なぜ、ミシュラン店には「女性の料理人」が少ないのか…料理界「ジェンダーバイアス」という構造

美食業界には、なぜ女性料理人が少ないのかーー。

在仏ライター・高崎順子氏が出会った1冊の本をきっかけに、フランス料理界が抱えるジェンダー格差についてリポート。そこには、日仏の料理界に共通する強固な「構造」があった。

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「この間読んだ本、すごくよかったんですよ。しっかり考えて作られていて、しかも話が面白いの。児童書なんだけど高崎さんも好きだと思う」

ある日、出版社勤務の友人から言われた。本のタイトルは『すし屋のすてきな春原さん』。国連が推奨するSDGs(持続可能な開発目標)をテーマにした小学校中〜高学年向けのシリーズで、この本は女性寿司職人をモチーフに、ジェンダー平等を扱う児童小説だという。

おすし、職人、ジェンダー、SDGsと私には興味のあること目白押しで、しかも我が家の二人の息子はちょうど対象年齢だ。「そりゃ読みたい!」と前のめりで返事をし、ワクワクして読んだ。

そしてこれが、とてもよかった。

 

舞台は現代の東京で、主人公は男子の「小林伝(こばやし・でん)」と女子の「海江田美緒(かいえだ・みお)」の二人の小学生。

男子の方が自分の父親に連れられ、おすしを食べに行く場面から始まる。それが「春原(すのはら)さん」のお店で、テレビにも取材されるような話題の名店という設定だ。

春原さんは細い目でクールに微笑む、主人公曰くの「なんだかかっこいい女の人」。しゃきっとした姿勢でコノシロやアマエビのおすしを握り、子どもたちにも丁寧語で話す。

醸し出されるのは、日本のおすし屋さんの静謐な雰囲気そのものだ。こんなお店はいいなぁ、私も子どもと行きたいなぁと読み進めていくと、ふと、現代日本のリアルが顔を出す。それは「女性のおすし屋さんは希少」ということ。

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