もう自由に発言できない?SNSも標的 トルコで強まる言論規制

2020年11月25日 09時45分
11月22日、トルコ西部イスタンブールで、大統領別邸からオンライン方式で与党党員に向けて演説するエルドアン大統領=AP

11月22日、トルコ西部イスタンブールで、大統領別邸からオンライン方式で与党党員に向けて演説するエルドアン大統領=AP

 【カイロ=蜘手美鶴】トルコのエルドアン政権が、政府に批判的なツイッターやフェイスブックのアカウントの閉鎖を進めている。11月4日、会員制交流サイト(SNS)の規制を強化する新法に違反したとして、ツイッター社などに1000万リラ(約1億3000万円)の罰金を科した。反政府メディアの取り締まりが厳しいトルコでは、SNSは自由に発言できる数少ないメディアだった。利用者は新たな「言論規制」に危機感を強めている。
 新法は7月末に成立。利用者が1日100万人以上のSNS大手に対し、政府や裁判所が「不適切」と判断した投稿の削除や、国内に代表者を置くことなどを求めている。違反するとアクセス制限や罰金、広告禁止などの措置がとられる。
 罰金を科されたのはツイッター社、フェイスブック社、ユーチューブ、インスタグラム、TikTok(ティックトック)などで、国内代表者を置かなかったためという。トルコ政府は「法は順守しなければならない」と警告している。
 エルドアン政権はこれまで政府に批判的なメディアに対する弾圧を繰り返し、多くを閉鎖に追い込んできた。2016年のクーデター未遂以降はその動きがさらに強まり、200近いメディアを閉鎖。既存メディアは9割以上が政府と関係がある組織ばかりになった。
 SNSは自由な発言や情報共有の場として利用されてきたが、新法成立以降、情報分析サイトやジャーナリストのサイトの削除が進んでいる。トルコのジャーナリスト、ムラドさん(34)は「SNSは重要なツールで、ここに規制が及ぶと情報発信できなくなる」と懸念する。
 政府が規制強化を進める背景には、都市部での政府批判を抑えたい思惑もある。都市部はSNS利用者が多く、新型コロナウイルスで低迷する経済や政府への不満も強い。トルコ人アナリストのガウダット・カメル氏は「新法によって若者はかえって政府への反感を強めている。政府の狙いとは逆効果だ」と指摘する。

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