洋上風力発電の人材、5年で1600人育成 長崎大に「アカデミー」

 長崎県で洋上風力発電の専門人材を育成する取り組みが進んでいる。全国に先駆けて洋上風力拡大の「促進区域」に指定されたが、産業を担う人材不足が指摘されており、長崎大に育成機関を設立。地元経済を支えてきた造船業が下火となる中、新しい基幹産業にと期待が膨らむ。

 「市場の急速な拡大、事業の加速化が見込まれている。中核企業の誘致、育成に全力を注ぎたい」

 アジア初をうたう洋上風力の人材育成機関「長崎海洋アカデミー」の開所式が9月30日に開かれ、中村法道知事が力を込めた。

 アカデミーでは、五つのコースを用意。風車の設置に適しているかどうかの地質調査や保守管理など、事業の計画段階から運用までに必要な知識や技術を教える。実際に海上に設置された風力発電を使った研修も行う。関連企業の社員を中心に今年は60人が受講する予定で、5年間で1600人の育成を目指す。

 国内の造船業は韓国、中国におされ苦境が続く。洋上風力設備に必要な部品は1万~2万点と多く、メンテナンスを含め関連産業の裾野は広い。県関係者は「造船で培ってきた物づくりの力を生かせる」と意気込む。

 政府は再生可能エネルギーを主力電源とする方針を掲げ、洋上風力の普及が鍵と位置付ける。国が促進区域を指定し最大30年間の事業を許可する洋上風力発電普及法が平成30年11月に成立。長崎県の「五島市沖」が全国で初めて指定された。ほかにも秋田県や千葉県沖の4区域が選ばれている。

 長崎海洋アカデミーを運営するNPO法人によると、洋上風力の建設計画は全国40カ所以上で検討が進んでいる。

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【用語解説】洋上風力発電

 海上に設置した巨大な風車で発電する再生可能エネルギーの一つ。電気は海底ケーブルを使って陸上に送る。風車の土台を海底に固定する「着床式」と、海上に浮かべる「浮体式」がある。陸上よりも安定した風が吹くため、効率的な発電が可能。欧州などでは、コスト削減に向けて風車の大型化が進んでいる。

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