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インドのiPhone工場、賃金未払いで労働者が大暴動

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 インドのナラサプラにあるAppleのiPhone製造の工場で労働者による暴動が起こったと地元メディアが報じている。この工場は台湾のWistronの委託工場でiPhoneの組み立てを行っている。iPhoneの組み立て工場は脱中国を図って、インドに工場を設立し、インド市場向けのiPhoneなどはインドで組み立てを行っている。

 今回のナラサプラにある工場の労働者の暴動の原因は、給料が未払いだったことが原因のようだ。大学卒業のエンジニアで月額21000ルピー(約3万円)が支払われる予定だったが、支払われたのは16000ルピー(約2.4万円)だけで、その後3か月間は12000ルピー(約1.8万円)しか支払われていないとのこと。また他の大学卒業の従業員(非エンジニア)は月額8000ルピー(約1.2万円)しか支払われていなかったり、500ルピー(約800円)しかもらっていない労働者も多いようだ。それで労働者が怒って暴動を起こした。この工場では2000人の労働者が働いている。

 地元メディアのツイッターでは暴動の様子の動画も掲載している。暴徒と化した従業員らが投石したり、棒を振り回して工場を破壊したり、自動車が横転されていたりとかなりのカオスで物騒な様子だ。工場を運営しているWistronは、今回の暴動についてコメントはしていない。

 iPhoneは基本的に世界中で同じ価格で販売しているため、インドでも10万円以上するiPhoneの最新機種は高根の花であり、一部の富裕層しか所有できない。このiPhone組み立て工場の労働者の1か月の賃金が正常に支払われていたら約3万円なので、iPhoneの最新機種1台を購入するのは単純計算すると3か月分以上の給料だ。

 インドは人口13億人以上の巨大市場でありAppleとしては押さえておきたい市場である。Appleは2020年9月にインドでもiPhoneなどのオンラインストアを開設して、インド市場に注力しようとしている。インドで一番人気があり売れ筋のスマートフォンは韓国のサムスンだが、それ以降は中国メーカーが続いている。だが2020年にはインドと中国での国境をめぐる紛争から両国の関係が悪化しており、インドでは中国製品や中国のサービス、アプリなどの使用が禁止されたり、対中国感情の悪化で中国製品のボイコットも行われている。中国製のスマートフォンは安価なものが多かったので、今まで中国製スマートフォンを使用していた層がiPhoneに買い替えてくれることは少ないが、それでもAppleとしてはインド市場でのプレゼンスを高めておきたいところだ。

▼Times of Indiaのツイッターより

▼Hyderabad Postのツイッターより

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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