ワクチン格差「貧困国は10人に1人だけ」 国際団体が警鐘

ファイザーなどが開発した新型コロナウイルス感染症ワクチンの瓶=8日、英領北アイルランド・ベルファスト(ロイター=共同)
ファイザーなどが開発した新型コロナウイルス感染症ワクチンの瓶=8日、英領北アイルランド・ベルファスト(ロイター=共同)

 【カイロ=佐藤貴生】新型コロナウイルスのワクチン実用化が進む中、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルなどで構成する普及団体「民衆のワクチン連盟」は、先進国のワクチン買い占めのため貧困国では来年、10人のうち9人が接種を受けられないとの見通しを示した。貧困国にもワクチンが行き渡らなければパンデミック(世界的大流行)の収束や世界経済の回復は見通せず、同団体は警鐘を鳴らしている。

 同団体によると、欧米やカナダ、日本やオーストラリアなど世界人口の14%にすぎない国々が有望なワクチンの53%を確保。中でもカナダは人口の5倍のワクチンを注文した。一方、67の貧困国や途上国では来年中にワクチンが届くのは10人中1人にとどまる。エチオピアやナイジェリアなどアフリカのほか、ミャンマー、パキスタン、ハイチなどアジアや中米の国々が該当する。

 カタールの衛星テレビ局アルジャジーラ(電子版)によると、韓国が人口の88%をまかなう量のワクチンを確保したが、人口1億人超のフィリピンは130万人分にとどまるなど、アジア諸国でも開きがある。

 ワクチンの共同購入で途上国などへの供給に道を開く世界保健機関(WHO)主導の枠組み「COVAX(コバックス)」には180以上の国・地域が参加。ただ、ロイター通信によると米バイオ企業モデルナのワクチンや、米製薬大手ファイザーと独バイオ企業ビオンテックが共同開発するワクチンは、先進国が大半を押さえたもようだ。

 英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大は、共同開発中のワクチンの6割以上を途上国に割り当てる方針だが、来年供給できるのは世界人口の2割弱にとどまるという。

 英BBC放送によると、アフリカでは南アフリカやモロッコ、エジプトなどで感染が拡大しており、9日現在の累計感染者数は約230万人で5万人以上が死亡した。検査件数は一部の国に偏っており、実態はより深刻だとの見方が強い。

 WHOはワクチン供給に向けた実態調査や施設整備などを求めているが、アフリカでは定められた基準の30%程度しか済んでおらず、WHOは目標に「ほど遠い」と指摘した。アフリカ連合(AU)は今後2~3年で人口の6割にワクチンを接種する目標を掲げているが、ワクチン保存のための冷蔵施設の増強などが課題になっている。

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