2020.11.18
# 中国

日本のメディアが絶対に報じない、中国・三峡ダムの真実

ダム建設の背後にあった壮大な「計画」

別視点から見た三峡ダム

かつて何かと騒がれた中国・三峡ダム問題が、近年再び注目されている。まず昨年あたりから、Google Earthに映るダム画像の歪みを根拠に、決壊の危険性が報じられるようになった。これについては中国政府が否定し、Google Earthもその後画像を修正して火消しを済ませたかに見えた。しかし、勢いそのままに今年に入っても、貯水池の水位上昇への懸念が盛んに報じられている。

筆者は建築や土木の学者でも、大手ゼネコンの技術者でもない。物理的な意味でのダムの現状を説いたり、今後を占うことは手に余る。この文章では、三峡ダムが社会的に背負ってきた意義や背景について、ともすれば中国共産党への批判一辺倒で安直に片づけようとする「ありがちな見方」が溢れる中、少し違った視点を提供してみたい。三峡ダム建設が、結果として中国西部の貧困問題の解決に寄与したという論点だ。

三峡ダム[Photo by gettyimages]
 

直轄市・重慶の重要性

舞台は三峡ダムとの関係が深い都市、重慶だ。重慶という街は、水量豊富な長江水系の二河川が合流する水運都市である。山間部で懸崖(切り立った崖)だらけの地形のため河川の水深は著しく深く、沿海部から直線距離で800km余りも離れているにもかかわらず、大型船舶すら航行が可能なのだ。

そんな要地だからこそ、蒋介石政権の臨時首都にもなったわけで、現在でも全国に四都市しかない直轄市にその名を連ねている。そもそも三峡ダムは、そういった長江水系で度々発生していた洪水を抑制し、河川の水量を安定にすることを主目的に建設された。

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