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長引くコロナ禍は若い世代にも暗い影を落としている。大学を卒業したものの、このまま働き続けられるのか。失業して住む家を失ったらどうすればいいのか。いくら「もしこうだったら」と未来のシナリオを描いても、目の前の不安は解決しない。20代の若者の心理を専門とする著者は、存在しない確実性を探し求めるのではなく、不確実性への対処法を学び、前に進むことの大切さを説く。そのために何をすべきか、具体的な思考と行動を教える。


 米国には20代の若者が5000万人近くいるが、その大半がかつてないほど大きな不確実性を抱えている。5年後、自分はどこで働いているのか、どこに住んでいるのか、ほとんどの人は見当もつかない。

 明日になれば昇進できるのか、それとも10年以上かかるのか。それ以前に、生活費が稼げるのかどうかもわからない。そして何百万人もの学生が、世界的なパンデミックと不況の中、新たな門出を祝う卒業式もないまま新社会人となった。

 20代の若者の心理を専門とする筆者は日々、人生の不確かさに圧倒されているという若い社会人の声を耳にする。同じように感じているのは、あなただけではないのだ。

 研究によると、不確実性に適応するための最善の方法は、存在しない確実性を探し求めるのではなく、不確実性に対する考え方を変え、前進し続ける方法を見つけることだ。その方法を教えよう。

 ●タイムトラベルをしない

 未来が不確実だと感じると、私たちはそれについて考えることに多くの時間を費やしがちだ。だがしかし、20代は心理学者が「タイムトラベル」と呼ぶ、将来の自分に何が起きうるか想像する時期ではない。

 20代は将来の計画を立て、それに向かって努力する時期だ。しかし、将来に備えることと、未来がすでに現実に起きているかのように考えることは違う。

 チベットに、こんなことわざがある。「1分1分を大切にすれば、何年もうまくいく」。その時々を乗り切る最善の方法は、いまという瞬間を乗り切ることだ。

 自分が25歳、35歳になった時の人生を心配しているなら、今日何をしなければいけないかをしっかりと把握しよう。それはもしかすると、カバーレターを書いたり、求人情報を見たり、やりたいことを実現する手助けをしてくれそうな知り合いに連絡をとるといったシンプルなことかもしれない。