子どもに交通事故の危険や、性犯罪への防犯意識を根付かせるにはどう伝えるのがいいのか。小学生の娘をもつ弁護士の上谷さくら氏は「私は娘のために車の運転をやめた。やりすぎと思われるかもしれないが、子どもが事故や事件に巻き込まれないためには気をつけすぎるに越したことはない」という——。
信号機
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弁護士として子どもにどう伝えているか

私は犯罪被害者支援をライフワークとする弁護士です。性被害、殺人や交通死亡事故等の人が亡くなる事件の代理人を多く手掛けています。どの事件も、当事者や家族にはつらい出来事であり、人生そのものに多大な影響を及ぼします。

特に子どもは被害に遭いやすいのに、自分の身を守ることが難しく、親は心配が尽きません。「どうしたら子どもが被害に遭わずにすみますか?」と、多くの親御さんから質問されます。なかなか回答が難しく、これであれば万全、という方法はありませんが、私にも小学生の娘がいますので、不安な気持ちはよく分かります。

私は弁護士としての経験を踏まえ、できるだけ娘が被害に遭わないために、おそらく一般的な家庭とは違うことを伝えています。いくつかの点を、2回に分けてご紹介します。

大好きだった運転をやめた理由

交通事故は、本当に恐ろしいです。私は弁護士になってから、車の運転をやめました。前職の新聞記者時代は、どこにでも車を運転して取材に出かけており、運転は大好きだったのですが、弁護士となり多くの交通事故案件を扱うようになってからは、当時事故を起こさなかったのは単なる幸運だとしか思えなくなったからです。

車の運転は、一瞬の油断が取り返しのつかない結果を生みます。悪質なスピード違反や飲酒運転など、故意による事件も後を絶ちません。大人でも車が突っ込んできたら避けようがない中で、どうしたら娘の命を守れるか考えた結果、ありのままの現実を伝えることにしました。

私は娘が保育園児の頃から、「青信号でも安全ではない」と教えました。「赤信号を無視して突っ込んでくる車がいる」「お酒を飲んで運転している人もいる」「スマホを見ながら運転している人もいる」と。特に子どもは小さいので、運転席から見えないこともあります。

「車が曲がる時、運転手さんが自分に気づいているのか、じっと目を見るんだよ。目が合ったら止まってくれるはずだから、そしたら横断歩道を渡っていいよ。目が合わなかったら、車が通りすぎるまで渡らずに待とうね」と繰り返し伝えました。

交差点では、曲がり切れずに歩道に突っ込んでくる車もいますから、「信号待ちする時は、交差点から離れたところに立つように」と伝えています。私と一緒にいる時は、必ず離れたところに一緒に立ちます。