるのか? データを確認すると、回転方向、回転数、平均球速に大きな差はないが、回転効率が11%も落ちていた。

以前も紹介したが、進行方向への回転軸の傾きを示すジャイロ成分の大きさが、回転効率を左右する。ボールを真上から見た場合、回転軸が真横、つまり、きれいなバックスピンがかかっていれば回転効率は100%だ。回転軸が真っすぐホームベースに向かっていれば(ジャイロ回転)、回転効率は0%となる。11%の差は決して小さくなく、それが先程触れた9.6㌢の差となって現れている。

さて、ここからがむしろ本題だが、以上のデータから田中をどう評価するのか?

データ分析で後れをとっているチームは、単純に衰えの始まりと捉え、長期契約には消極的になるはずだ。データ分析はできても、修正のノウハウがなければ、やはり獲得には慎重になるかもしれない。しかし、データ分析にたけ、修正の実績があるチームにとっては、非常に魅力的に映るはず。なぜなら、仮に回転方向に問題があるなら修正に時間を要するが、問題は回転軸にあると考えられるからだ。

その違いについては、11月23日付の「大谷のフォーシーム 質向上の鍵は回転効率アップ」という記事でも紹介した。球質の改善においては、球団のアナリストらよりもはるかに多くの知識を持つトレバー・バウアー(レッズからフリーエージェント)によると、「通常、回転方向を変えるには、腕の角度や腕を通す位置を変えなければならない。それは決して簡単ではない」とのこと。一方で、回転軸の修正に関しては、「握りを変えたり、リリース時に前腕の回転角度を調整したりすることでそれは可能」だそうだ。

おそらくそのことを知っているチームは、フォーシームがよみがえれば、その効果はスプリットや他の球にも好影響をもたらす、というところまで想定しているはず。

回り道をしたが、なぜ大リーグがスカウトを必要としなくなったのか、ということは一連の経緯から説明できる。もちろん、すべてが数字に現れるわけではなく、スカウトにしか見えないものもある。それを読み解く力を持ったスカウトが消えることはないが、例えば彼らに回転軸が見えるわけではない。しかし、その可視化こそが今、求められているのだ。

データ分析とピッチデザインで選手「作る」

データを収集し、アナリストが分析。それをもとにバイオメカニストとピッチングコーディネーターが、ピッチデザインという修正プログラムを組む。セイバーメトリクスのように統計から「今後を予測する」という手法とも異なり、選手を「作る」というそのアプローチは、さらなる 技術の進化で形を変える可能性はあっても、もう後戻りすることはない。

ヤンキースが19年の途中に、ドライブラインのピッチングコーディネーターだったサム・ブリエンドを引き抜き、マイナーリーグのピッチングディレクターとしたのも同じ流れ。また、そのシーズン終了後に11年から投手コーチを務めていたラリー・ロスチャイルドを解雇し、インディアンズで育成を担当し、バウアーからピッチデザインのノウハウを学んだマット・ブレークを投手コーチとして契約したのも、その傾向を色濃く反映している。

今年は変則シーズンだったので、じっくり取り組む時間がなかったのかもしれないが、おそらく彼らは、田中のフォーシームの軌道修正に自信を持っているはず。そういう視点も加味すれば、田中に興味を持っているチームはおのずと絞られてくるのではないだろうか。

動作解析なども含めた選手評価の世界は今や、かくも目まぐるしく上書きされている。

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